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(裕一)ええ~っ!?
ほ… 本当!? ぼ… 僕らの赤ちゃん!?
本当!?(音)うん。
えっ!? ちょっと… えっ?えっ ちょっと… えっ えっ えっ?
ぼ… 僕… 僕 父親になんの?父親になんの?
うん。えっ どうしよう? えっ えっ?
えっ 信じられない!か… 体 大事にしないとね。
あっ 調子悪かったら すぐ言ってよ。うん。
あっ! ちょ… 薄着すぎない?もう あったかくした方がいいよ。
大丈夫だから。いやいやいや もう…。大丈夫…。
学校行くのもね 足元…。大丈夫。
音… 学校は? そうだ…。
退学しないといかんだろうね。
まあ… 子育てしながらじゃ通学できんし。
そっか… うん…。
そ… そうだよね…。
でも…記念公演だけは出るよ。
「椿姫」だけは絶対に成し遂げたいの。
えっ? だ だ… 大丈夫?
おなかも まだ そんな目立たんしまあ なんとかなるよ。
それに 学校はやめても 公演を成功させてレコード会社の目に留まれば歌手になる道は開けると思うの。
いや そうなれば一番いいけど…。
お母さんになることも 歌手になる夢も両方かなえる。
裕一さん 応援してくれる?
いや もちろん! もちろん 僕は もう何でも協力します!
あっ でも… 絶対 無理だけはしないで。
はい。絶対だよ!?はい。約束だからね?
はい。約束して。は~い!はい。
食べて。はい。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(保)そっか~。裕一君も ついにお父さんか。はい!
(恵)音さん 体調は?あ~ 元気に学校行きました。
冷えないように腹巻きさせたり かかとの高い靴もやめるように言いました。
さすがだね。 きっといいお父さんになるね。ハハハハ。
気を付けてあげてね。出産って 命懸けの仕事だから。
命懸け…。そうよ。
大事にしてあげないと。 フフッ。はい!
♪~
(黒崎)えっ!? 妊娠?
はい。えっ?
(久志)よかったね おめでとう。
もう少し落ち着いてからお知らせしようかとも思ったんですけど。
いやいや… こういうことは一刻も早く言ってもらった方がいい。
一緒にやれなくなるのは残念だが…。
めでたいことだしな。
いえ 私 舞台には出ます。えっ?
生まれるのは まだ先ですし体調も問題ありませんから。
(黒崎)いやいや…妊婦さんが舞台に立つってのは…。
決して皆さんにはご迷惑をおかけしませんので引き続き どうぞ よろしくお願いします。
(戸の開閉音)
ただいま~。
・(木づちでたたく音)
フフッ。
どうしたの? これ。お帰り!
ちょっと気ぃ早いかって思ったけどね待ちきれなくて。
かわいい。でしょ?
着るものは分かんなかったから今度 一緒に買いに行こう。
それは生まれてからでいいよ。
まだ男の子か女の子かも分からんし。
そう? あ~ まあ そうだね。
ねえ 音さ…ねえ どっちかな? どっちかな?
うん?男の子と女の子 どっちがいい?
う~ん… 元気に生まれてきてくれればどっちでも。
う~ん… 僕は どっちかな~?
女の子かな?あ~ でも 男の子も悪くないな~。
どっちかな? 迷う…。あっ 音 とにかく体 気を付けてね。
うん。無理 禁物だよ!うん。
よいしょ…。
あのね…。うん。
今日 学校で みんなに妊娠のこと…。あれ? やすりって あったっけな?
あるよ 納戸に。 持ってくる。あっ… いい いい! 僕 行くから。
あそこ 足元悪い。 音 休んでて。フフフ。
はい 座って 座って。 納戸 納戸…。
(井上)やっぱ ヴィオレッタは交代した方がいいんじゃないかね?
(豊子)本来なら千鶴子さんなわけだし。
(西田)その方がこっちも気兼ねしなくて済むよな。
あ~あ…。
(千鶴子)ちょっといい?
やっぱり あなたは強欲ね。
あなたが どう生きようと構わない。
でも… 少しは周りのことも考えて。
周りのこと?
正直 みんな 戸惑ってる。
あなたに気を遣って思いっきり練習ができないって。
気を遣ってもらう必要なんてないです。
そういうわけには いかないでしょ!
私だって… こんなこと言いたくないのよ。
えっ 音 音? ちょ… 大丈夫?
大丈夫。いや いいよ… 僕 やるから。
平気だって。 病気じゃないんだから。うん…。
・ごめんくださ~い!
うん? あっ… はい! はい!
あっ お義姉さん こんにちは!
(吟)こんにちは。あっ どうぞ。
よいしょ…。あっ もう新婚生活 落ち着きました?
ええ おかげさまで。
音! 吟さん 来てくれたよ。フフフ。
妊婦さんって酸っぱいもん欲しくなるっていうからこれ!ありがとう。
裕一さん どう? お父さんになる気分は。
あっ… いや まだ実感 湧かないですね。
あっ どうぞ どうぞ。へえ~。
それにしても早速 おもちゃだらけじゃない。
いや 何か かわいいの見つけっとねつい買っちまうんですよ。
私も ついに 伯母さんか~。
お母さんも梅も すっごく喜んどったよ。お~。
梅は 東京に用事もあるから近いうちに会いに来たいって。
東京に何の用事?
あの子 また やる気出して小説の文学賞に挑戦しとるみたい。
ほ~う。出版社に行くとか何とか。
よく知らんけど。そっか。 梅も頑張っとるんだね。
あんたの方は? 学校の手続きはしたの?
手続きって?退学するんでしょう?
記念公演が終わるまでは通うつもりだよ。
えっ!? 何言っとるの。あんた 妊婦でしょう?
妊婦が学校通っちゃいかん決まりでもあるの?
おなかの赤ちゃんに万一のことがあったらどうすんの?
気を付けとるから大丈夫だって。でも あんた一人の体じゃないんだし…。
分かっとるよ! いちいち うるさい!
あっ… すいません 何か。
いや 何か すいません。
ううん。 妊婦さんの中には 気分が不安定になる人もいるっていうしそのうち 落ち着くでしょ。…だといいんですけど。
じゃあ また。ありがとうございました。 気ぃ付けて。
失礼します。
いいなあ… 赤ちゃん。
♪~(鼻歌)
♪~(歌声)
♪~(歌声)
(環)早いわね。
あっ…。
いろいろ取り戻さないといけないので…。
今日は… 「今日も」だけど古山さんは 5度以上 音が飛ぶと不安定になる。
まずは そこを克服しないとね。
はい。
先生だけです 普通に接して下さるのは。
みんな 変に気を遣ったり…二言目にはおなかの子どもに障るからって。
私は あなたを特別に扱う必要なんてないと思ってる。
あなたにはヴィオレッタとしての責任があるしそれを全うする義務がある。
はい。
古山さんあなたは「椿姫」の舞台に出たいのよね?
もちろんです!舞台をしっかり務め上げてプロの歌手になりたいです!
そう…。
一つ 確認してもいいかしら?はい。
プロってね…たとえ子どもが死にそうになっていても舞台に立つ人間のことを言うの。
あなた 当然 その覚悟はあるのよね?
・音 入るよ。(襖が開く音)
大丈夫? これ… うどん煮てみたけど。
要らん。
果物なら食べれそう?
うん? えっ 起きんの?
学校行かんと… 稽古ある。
えっ? いや 駄目だよ 駄目駄目。一日ぐらい休んだって平気だから。
ほら 寝て 寝て。ぐらい? 「ぐらい」って何?
えっ?私は ヴィオレッタなの。
一日でも休んだら みんなに迷惑かかる。
いやでも… でも 音 お母さんなんだから。
体 大事にしないと。
お母さん… うん…お母さん お母さん お母さん…。
裕一さんにとって 私って何?
赤ちゃんのお母さんでしかないの?
いや… そんなこと…。
いや そんなこと言ってないよ。
裕一さん 代わりに産んでよ。
裕一さんは家で仕事できるからおなかに赤ちゃんいたって大丈夫でしょう?
代われるなら…本当 代われるなら 代わってあげたいよ。
♪~
どうして 女だけ…。
それから2週間音は つわりがひどくほとんど 練習に参加できませんでした。