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なぜ、国ごとに差が出たのか。そして第二波がどうなるか。

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 マスクの着用がしっかりしている国としては、英国BBCはメインランドの中国、香港、日本、韓国、タイ、台湾を挙げています。インドネシアやフィリピンでも同様みたいです(Zurcher TW Anthony. Why some countries wear face masks and others don’t. BBC News [Internet]. 2020 May 12 [cited 2020 Jun 22]; Available from: https://www.bbc.com/news/world-52015486)。

 ですから、マスク着用の有無がコロナウイルス感染対策の成否を分ける一因になっている、という仮説は説得力があります。

 ただ、ぼくは若干懐疑的です。

 なぜならば、よく知られているように、医療用マスクの効果は「感染者が感染を広げる」のを防ぐことであり、「非感染者が感染しない」効果はないか、ほとんどないことが示唆されているからです。布マスクについてはもっとデータが少ないですが、基本的には評価は同じです。

 日本では、PCR検査によるデータは感染者を過小評価しています。しかし、抗体検査でも「累積総感染者数」は多くありませんでした。データは概ね1%未満であり、100人に1人も感染していなかったことが示唆されています。これが「過去の感染者」ではなく、「現在の(他者に感染しうる感染者)」の数になると、もっともっと少ないでしょう。

 マスクの効果は「ある程度感染者が多くて、無症候感染者がまわりにうようよしていて、そうした感染者がみんなでマスクを着けることによって感染リスクをヘッジする」という戦略に基づいています。「だれもが感染者だと思って」。みなさんも、こういうスローガンを耳にしたのではないでしょうか。

 でも、実際の日本は「だれもが感染者」ではなく「ほとんど感染者ではなかった」状況でした。もちろん、クラスターの内部では別ですが、日本でのクラスターはほとんどが俗に言う「三密」の条件を満たす閉じた空間内であったか、医療機関の感染がほとんどでした。市中の路上など、一般的な空間には感染者はほとんどいなかったのです。だから、稀有な感染者がマスクを着けることで感染対策に成功した、という仮説はちょっと成立しにくくなります。

 ダイヤモンド・プリンセス号での感染拡大は、2月5日に隔離検疫を始めたあとしばらくは乗客ではなく、乗員(クルー)での感染拡大だったことが分かっています。かれらは業務中に通常のマスクを着用しており、その後、環境感染学会の助言でN95マスクに変更したと伝えられています。それでも感染拡大は起きました。クルーは相部屋だったので、部屋の中で(マスクなしで)感染が起きた可能性もありますが、一部屋に限定されていなかった感染はどこかで起きているわけで、それをマスクがヘッジしなかったことは示唆されます(Field Briefing: Diamond Princess COVID-19 Cases [Internet]. [cited 2020 Jun 22]. Available from: https://www.niid.go.jp/niid/en/2019-ncov-e/9407-covid-dp-fe-01.html)。

 もちろん、なかには「隣の人がマスクをしていたおかげ」で感染リスクを回避できた人もいたでしょう。が、それが国全体の感染対策の成功の「決め手」だったとはちょっと考えづらいです。

 「エアロゾル」による空気感染はマスクでブロックされるから有効だ、と主張する論文もあります。そして、エアロゾルこそが感染の主な原因である、とも (Zhang R, Li Y, Zhang AL, Wang Y, Molina MJ. Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. PNAS [Internet]. 2020 Jun 11 [cited 2020 Jun 22]; Available from: https://www.pnas.org/content/early/2020/06/10/2009637117)。しかし、新型コロナウイルスで感染者の呼気や声や咳が「エアロゾル」による空気感染(遠くまで飛んでいく感染)を起こしていることを示したケースは稀有です。非常に限定的な状況下でそういうことが起きる「可能性」は示唆されていますが、それがしょっちゅう起きていることを示すデータは皆無です。

上記の論文でも「空気感染している、しかもそれが主要な感染経路である」ことを示したデータはないままそういうシナリオを作ってしまいました。これは専門家の間ではかなりの論争が起きて、論文撤回を要求するレターも書かれました(https://metrics.stanford.edu/PNAS%20retraction%20request%20LoE%20061820)。最近、コロナ関係の論文撤回はよく見られます。

 マスクの効果を検証したメタ分析もあります。マスクの感染防止効果は特に「医療機関内」「N95マスクの使用」で顕著に認められます。外を歩いているとき、市中のマスクの効果はCOVID-19についてはまだ十分な検証はありません(Chu DK, Akl EA, Duda S, Solo K, Yaacoub S, Schünemann HJ, et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. The Lancet [Internet]. 2020 Jun 1 [cited 2020 Jun 22];0(0). Available from: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31142-9/abstract)。 

  このメタ分析では2002年から流行したSARSを対象にした非医療機関でのマスク着用効果はフォレストプロットという図で示しています。特に効果を示した研究は2004年の中国でのデータなので、やはり感染が広がっている場合は市中のマスクの効果はあると思います(このときは国の施策としてのロックダウンはしませんでしたし、ソーシャルディスタンスも強調されていなかったと記憶しています)。

 ウイルスの突然変異で、欧米では流行しやすく死亡リスクが高い株、日本では流行しにくい株だった、という説もあります。

 が、これを支持するデータはあまりありません。コロナに限らず、ウイルスは皆しょっちゅう遺伝子の突然変異を起こしています。が、その突然変異が感染のしやすさや死亡リスクをどんどん変えるという事例はほとんどありません。一般論として、そういうことは「起きにくい」のです(New coronavirus spread swiftly around world from late 2019, study finds - ロイター [Internet]. [cited 2020 Jun 22]. Available from: https://jp.reuters.com/article/us-health-coronavirus-evolution/genetic-mutation-study-finds-new-coronavirus-spread-swiftly-in-late-2019-idUKKBN22I1E3)。

 なお、この論文ではウイルス突然変異の系統樹的解析により、SARS-CoV-2感染が昨年の10-12月くらいから起きていたことを示唆しています。このことの持つ意味は非常に大きいのですが、それについては少し後で述べます。

 人類はたくさんのウイルス感染と戦ってきましたが、遺伝子の突然変異や遺伝子型でウイルスのキャラが臨床的な意味で変わってしまう現象はめったに起きていません。まれな例としては、数十年に一度抗原がゴロッと変わって大流行してしまうインフルエンザウイルスA型がありますが、これも人類の免疫機能を逃れるようになったことが流行の原因で、ウイルスの感染のしやすさ「そのもの」や「病原性」がアップしたわけではないのです。

 この「遺伝子型」と感染のキャラの違いを説明した好例にB型肝炎ウイルスがあります。

 B型肝炎ウイルスには複数の遺伝子型(ジェノタイプ)がありますが、「欧米型のジェノタイプA」は性感染しやすく、従来の遺伝子型(例えばジェノタイプC)のウイルスは性感染しにくい、とよく言われます。

 しかし、性感染したHIV感染者のB型肝炎共感染例を見ると、たしかにジェノタイプAが半数を占めていますが、24%はジェノタイプCであり、必ずしもジェノタイプAだけが性感染するわけではないことが示唆されています(Shibayama T, Masuda G, Ajisawa A, Hiruma K, Tsuda F, Nishizawa T, et al. Characterization of seven genotypes (A to E, G and H) of Hepatitis B virus recovered from Japanese patients infected with human immunodeficiency virus type 1. Journal of Medical Virology. 2005;76(1):24–32.)。

 「遺伝子の違い」で臨床現象の違いを説明するというのは、ウイルス学的には興味深い仮説の立て方ですが、臨床感染症学の世界でそういうことはあまり起きていないのです。ましてや昨年から勃発したばかりのSARS-CoV-2感染でそんなことが短期間にドラスティックに起きるとはちょっと考えづらいです。

 BCGワクチン接種など、免疫学的な違いを根拠と考える説もあります。

 しかし、イスラエルで行われた研究でBCG接種者と被接種者でCOVID-19発生に違いが認められなかったこと(Hamiel U, Kozer E, Youngster I. SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults. JAMA [Internet]. 2020 May 13 [cited 2020 Jun 8]; Available from: https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766182)、ブラジルなどBCG接種国でもCOVID-19感染者、死亡者が非常に多くなっていることから、ちょっとBCGが「決め手」と考えるのは無理があるように思います。

もしかしたら、ちょっとは寄与している可能性はありますけど。最近は「BCGの株の違い」でいろんなパラメーター(例えば死亡者増加のスピード)で比べよう、などという研究もありますが(Akiyama Y, Ishida T. Relationship between COVID-19 death toll doubling time and national BCG vaccination policy [Internet]. Epidemiology; 2020 Apr [cited 2020 Jun 22]. Available from: http://medrxiv.org/lookup/doi/10.1101/2020.04.06.20055251)、いろんなパラメーターでたくさん解析すると「まぐれ」で違いはでることはあります。ちょっと苦しいかな、と個人的には思います。

 日本人の抗体産生の仕方、すなわち免疫反応や、抗体など免疫記憶に依存しない免疫機構(innate immunity, 日本では自然免疫というちょっとよくない和訳がついています)にその原因を求める声もありますが、これも確証的なデータはありません。BCGもInnate immunityへの作用がその効果の期待の根拠だったのですが、上述のようにちょっと微妙と思います。やはり、上記の「うまくいっている国」と「うまくいっていない国」を峻別する根拠になるかは不明ですし、個人的には微妙だと思います。

 京都大学の山中伸弥先生は、こうした予後を変える要素を「ファクターX」と呼んでいます。これから突き止めたい謎のファクター、ということですが、ぼくはむしろ日本、日本人特有のファクターではなく、もっと一般化できる(うまくいっている国共通の)要素を希求するのが筋だと思っています(https://www.covid19-yamanaka.com/cont11/main.html)。

 一つのヒントは、血栓です。

 すでに重症COVID-19感染で動脈、そして静脈の血栓が起きやすいことが知られています(Nahum J, Morichau-Beauchant T, Daviaud F, Echegut P, Fichet J, Maillet J-M, et al. Venous Thrombosis Among Critically Ill Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). JAMA Netw Open. 2020 May 1;3(5):e2010478–e2010478.)。これが予後に影響を与えている可能性もあります。

 海外で診療したことがある医者ならよく知っていることですが、欧米と日本では抗凝固薬のワーファリンの必要量が全然違います。アメリカだと10mgなど多い量で投与するワーファリンは、日本人だと体重の多さを考えてもずっと少ない量で十分な抗凝固ができます。ぼくは最初、このワーファリンの投与量の違いから、「日本人のほうが血栓ができにくいのでは」と思ったのですが、調べてみるとこれはワーファリンの代謝の人種間の違いで、直接的な抗凝固の違いではないようです(長尾毅彦. ワルファリンレジスタンス. 脳卒中. 2010;32(6):735–9.)。

 ただ、それとは別にやはりアジア人は静脈血栓はできにくいようです。これはカリフォルニアでの人種別の疫学研究で示唆されたもので、日本人や中国人などは静脈血栓リスクは他の人種・民族に比べると低いようです(Tran HN, Klatsky AL. Lower risk of venous thromboembolism in multiple Asian ethnic groups. Preventive Medicine Reports. 2019 Mar;13:268.)。

 動脈血栓、すなわち心筋梗塞や脳梗塞などですが、これは高血圧やいわゆるコレステロールの高い人(脂質異常)、肥満、男性、喫煙、糖尿病などがリスクです。COVID-19も男性や肥満はリスクになっていますから、COVID-19の動脈血栓のリスクがCOVID-19のリスク(あるいはその一部)になっている可能性はあります。

そして、こうした動脈の病気も日本人などアジア人では欧米より少ない傾向にありますから、これも説明の一つになっている可能性はあります。禁煙指導や高血圧の治療、スタチンなどによる脂質異常の治療などで動脈血栓の病気は世界的に減っていますが、それ以上に日本の頻度は海外のそれより少ないのです(Sekikawa A, Miyamoto Y, Miura K, Nishimura K, Willcox BJ, Masaki KH, et al. Continuous decline in mortality from coronary heart disease in Japan despite a continuous and marked rise in total cholesterol: Japanese experience after the Seven Countries Study. Int J Epidemiol. 2015 Oct 1;44(5):1614–24.)。

 ぼくは血管の病気の専門家ではないので、このへんの推測は一般的な医者目線からの議論に過ぎません。が、血栓と人種の関係はCOVID-19の重症化や死亡リスクに寄与している可能性は高いと思っています。さらに決定的なデータが出ることを期待しています。

 COVID-19の重症化リスク、死亡リスクに血栓形成が寄与している可能性は高いです。が、それだけでは「日本で感染者が少ない」理由は説明できません。海外から「ジャパンミラクル(Japanese miracle)」と驚かれる(あるいはいぶかしがられる)理由はどこにあるのか。

 専門家会議のメンバーでもある東北大学の押谷仁教授は、ジャパンミラクルを「森を見て全体像を把握する」という独特の表現で説明しています(http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/06/Vol.61_6-11_Interview_New.pdf)。

 それは、「感染が大規模化しそうな感染源を正確に把握し、その周辺をケアし、小さな感染はある程度見逃しがあることを許容することで、消耗戦を避けながら、大きな感染拡大の芽を摘む」ことだ、と押谷教授は説明します。そして「検査や診察への抑制的なアクセスはこのウイルスには必要な対策」だったといいます。そういう枝葉末節は無視して「木ではなく、森をみるべきだ」と。

 なお、押谷教授は「厚生労働省は2月17日に、軽症の場合「37.5度以上の発熱が四日以上続く方」は帰国者・接触者相談センターに相談する、という方針を示し」た、と述べています。それはそのとおりなのですが、そのような抑制的な検査の方針はあとで国民から大きな批判を受けます。そして、加藤厚生労働大臣は「そんなことは言っていない。あれは誤解だ」「目安ではあって基準ではない」といかにも厚労省の人っぽいことを言うのですが(加藤厚労相「『37.5℃以上』は相談・診療受ける基準でない、誤解だ」|医療維新 - m3.comの医療コラム [Internet]. [cited 2020 Jun 23]. Available from: https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/768152/)、押谷教授のコメントによると「そんなことは言っていた」ということになります。

 また、押谷教授は「欧米とアジアでは、歴史的・文化的な素地を含めて、(感染症に対する向き合い方が)根本的に違う」と主張します。すなわち、日本では天然痘が流行していたのを「疱瘡神」として神社にまつり、神として認めている。「天然痘と共存する」という諦観を含んだ関係が、日本やアジアの社会にあるのだ、というのです。

 これを読んだ多くの読者は感動しました。が、ぼく個人の感想は「なんか、全然間違ってるじゃないか」というものでした。個人的に押谷先生は存じ上げているので、彼が高潔な人物で、かつ立派な疫学者なのは存じていますが、アカデミズムの世界では人物評価と学説の評価は別物です。上記の説はまったく事実誤認としか言いようがありません。単純に事実的に、そしてロジカルに間違っています。

 その根拠を今から説明します。

 厚生労働省医務技監の鈴木康裕氏は「集中」2020年6月号で、2月の段階で日本の新型コロナウイルPCR検査のキャパシティが少なかったことを認めています。おまけに、ダイヤモンド・プリンセス号での船内感染対応で厚労省職員が忙殺されたため、当時必要とされていたPCR検査のキャパシティ・ビルディング、つまり検査体制の強化ができていなかったことも認めています。

 つまり、日本では押谷教授が主張するように「木を見ず森を見て」という「作戦」としてPCR検査を抑制していたのではありません。したくても、できなかったのです。

 なにしろ、国内発生がほとんどなかった2月の段階で、ダイヤモンド・プリンセス号内の乗員・乗客のPCR検査も五月雨式にしかできなかったのですから。この五月雨式の検査のせいで、ダイヤモンド・プリンセス号の中では権益隔離中に船内感染が起きているのかいないのか、判然としない状況が続きました。

 ただし、押谷教授の言う「小さな感染を見逃しながら、大きなクラスターを見逃さない」という当初の作戦は、結果的には妥当なものだったとぼくは考えています。

 検査のあるべき運用方法については別のところで詳しく説明します。ここではざっくりと、当初のPCR作戦が妥当であった根拠だけ指摘しておこうと思います。

 検査については多くの議論の混乱があります。これは、日本の臨床検査学が検査そのものの技術的な側面ばかりを論じて、その検査が患者に何をもたらすか、を十分に考えてこなかった、有り体に言えばエビデンス・ベースド・メディシン(EBM)がきちんと日本で教えられてこなかった弊害のためです。少なくとも、理由の一つはそれです。

 で、議論の混乱のひとつは、

PCR検査ができるキャパシティ



PCR検査の実践(実際に検査している)

の混乱です。厚労省関係の政治家や官僚もしばしば両者を混同してコメントしています。専門家会議ですらときどき混乱しています。臨床医学、臨床感染症学の基本的原則がこういうところでカンゼンに無視されているのが察せられます。

 感染症流行における検査とは、例えば火災報知器のようなものです。

火災報知器を設置しているというキャパシティ



火災報知器が実際にジャンジャカ鳴っていること

 は、別でしょ。

 できる



やっている

 は、別ってことです。

 PCR検査のキャパシティは重要です。パンデミックのような、世界規模での感染症の流行状況を正確に把握するには、そして目に見えないウイルス感染を察知するには、検査のキャパは絶対に必要で、「今いるウイルス」を見つけるには遺伝子を検出するPCRか、ウイルス粒子の一部を検出する抗原検査が必要です(抗体検査については別のところで説明します)。そして、抗原検査は感度の面でPCRに劣るため、PCRこそが必要な検査になるのです。抗原検査はあってもいいですが、優先順位としてはPCRのほうが上です。

 で、火災が起きたとき、火災かな、と思ったときはキャパが必要です。そのときに「火災報知器がない!」では困りますから。

 よって、2月の段階で日本がPCR検査のキャパシティを持っていなかったこと、そしてその体制づくりが上手く行かなかったことは、計算違いもあったとは思いますが、少なくとも「望んでやったこと」ではありません。

 2月後半、韓国で急速に新型コロナ感染者が増えます。これは宗教団体での集団感染で、一時は1日何千という感染者が見つかるほどの大規模な流行でした。

 当時、メディアでは検査を抑制する日本と、大量に検査を行う韓国の比較が行われました。どちらのほうが、正しい対策か。テレビのコメンテーターや、ツイッターなどのソーシャルメディアでも「感染症に詳しい」と称する医療者たちが盛んにコメントしていました。

 困ったことに、こういう「識者」のなかには政治的な意図をほのめかした、あるいは露骨に表明した人もいました。つまり、日本素晴らしい、韓国ダメー、というちょっと右寄りの人と、日本ダメー、韓国素晴らしい、というちょっと左寄りの人です。

 科学の議論に政治・信条を加味するのはご法度でして、そういうのとは全く無関係に感染症対策の是非を論じるのが筋なのですが、こういう「構図」を作ってしまったことで、ますます議論は激しくなってしまいました。

 ちなみに、韓国はあっという間に検査のキャパを増やし、1日10万回の検査ができるようになるまでに至りました(Fisher M, Sang-Hun C. How South Korea Flattened the Curve. The New York Times [Internet]. 2020 Mar 23 [cited 2020 Jun 23]; Available from: https://www.nytimes.com/2020/03/23/world/asia/coronavirus-south-korea-flatten-curve.html)。韓国ではアグレッシブに行った検査体制のなかで「ドライブスルー」を作って屋外でPCR検査を行ったりもしました。防護具(PPE)を着用した人たちが、車の窓越しに検体を採っている画像を見たことがある人もいるでしょう。

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