「アイデンティティ」。それは、“同一性”や“主体性”を意味する。2ndアルバム『2nd Emotion』で自分たちの感性を打ち出し、3ndアルバム『3rd Identity』で自分たちにしか出せない表現の形を追究したSUPER★DRAGONが、その構築美を立体で見せた東京・日比谷野外音楽堂ライヴ。『IDENTITY NINE』と題した9月7日のそのライヴは、想像よりもはるかに独創的で、なおかつ今の彼らの “存在意義”を最高潮で証明したステージとなった。
「周りのお客様のへの配慮をお願いいたしまっす。ということでみなさん、盛り上がる準備はできたのか!それでは間もなく開演しまーす」。洸希によるハイテンションな影アナで場を沸かし、ひとりずつステージに登場。まだ明るい空の下、パワフルなダンスと歌声が清々しいビートナンバー「Mada’ Mada’」「hide-and-seek」と続け、見事なスタートダッシュをキメた。「俺たちがSUPER★DRAGONです。よろしくお願いします!」。もはやお約束事がたくさん出来上がっている自己紹介コーナーを挟み、この日を迎えた喜びをわかち合う。実は野音はグループ史上最大規模となる会場であり、立見席を用意するほどの動員数(3000人)だったのだが……すでに小さく感じたのは、彼らの熱量が広い会場の隅々まで届いていたのはもちろんのこと、この日の内容が単なるニューアルバムのお披露目に留まらなかったからに他ならない。挨拶が終わって中盤、正面のビジョンに「それぞれのアイデンティティを表す9つの物語が今はじまる――」といったメッセージが流れ、なんとそこから全10曲、アルバム『3rd Identity』の楽曲をぶっ続けに届けていった。
ファンダンゴ調のリズムに合わせた、ギターを弾くような振り付けと和哉のデスボイスラップが印象的な「La Vida Loca」。ステージの2階にポップアップで現れた颯と、みんなで振る水色のタオルに合わせて頭をぶんぶん振り回す壮吾が超クールな「Dragonfly」。ピカソカラーのジャケットとサングラスで妖しい色気を漂わせる毅と、スマートにバク転をキメた玲於と颯が絶妙な男らしさを感じさせる「My Playlist」。毅、ジャン、洸希、彪馬、和哉が歌とラップを織り交ぜながら踊り、それぞれのジャケットをまるで女性を相手にするようにトルソーにかけるシーンがドキドキさせる「Jacket」。彪馬の滑らかな歌声と毅の柔らかな歌声に合わせて女性ダンサーが踊り、その女性ダンサーとすれ違いながら、楽が届かぬ想いに苦悩する表情だけで楽曲の世界観を描いていく「Remedy For Love」。それまでの雰囲気とは一変、全員で2階部分に腰掛け、メンバー同士肩を組み横に揺れながら歌うポップソングの「雨ノチ晴レ」まで、様々なタイプの楽曲を多彩な演出で展開していき、観る側が息をつく間もないほど引き込んでいった。メンバーにおみこしされてニコニコな壮吾、玲於の膝の上に腰掛ける楽、和哉が彪馬にお尻をグリグリと擦り寄せるなど、メンバーの仲睦まじいやり取りにやっとこちらにも余裕ができて、いつの間にか外が夜になっていたことにようやくに気付いたくらいだ。
そして再び、ジャンのカクカクしたポップの動きがゲーム感を生み出すデジタルチューン「New Game」から、涙腺が緩みそうなくらい彪馬のファルセットが美しい「PANDORA」、玲於が打ち鳴らす巨大な銅鑼の音と、洸希と和哉のタイプの異なる低音ラップがスリリングな「Strike Up The Band」、ハイトーンのボーカルと重低音ラップ、芸術的なフォーメーションという彼らの武器を最大に活かした「Don’t Let Me Down」まで、一秒の油断も許さない濃厚なステージングで観客を魅了。新曲ばかりをぶっ続けで聴かせるなんて、大物アーティストでも難しいことだろう。しかし、それもSUPER★DRAGONだからこそできることなのだ。確かな歌唱力とラップで耳を捉え、圧倒的なダンスで目をくぎ付けにし、爆発的なエネルギーで全身を揺さぶる。すべての曲に素直に驚き、感動し、まるで長年聴いている曲のように受け止める観客の反応が、それを物語っていた。
「僕らがこうして結成してから変わらず楽しくやれているのは、間違いなくここにいるみんなのおかげ。これからも僕たちはちゃんとこだわり抜いて、みんなに届けて、みんなと一緒に僕たちの見たい景色を見ていきたいと思っています」
SUPER★DRAGONとファンの間にある絆を再確認した毅の言葉に続き、本編ラストには「BROTHERHOOD」を披露。洸希のビートボックスと、毅の叫びにも似た歌声がさらに場内のテンションを煽る。歌う洸希を、後ろからハグするジャン。あちこちで交わされる、メンバー同士のグータッチ。2曲サービスしたアンコールでも、毅が彪馬の手をとって走り出したり、颯と楽がじゃれあうように向かい合って踊っていたり、そこにはいつにも増して無邪気に楽しむ9人の姿があった。
11月16日のCDデビュー日に東京・豊洲PITで『ドラフェス2019』が開催されること、冬にはファイヤードラゴンとサンダードラゴンそれぞれのミニアルバムが発売されることも発表された。アイデンティティを確立しながら、なお新たな領域へ踏み込む姿勢を見せたSUPER★DRAGON。その伸びしろは、怖いくらいに未知数だと実感した夜だった。
写真/笹森健一、小坂茂雄 文/川上きくえ