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 新型コロナウイルスで外出自粛が求められた春以降、宅配だけで野菜を売ることにした大阪府東大阪市の八百屋に各地から注文が殺到した。緊急事態宣言が解除されて1カ月余り。店を営む男性2人はそろそろ対面販売を再開したいが、宅配の需要が衰えず、踏み切れずにいる。コロナで消費者の行動はどう変わり、変わっていくのか――。

 狭い道が広がる東大阪市の住宅街。民家の1階に「無農薬八百屋」の看板が見えた。中ではミニトマトやズッキーニ、ラディッシュなどの野菜が置かれていた。経営者の山崎雄司さん(36)は「この倉庫から野菜を宅配している。店舗は持っていません」と話す。

 八百屋「MIKAN(みかん)屋」は、山崎さんと、銭湯を営む大坪学さん(36)が昨年7月に開業した。山崎さんは居酒屋を運営する会社に勤めていた。取引先の農家から「販売は誰かに任せて栽培に専念したい」という声を聞き、八百屋をやりたいと思うようになった。

 消費者の顔が見えないネット販売はせず、固定した店舗も持たないと決めた。居酒屋での経験から「店舗は客が来るのを待つしかないが、自分たちは売りたい所で売りたい」。知り合いがいるホテルやパン屋、美容院などの一角を借り、週1、2回、定期的に野菜を並べて売ることにした。

 府内や奈良県京都府などの農家と契約し、無農薬野菜にこだわった。最初は月間の売り上げは数万円程度だったが、SNSなどで次第に認知度が上がり、半年後には売り上げは5倍近く増えて軌道に乗った。

 しかし新型コロナの感染が拡大した。府内に緊急事態宣言が出る直前の4月上旬、対面販売を止め、SNSなどで注文を受け、宅配する方式に切り替えた。大坪さんは「対面にこだわってきただけに迷いがあり、最初は仕方ないという思いだった」と振り返る。

 注文は殺到した。東大阪市や大阪市に住む30~60代の女性の利用が多かった。「小さな子がいて買い物にいけない」という声が目立ち、4月の注文は220件。売り上げは対面販売の時を大きく上回った。

 5月21日に緊急事態宣言は解除されたが、注文は減っていない。5月は280件、今月もほぼ同じ勢いだ。大坪さんは「コロナの感染がまだ怖いからなのか、宅配の利便性からなのか。正直よく分からない」と言う。

 2人は当面、宅配だけで営業を続けることにしたが、対面販売を再開したい思いもある。山崎さんは「コロナ禍で消費者の行動や価値観が大きく変わった気がする。いずれ元に戻るのか、戻らないのか。見極めながら販売のあり方を考えていきたい」と話す。(山中由睦)

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