塩化銅の電気分解
塩化銅水溶液に電流を流して、銅と塩素に分解します。この実験では、廃液処理の問題からマイクロスケール実験が行われることが多いようですが、ビーカーを使った実験のほうが観察しやすいです。廃液についてはリサイクルすれば問題ありません。
また、鉛筆の芯を電極に用いれば、電極に着いた銅も簡単にきれいにすることができます。
実験のポイント
1 マイクロスケール実験よりも、100mLのビーカーに75mL程度の塩化銅水溶液を入れて実験するほうが観察しやすい。
2 電極は鉛筆の芯(三菱鉛筆 2.0mm芯 ユニホルダー用替芯)を使うとよい。電極に着いた銅は、ティッシュで拭けば簡単に取り除くことができる。
3 実験後の塩化銅水溶液は、ろ過して次の年に使うようにすれば、廃液はほとんど0になる。
準備物
ア 三菱鉛筆 2.0mm芯 ユニホルダー用替芯
炭素棒を電極に使うと着いた銅を取り除くのが大変である。しかし、ユニホルダー用替芯を電極に使うと、ティッシュで軽く拭いただけで、着いた銅をきれいに取り除くことができる。
イ カラーボード(スチレンボード)
電極(ユニホルダー用替芯)を差してささえるために使用する。100均やホームセンターで購入する。カッターで簡単に切れる。アクリル板などで作ると、重いので安定性はよくなるが、作るのが面倒である。
ウ 導線
導線は10芯導線を用いた軽くやわらかいものがよい。イのカラーボードが軽いのでかたい導線だと安定が悪くなる。私は「ELPA 10芯コード 5m
2本入」と「ミノムシクリップ(小)」を使って自作している。
エ 塩化銅水溶液
10%のものを使用しているが、毎年リサイクルしているので正確な濃度は分からない。色が薄くなってきたら、塩化銅を追加するようにしている。
オ 赤インキ
塩素の漂白作用を調べる。パイロットの赤インキを精製水で1000倍にうすめたものを使用する。
実験方法
① カラーボードにユニホルダー用替芯を差す。
② 100mLビーカーに塩化銅水溶液を75mL入れる。
③ 電源装置につなぎ、電流を流す。電圧は5Vとする。
④ 8分間、電流を流す。
この間に塩素のにおいを確認したり、塩素の漂白作用を確認したりする。
⑤ 塩素の漂白作用の実験
うすめた赤インキを試験管に4mLいれる。その中に、陽極付近の塩素がとけた水をスポイトで4滴入れると透明になる。(左は入れる前のもの、右は入れた後のもの)
⑥ 銅の金属光沢を調べる
陰極についた銅をろ紙にこすりつける。そして、薬品さじでこすると金属光沢が見られる。
また、ビーカーの底に銅の粉が落ちてしまった場合は、塩化銅水溶液を別のビーカーに移すと簡単に銅の粉を回収することができる。
⑦ 電極をきれいにする。
実験が終わったら、電極(ユニホルダー用替芯)をティッシュで拭いてきれいにする。簡単にきれいになる。下は拭く前と拭いた後の写真。
⑧ 塩化銅水溶液の廃液処理
使った塩化銅水溶液はろ過して、次のクラスや次の年の実験に再利用できる。私は10年以上リサイクルして使っている。これで廃液はほぼ0になる。
ろ過の時には、コーヒーフィルターとコーヒー用のドリッパーを使うと短時間でろ過できて便利である。100均でも売っているので購入しておくとよい。
その他
陰極のほうはほとんどダメージがないが、陽極のほうは発生した塩素のために傷みやすい。数年に1回電極を買い換える必要がある。替芯は6本入りで200円程度である。
薬品さじに銅粉が残っていると薬品さじがさびてしまうので、生徒にきちんと洗うように支持すること。また、さびた薬品さじだと金属光沢を得にくいので、最初から100均等のスプーンを購入して使うという方法もある。その場合は4本で100円程度である。
赤インキについては1000倍にうすめても十分に赤色である。また、濃いと色が消えにくいので、1000倍程度にうすめた方がよい。
塩化銅水溶液をろ過してリサイクルすればよいというアイデアは、同僚のF先生から教えて頂きました。学校を異動する際には、容器をもって出るか、新しい先生に引き継ぐようにします。