9人組ダンス&ボーカルユニット・SUPER★DRAGONが、初の東名阪ワンマンツアー『NUMBER 9 TOUR』を開催。全公演をソールドアウトさせて4月29日には大阪・umeda TRADでファイナルを迎えた。超特急やDISH//などで知られる若手アーティスト集団・EBiDANに所属する彼らだが、その最大の武器はヘヴィロックをベースにラップやヒューマンビートボックスを取り入れたダイナミックなパフォーマンスと、それぞれのスキルの高さ。全員10代とは思えぬハイレベルかつ多彩な持ち味を、2部制で行われたストーリー性の高いライヴでいかんなく発揮し、2部の最後では東京・豊洲PIT、Zepp Osaka Baysideとさらに大規模なライヴツアーを8月に行うことも発表して、無限に広がる未来を提示してみせた。
まず、9人がひとつのシェアハウスに住んでいるという設定の1部は“room”と名づけられ、幕開けから全員お揃いのジャケットでキメてクールにダンス。ジャケットを羽織るのみならず、巧みに操ってソールドアウトの客席をアッと言わせると、瞬発力満点の1stシングル「Pendulum Beat!」から場内を圧倒する。ジャンと毅が挑発的にラップをかけ合い、それを彪馬の抜けのいい歌声が引き継いで、サビを受け持つ洸希へと繋ぐボーカル展開も実にスリリング。さらにジャンと和哉のヒューマンビートボックスがダメ押しして、スタートダッシュは万全だ。続いて歌舞伎の動きと音を取り入れた「BIG DIPPER」、アフリカンなビートに乗って見事なフォーメーションダンスが繰り広げられる「Ooh! Ooh!」と、バラエティ豊かなメニューに客席がヒートアップすれば、毅も「最初から熱気が半端ない!」と満足気。腰を揺らすメンバーに歓声があがる「The Survivor」からはドープなHIP-HOPチューンが畳みかけられ、「大きな声を出したほうが、たこ焼きはうまいよな!」というジャンの煽りで「BAD BOY」では客席とコール&レスポンス。メロディックな旋律とラップ、ヒューマンビートボックスと4つ打ちが交錯するサウンドに、数多のジャンルを取り込んだダンスは彼ら独特のものだが、東名阪いずれの会場もバンド御用達のライヴハウスであったことが示す通り、彼らのアピール手法はロックのそれに近い。
反面9人という大所帯を活かし、年上メンバー4人の“ファイヤードラゴン”に年下組5人の“サンダードラゴン”と、グループ内にふたつのチームを持つのもSUPER★DRAGONの大きな特色。1部でもサンダードラゴンはキャップを、ファイヤードラゴンはシューズを器用に躍らせた“LiteFeet“というダンスで目を楽しませたのに加え、サンダードラゴンは「リマカブロ!」「GETSUYOUBI」といった明るく元気なナンバーで、ファイヤードラゴンはエレクトロな「PAYAPAYA」にR&Bラブソングの「ARIGATO」と、本体とはひと味違った方向から耳をも楽しませた。そのままの勢いで最後までパワフルに駆け抜けたが、終演後の映像では怪しげな鍵穴が映し出され、何やら扉の向こうの世界に飛ばされたらしき9人の声が。謎を残したまま、物語は2部へと引き継がれることになる。
“sense”と名付けられた2部は、オーディエンスを明るく盛り上げ切った“陽”な1部から一転。オープニングSEに続いて仮面を付けた9人が現れると、「hide-and-seek」でのダークな幕開けから“陰”の世界観で攻めていく。よくよく見るとメンバー全員髪の色も変え、何やら妖しげなムード。それに触発されてかヘヴィな「HACK MY CHOICE」では1部以上に分厚い観客の声が湧き、「BIG DIPPER」でもメンバー全員メガネをかけてのレアなパフォーマンスにフロアのテンションは上がりっぱなしだ。
そして物語は本編へ。見知らぬ空間に飛ばされたメンバーが出口を探して彷徨う中で、颯、玲於、毅の3人が特殊能力を開花させていく。颯はサッカースタイルでリフティング&サッカーダンスを見せ、大音量の“颯!”コールの中、バク転を披露。玲於は巨大なラジカセを持ち込んでのブレイクダンスに、次から次へと大技をキメてみせる。アクロバティックなパフォーマンスで魅せたふたりに対し、毅は結成前から歌ってきた「砂時計」をアコースティックギターで弾き語り。曰く「1stワンマンで歌わせてもらったときから、ずっとやりたいと思っていた」というだけあり、そのエモーショナルで情感溢れる歌声には満場の拍手が湧いた。ちなみに他の6人は既に特殊能力を披露済みで、東京公演では和哉が殺陣、洸希がループステーション演奏&ビートボックス、鉄ヲタの壮吾は山手線ラップを。名古屋公演では楽がシューズ&ハットトリックを組み込んだライトフィート、ジャンがコミカルで不気味なアニメーションダンス、彪馬は掌からレーザーを操って、そのダンス力でオーディエンスを魅了したという。
さらに出口を探すため、サンダードラゴンとファイヤードラゴンの二手に分かれてのパフォーマンスの後は、音楽の力で扉を開けようと6月28日発売の新曲「ワチャ-ガチャ!」をいち早くプレイ。アニメ『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド〜機動救急警察〜』(TBS系)のオープニング主題歌でもある重低音と軽やかさを併せ持った彼ららしいポップチューンに、場内の空気もパッと明るくなる。さらにメンバーがタオルを振りたくる「+IKUZE+」へと続いて、「アクシデントもあったけど最高に楽しかった。新たな目標に向かっていきたい」と颯がツアーの感想を告げるとメンバー同士の、そしてファンとの絆を歌う「BROTHERHOOD」へ。クリーンな歌声にラップ、ビートボックスとスパドラの武器がシリアスな融合を果たした末のサビでは、ファイヤードラゴンとサンダードラゴンのハンドサインを組み合わせた“スパドラポーズ”を全員で掲げるという感動的な光景を出現させて、観る者の心を揺さぶった。
アンコールでは先輩グループであるPrizmaXの清水大樹が作詞曲に振り付けまでをプロデュースした「Believe」を披露。スパドラ史上初の全員ボーカルで歌われるナンバーは、今に至るまでの経験や感情をジャン、洸希、和哉が自ら綴ったラップ詞と相まって、ジワリと熱く胸に沁み入ってくる。最後に「ここにいるひとり残らず“きっと絶対”という願いを込めて」と毅が前置き、「KITTO→ZETTAI」で再会の約束を交わすと、8月18日の豊洲PIT、8月27日のZepp Osaka Baysideと次回のライヴツアーを発表。そして映し出された映像では、ようやく9つの光が揃って扉が開き、何が待っているかわからないながらも「進むしかないね」というメンバーの声で記念すべき初東名阪ツアーの幕を締めくくった。
終演直後には「ワチャ-ガチャ!」のMUSIC VIDEOもYouTubeにて公開。メンバーそれぞれが様々な職業を演じるストーリー仕立ての賑やかな映像は、観るだけで笑顔になること必至だ。しかし決してかわいいだけ、カッコいいだけのグループではないのが彼らのキモ。リリースイベントも各地で予定されているので、観る者に予想外の衝撃を与える“体ひとつで楽しむライヴ”を、この機会にぜひ一度体験してみてほしい。