ソフトバンク 公共性をより重視して

2020年6月26日 08時04分
 ソフトバンクグループ(SBG)の株主総会が開かれ、株主からは巨額赤字への質問が相次いだ。暮らしに欠かせない携帯電話事業の担い手でもある。公共性をより重視した冷静な経営を求めたい。
 SBGは二〇二〇年一〜三月期純損益が一兆四千三百八十一億円の赤字だった。東京電力が東日本大震災時に出した額を上回る国内企業では最大規模の赤字だ。
 赤字の原因は投資事業の失敗とみていいだろう。SBGはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という投資基金を持ち、海外の新興企業を中心に積極的な投資を行っている。
 しかし、米シェアオフィス運営会社「ウィーカンパニー」など投資先の経営難が次々と表面化。SBGの孫正義会長兼社長が八十八社の投資先のうち十五社程度の倒産を予想するなど、投資事業での損失が経営の足かせ要因となっていることは明らかだ。
 SBGは米携帯電話大手Tモバイルなど保有株式の売却で財務改善を図ろうとしている。ただ投資先企業の経営状況はコロナ禍で一層深刻化している。株主総会で投資家が経営の先行きを不安視するのは当然だろう。
 指摘したいのは、SBGの傘下企業であるソフトバンクが携帯電話事業を担っている点だ。
 これから台風や豪雨などの災害が起こりやすい季節に入る。携帯電話は非常時の連絡や情報収集には欠かせない通信手段だ。
 さらに、同社を含め、国民の大半が保有するスマートフォンは、コロナ対策にもさまざまな方法で活用され始めている。
 SBGの中で携帯電話事業は依然、好調だが、投資の不調が携帯事業で得た黒字を消してしまっている状態である。グループ全体の財務悪化が続く中、その余波が携帯電話事業にも及びかねないとの不安は、株主だけでなく契約者も持っているはずだ。
 一昨年には七割以上の契約者が被害を受ける通信障害も起こしている。携帯電話は命をも守るという自覚を、より強く持って経営に当たってほしい。
 グループ単体で八兆円弱の有利子負債の存在も心配だ。これだけ巨額だと、さらに赤字が膨らんだ場合、取引銀行を巻き込んだ形で金融市場に動揺を与えかねない。
 孫氏の経営手腕は優れ、投資家としての目利き力も世界有数と評されるが、いったん積極的な投資を控え、公共性をより重視した経営姿勢への転換が望まれる。

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