「議事録作成、僕らは嫌だと言っていない」 政府専門家会議・脇田隆字座長<新型コロナインタビュー>

2020年6月26日 05時50分
 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認された今年1月以降、感染の拡大防止に取り組んだ関係者らは何を考え、どう行動したのか。インタビューで振り返り、再流行への備えに何が必要かを考える。

新型コロナウイルスの大流行について話す脇田隆字専門家会議座長=東京都新宿区の国立感染症研究所で

◆明らかに検査は足りない認識


 -最も危機感を抱いたのはいつか。
 
 3月に入り、欧米由来のウイルスが日本に入ってきたところだ。イタリア、フランス、スペインが軒並みオーバーシュート(感染爆発)し、欧米帰りの人から感染者が出てきた。
 ―PCR検査の能力が伸び悩んだことに批判の声が出た。
 専門家会議は「検査をとにかく広げないといけない」と言ってきた。特に4月は、東京で医師が必要と判断しても検査が受けられないという事例もあり、明らかに検査数が足りないという認識があった。

◆クラスター対策は重要

 ―大学などの研究室にも検査機器はあったが、活用は進まなかった。
 研究目的と異なり、臨床診断はミスが許されず精度が重要だ。最近、Jリーグや大相撲、プロ野球でも民間検査が始まったが、(感染していないのに陽性となる)偽陽性などの問題が明らかになっており、検査の精度も注視するべきだ。
 ―感染経路を調べ、クラスター(感染者集団)を防ぐ対策は一定の効果があったとされるが、保健所の負担も大きかった。
 IT(情報技術)を使って経路を追跡できるシステムを導入するべきだし、保健所の業務もなるべく軽減させるべきだ。日本では一対一の感染ルートは少なく、クラスターが連鎖する感染が大きい。クラスターを防ぐ対策は重要だ。
 ―事後検証のため専門家会議の議事録作成を求める声がある。
 議事概要でもエッセンスは入っているが、きちんと検証できるようにするのはいいことだ。僕らは議事録作成が嫌とは言っていない。

◆流行続く可能性 

―再流行に備えるための課題は。
 
 東京の繁華街や北九州で起きた流行は今後も続く可能性がある。だが、われわれも多くの知識を得て賢くなっている。「食事の仕方まで指示するな」という声もあるが、「大皿は避けて、料理は個々に」など新しい生活様式も示した。クラスターが起きやすいハイリスクの場所では対策を徹底してほしい。国が検査、医療体制を整備しつつ、国民も感染が流行するリスクを自覚して行動してほしい。 (聞き手・原田遼)

 わきた・たかじ 1958年生まれ、名古屋市出身。名古屋大大学院医学研究科修了。2005年、東京都神経科学総合研究所でC型肝炎ウイルスの培養細胞内での増殖に成功。06年に国立感染症研究所に入り、18年から所長。


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