現在、準備している文章の一部です。長いです。
以下に述べることは多分に仮説に基づいている個人的な見解です。
基本的にぼくは診療のプロで、予測のプロではないために、未来予測はしないことにしています。臨床屋がやるべきは「想定されるシナリオを全部想定して、そのすべてのシナリオに対する最適解を模索する」ことです。なので、予測の欲望には抑制的であるべきで、「未来はこうなる」とは言わないものです。
しかしながら、今回はその定石をあえて選択せず、ある程度未来予測めいたものについても言及します。すなわち、「第二波がどうなるか」です。なぜ、未来予測めいたものを述べるに至ったかは、本稿をお読みいただければご理解いただけると思います。
読者の皆さんを焦らすのはぼくの本意ではありませんから、先に結論を申し上げておきます。つまり、
「第二波は第一波より(いろいろな意味で)小さいものになる可能性が高い」
というものです。
1918年の「スペイン風邪」と呼ばれたインフルエンザ・パンデミックでは、第一波よりも第二波のほうが規模が大きく、より多くの死者が出たことが知られています(Reopening too soon: Lessons from the deadly second wave of the 1918 flu pandemic [Internet]. Washington Post. [cited 2020 Jun 22]. Available from: https://www.washingtonpost.com/history/2020/05/24/second-wave-pandemic-flu-1918-coronavirus/ 国立感染症研究所感染症情報センター インフルエンザ・パンデミックに関するQ&A [Internet]. [cited 2020 Jun 22]. Available from: http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html)。
その原因ははっきりとはしていませんが、アメリカなどでは戦費調達のためのパレードを決行し(当時は第一次世界大戦が行われていました)、こうした活動が流行を広げたという説もあります。
いずれにしても、100年前のスペイン風邪の経験から、次の第二波はより大きくなるのではないか、という予測がなされているのです。
この予測(懸念)が正しくなる地域もひょっとしたらあるかもしれません。が、ぼくの予想では、多くの国ではそうはならないだろうと思います。おそらく日本もそうはならないと考えます(希望もしています)。
では、なぜそう考えるのか。その根拠を述べる前に、以下の重要な命題を議論する必要があります。それは、
「なぜ日本では(第一波の)感染者数も死亡者数も少なかったのか」
です。
この問題は世界中多くの方に議論されています。ぼく自身、国内外の新聞社やテレビ局にこの質問をしばしば受けています。当初はぼくにも分からなかったです。いくつか仮説はあったもののすべて仮説の域はでなかったからです。現在でも、この命題に対する回答は仮説の範囲のなかです。これだけ大規模な国レベルの感染症の流行なんて、そう簡単に再現実験のような実証は不可能だからです。
が、現在ではこの理由についてはある程度目星がついています。
それは、他の仮説を否定するとうい消去法によるものです。シャーロック・ホームズのように「全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる」わけで、対立仮説を除外していけば、残された仮説こそが真実(に一番肉薄しているもの)、といえるのです。
ときに、
「なぜ日本では(第一波の)感染者数も死亡者数も少なかったのか」
という命題は最初に修正しておかねばなりません。
どうしてかというと、第一波の感染者数、死亡者数が少ないのは日本だけではないからです。
では、まずは多い国から見ていきましょう。
ジョンズ・ホプキンス大学システムサイエンス・工学センターのCOVID-19ダッシュボードをみてみます。2020年6月22日午前の段階で、最も確定例が多いのは、
アメリカ2,278,588例
ブラジル1,083,341例
ロシア583,879例
インド410,461例
英国305,803例
ペルー251,338例
スペイン246,272例
チリ242,355例
イタリア238,499例
イラン204,952例
フランス197,088例
ドイツ191,272例
トルコ187,685例
メキシコ180,545例
パキスタン176,617例
サウジアラビア157,612例
バングラデシュ112,306例
カナダ103,078例
南アフリカ共和国97,302例
カタール87,369例
中国84,556例
コロンビア65,813例
ベルギー60,505例
ベラルーシ58,505例
スウェーデン56,043例
などとなっています。アメリカ、ブラジル、ロシア、インドという人口の多い国に感染者が多いことに気づきますが、最初に流行が起きた中国は巨大な人口を抱えているにも関わらず、「案外」感染者数は低く抑えられています。また、当初は「成功した」国と目されていたドイツもかなりの感染者を出していますし、実験的にロックダウンはしてこなかったスウェーデンも感染者数は5万人を超えました。
日本はとというと、同じデータによると
17,780例
です。世界的に見れば、これはかなり少ないデータと言えましょう。
もちろん、これは人口構成を無視して考えていますから、国際感比較をするためには「人口あたりの感染数」を検討しなければなりません。ヨーロッパCDCのデータをOur World in Dataというサイトが引用しており(https://ourworldindata.org/covid-cases#world-maps-confirmed-cases-relative-to-the-size-of-the-population)、これによると、人口100万人あたりの感染者数で多いのは(同日閲覧)
カタール30,019(端数は切り捨て)
サンマリノ20,507
バーレーン12,535
チリ12,384
アンドラ11,065
クエート9,166
ペルー7,622
シンガポール7,150
アメリカ6,812
アルメニア6,650
ルクセンブルク6,557
ベラルーシ6,131
パナマ5,845
オマーン5,593
スウェーデン5,549
アイスランド5,339
ベルギー5,224
ジブラルタル5,223
アイルランド5,138
ブラジル5,022
ジブチ4,620
アラブ首長国連邦4,502
英国4,464
サウジアラビア4,430
モルジブ4,045
ロシア3,953
イタリア3,940
さあ、感染者数をそのままみるのとは随分違う光景が見えてきます。人口が少ないところは、感染者数が少し増えただけで人口あたりの感染者数は激増します。よって、さきほどは出ていなかったサンマリノとかルクセンブルク、モルジブといった名前が見られるようになります。さて、少ない方はというと、
パプアニューギニア0.89
レソト1.87
ラオス2(以下、小数点以下切り捨て)
ベトナム3
アンゴラ5
ミャンマー5
カンボジア7
タンザニア8
シリア11
ブルンジ12
ガンビア15
ウガンダ18
ナミビア18
チモール18
台湾18
フィジー20
モザンビーク22
イエメン30
マラウィ32
ジンバブエ32
ボツワナ37
エチオピア38
エリトリア40
と続きます。
記事
- 2020年06月23日 16:11
なぜ、国ごとに差が出たのか。そして第二波がどうなるか。
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