GoTo事業 経緯も効果も不透明だ

2020年6月25日 07時57分

 コロナ禍に苦しむ観光などを支援するGoTo事業が八月に始まる。ただ持続化給付金に続き今回も事務委託費についての不透明感が残ったままだ。疑念の解消なしの見切り発車は許されない。
 予算規模約一兆七千億円の「Go To キャンペーン」事業は、四月に成立した二〇二〇年度第一次補正予算に盛り込まれた。旅行への補助金や地域クーポンなどを活用して国内の観光全体を支援する国の施策だ。
 現在、旅行業者や宿泊施設、飲食店、土産物店、バス会社など観光関連企業は、コロナ禍の影響で軒並み経営難に追い込まれている。支援は喫緊の課題であり事業の方向性や狙いは納得できる。
 問題は事務委託費が最大で予算の約二割の約三千億円を占めることだ。民間への委託費については中小企業への持続化給付金をめぐり批判が相次いだばかりだ。
 今回もほぼ同じ構図であり、国会で野党からも厳しい追及を受けた。このため政府は業者の公募をいったん延期して事業を仕切り直しした。ところが改めて提示された事業内容でも委託費の上限枠は変わらなかった。
 梶山弘志経済産業相は経費を圧縮する方針を示している。しかし、上限を変えずして実際の額が大幅に減るとは考えにくい。国の姿勢は本気で委託費を減らす気がないと疑わざるを得ない。
 今後、委託先の選定は七月上旬にも有識者による第三者委員会が実施する。審査内容も公表される計画だ。
 窮地に追い込まれている観光産業を救うことへの異論は少ないはずだ。ただ巨費を投じる以上、国民の関心が払った税の使途やその経済効果に向かうことは当然だ。
 しかし国はこれまで民間に委託する理由や選定の経緯など肝心な部分を説明してこなかった。持続化給付金をめぐっては、再委託の内容さえも一部把握できていなかった。
 国は事業開始前に、事務委託の詳細を委託先選定の経緯だけでなく、金額の根拠など含め細大漏らさず明らかにする必要がある。コロナ収束の先行きが見えない中、観光客増を促す事業を行う理由や効果の見通し、「三密」が発生した際のリスク回避策についても説明を求めたい。
 さらに一連の説明を首相が行うべきなのはいうまでもない。同時に納得のいく説明がない場合、事業の抜本的な見直しも視野にいれるべきだろう。   

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