エアコンや空気清浄機では換気はできない?

新型コロナウイルス対策(以後、コロナ対策)のひとつとして重要視されている「換気」。
いわゆる「3密」(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)を回避するための対策の1つとして推奨されているが、実際のところどれぐらい換気をすれば感染リスクを抑えられるのかは、明確には定義されていない。厚生労働省の専門家会議でも、「可能であれば2方向の窓を同時に開けて換気する」の表現にとどまっている。

しかし、特に集合住宅では浴室やトイレなど窓のない住戸も多く、換気をどのようにすればよいのかが悩ましい。また、誤解されることが多いが、エアコンでは換気はできないという。これから日本は梅雨そして夏を迎える。いまや東南アジア並みに猛暑を記録する日本で、エアコンが換気にならないのだとしたら、どのように効率的な換気を行っていけばよいのだろうか?

そこで、空調のプロであるダイキン工業に「上手な換気の仕方」を聞いてみた。

ダイキンでは、いち早く新型コロナウイルス対策を意識した「上手な換気の方法」を公式HPで公開しているダイキンでは、いち早く新型コロナウイルス対策を意識した「上手な換気の方法」を公式HPで公開している

2003年7月以降の住宅は、既存換気システムを利用する

ダイキンでは、今回の情勢を受けて、いち早く「上手な換気の方法」の情報を公式HPに公開している。そこで紹介されているのが主に3つのポイントだ。

最初のポイントは「24時間換気システムを正しく使いこなすこと」だとダイキン工業株式会社 広報グループの野呂朋未氏は説明する。

「建築基準法の改正により2003年7月以降の建物(マンション・戸建て関わらず)には、換気口や24時間換気システムが必ず設けられています。通常であれば2時間で部屋の空気が入れ替わる仕組みです。ですがこれがきちんと使われていないことも少なくありません。換気口が閉じられたまま、またはシステムのスイッチが切られたままということもあります」

マンションであれば、浴室に乾燥機能と同時に24時間換気システムがあることが多いが、ついついスイッチを切ってしまったりしていないだろうか? 換気口も冬場に外から冷たい空気が入ることを嫌がって閉めっぱなしという家庭もあるだろう。また換気口のフィルターに埃がたまっていると空気の交換率は当然悪くなる。「家にいる機会も多い今、換気口の掃除もしっかりして、せっかくあるシステムを正しく使ってほしい」と野呂さんは訴える。

自宅に換気システムが整っていることを意識している人は、少ないのではないだろうか?夏を前にして、一度ご自宅の換気口や換気システムを確かめてみて欲しい。

一般的なマンションの換気システムの一例一般的なマンションの換気システムの一例

トイレなど窓のない部屋の換気方法は?

窓を開ける際の効果的な換気方法窓を開ける際の効果的な換気方法

ポイントの2つ目は「窓を開けて空気の通り道」を上手につくること。通常窓を開けての換気の目安は、1時間に5分~10分程度と言われている。しかも、できることならばこまめに回数を多くすることが効果的とされる。2時間で1回10分の換気をするよりは、1時間に5分の換気を2回行った方が効果が高いというわけだ。

窓の開け方としては、対角線上に2カ所の窓を開けて空気の通り道をつくるのが理想形だ。より効率を狙うのならば、風や空気の性質を利用して、外から空気の入る入り口の窓は小さく開けて、出ていく窓を大きく開けると換気効率はさらに良くなる。

しかし窓が1カ所しか開けられない場合や、トイレなど窓のない部屋ではどうしたらよいのだろうか? ここで役立つのが「扇風機」や昨今身近になった「サーキュレーター」の存在だ。

窓が1つしかない場合には、扇風機を窓の方へ向けて部屋の外に空気を出すようにする。扇風機を部屋に向けて置いてしまうと、外の空気は部屋の中に入ってくるものの汚れた部屋の空気が外に出にくくなるので注意が必要。窓のない部屋やトイレも同様で、ドアを開けて外側に向けて扇風機を置くと換気がしやすくなる。

3つめのポイントはキッチンの換気扇を上手く利用すること。キッチンの換気扇は排気量が大きいので利用しない手はない。①「換気扇を回して、なるべく遠いところの窓を開ける」②「2つの窓を開けていても、アシストとして換気扇を回す」とより換気効率が高められる。

換気をしても効率的にエアコンを使うには?

効率良く部屋を冷やすには、エアコンの対角線に扇風機やサーキュレーターを設置するとよい効率良く部屋を冷やすには、エアコンの対角線に扇風機やサーキュレーターを設置するとよい

エアコンをかけていても窓を開けての換気が必要となると、気になるのがこれからの猛暑の時期の対応だ。1時間または2時間おきに換気が必要となると、せっかく冷えた部屋が無駄になりそうでついつい換気がおっくうになってしまいそうだ。また、電気代への影響も気になる。野呂氏にその点を質問すると、換気をしても効率的にエアコンを効かせられるポイント2つを教えてもらった。

①換気の際にエアコンの設定温度を少し高くし、スイッチは切らないこと
②換気後(窓を閉めた後)、上手く扇風機・サーキュレーターを活用すること

「まず①は、節電のノウハウとして知られていますが、エアコンはON・OFFの際に一番電気を消費します。そのため換気の際もエアコンのスイッチは切らずに、多少温度を高めに設定して稼働したままにした方が効率的です」(野呂氏)

さらに②は、換気後にエアコンの対角線上に扇風機やサーキュレーターを置くと、冷えた空気が攪拌され、温度ムラを解消しやすく部屋全体を効率良く冷やせるという。

文末の「あなたとエアコンに、できること」はエアコンの節電についてまとめられた情報だが、しっかりと換気をするための効率的なエアコンの使い方としても役立てられるはずだ。ぜひ参考にしてほしい。

空気調和・衛生工学会と日本建築学会の換気への公式見解

今回お話を伺ったダイキン工業株式会社 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 野呂朋未氏今回お話を伺ったダイキン工業株式会社 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 野呂朋未氏

このほか、換気に関しては、空気調和・衛生工学会と日本建築学会による発表も役立ちそうだ。コロナ感染として考えられる3つのルート(飛沫感染・接触感染・空気感染)との関係性の中で、そもそもなぜ換気が必要とされているのか。

また、戸建てとマンションのそれぞれの一般的な換気システムの方式などが図解されているため、一度目を通しておくとその仕組みを理解しやすいだろう。

新型コロナウイルス対策として、最も重要なのは飛沫感染、接触感染を避けること。もちろん、換気だけでコロナ対策ができるわけではない。また、現在のところコロナ対策としてどのような換気が効果的か、エビデンスとしてはまだあがってきていない。

ただし、一般的に「正しい」換気を行うことは、意味がある。ダイキン工業では既に「上手な換気の方法」の英語版も提供している。今後はオフィスでの換気方法も発表していく予定だ。

少しでも早くこのパンデミックを収束させるためにも、家庭でもこまめな換気を実践していきたいところだ。

2020年3月23日 空気調和・衛生工学会と日本建築学会による発表
新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して(緊急会長談話)
https://www.aij.or.jp/jpn/databox/2020/200323.pdf

2020年3月30日 空気調和・衛生工学会と日本建築学会による発表
新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して~「換気」に関するQ&A~
http://www.shasej.org/recommendation/shase_COVID_ventilizationQ&A.pdf


■ダイキン 「上手な換気の方法」
https://www.daikin.co.jp/air/life/ventilation/

■あなたとエアコンに、できること
https://www.daikin.co.jp/air/life/electricitysaving/residential/summer/images/setsuden.pdf

2020年 05月28日 11時05分