JR東海、湧水「全量戻し」軽視 静岡県や国との協議長期化、リニア静岡工区問題
(2020/6/23 07:59)-
JR東海がリニア中央新幹線の東京・品川-名古屋間で目指している2027年開業の遅れが現実味を増している。JRは南アルプストンネルの静岡工区の未着工を要因に挙げ県側に早期の着工に理解を求める構えだ。ただ、JRは県との間でトンネル掘削時に湧き出る水の全量を大井川に戻すかどうかを巡るやりとりに時間を費やしてきた。川勝平太知事は「(JRの)水問題への認識が不足していた」と指摘し、「全量戻し」を軽視してきたとの認識を示す。
全量戻しの原点は14年3月の環境影響評価(アセスメント)準備書に対する知事意見への「湧水を現位置付近へ戻すこと」との記載にさかのぼる。同年10月の国土交通相による事業認可を経て県とJRは本格協議に入ったがJRはなかなか全量戻しに応じなかった。
JRは川の水の減る量が特定でき、減少分だけ湧水をポンプアップして川に戻すと主張。県は川を流れる水の減少量は特定できないとして全量戻しにこだわった。JRが県側の意向に沿って全量戻しを表明したのは、事業認可から4年後の18年10月だった。
その後も新たな課題が浮上した。18年11月の県有識者会議で委員が県内に食い込む山梨、長野両工区部分の湧水が工事中に県外に流出することを指摘。JRは県に実効性ある対策を示さず、19年8月に「一定期間の工事中は湧水が戻せない」と表明するまで9カ月間かかった。それ以降、全量を戻さなくても大井川の水は減らないと説明するようになり、県が反発。国交省が調整に乗り出して協議は長期化した。
一方、国交省が設置した専門家会議の委員の人選を巡っては、川勝知事が県独自で公募する奇策を打ち出し、県議の一部から「知事は協議を遅らせている」と批判された。専門家会議が議論に入ったのは今年4月。県外流出の対策について現在議論を進めている。JRは「真摯(しんし)に対応し、地域の心配を解消したい」とコメントしている。
<メモ>工事期間中のトンネル湧水の県外流出 南アルプストンネル県内区間(10・7キロ)のうち、東側1・1キロは山梨工区、西側700メートルは長野工区となっていて、山梨、長野両県から県内に食い込む形で掘削される。JR東海は、この部分から出る県内の湧水はトンネルの静岡工区部分とつながるまでの間、大井川に戻せないとしている。事前の地質調査が十分できておらず、流出量や流出期間は特定できない。
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