新START 核軍縮の枠組み維持を

2020年6月25日 07時57分

 米ロ両国が新戦略兵器削減条約(新START)の延長問題を協議した。来年二月の期限切れを迎えれば両国の核軍備管理の枠組みは消滅する。まずは延長した上で一層の核軍縮を進めてほしい。
 戦略核弾頭の配備数を双方が千五百五十発まで削減することを約した新STARTは、米ロが合意すれば最長で五年間延長できる。延長を望むロシアに対し、米国は「新STARTは悪い条約だ」(トランプ大統領)と消極的だ。
 相互査察などの検証が担保された下で核戦力の均衡を図るという新STARTは、米ロの戦略的安定の礎である。その新STARTが失効すれば査察ができなくなり、保有・配備する戦略核戦力の透明性が低下、不確実性も増す。
 これに双方が疑心暗鬼を募らせれば、いたずらに核軍拡へひた走ることになりかねない。
 延長協議は合意には至らず交渉を続けることになった。期限切れまで残された時間は少ない。双方が違いを乗り越える努力を尽くし、一致点を見いだしてほしい。
 トランプ政権は昨年、冷戦末期に旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約を離脱したのに続き、この五月には領空からの相互査察を認めたオープンスカイ条約からの脱退を決めた。
 一方のロシアは米国のミサイル防衛(MD)を打ち破ると豪語する極超音速兵器「アバンガルド」を昨年末に実戦配備した。核戦力関連の近代化では米国に先行しているともいわれる。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計では、今年一月時点で世界にある核弾頭数は一万三千四百発に上り、その九割を米ロが占める。新START延命によって時間を稼ぐ間に、米ロは核軍縮へ軌道を戻すべきだ。
 人類絶滅を招きかねない核兵器をなくし、浮いた軍事費をコロナウイルスのような感染症対策に回した方がよほど有益であることは言をまたない。
 米ロに次いで核弾頭を保有しているのは、約三百二十発の中国だ。米国は中国も核軍縮交渉に参加するよう要求し、中国は米ロが核軍縮を先行させるべきだと拒否している。
 だが、核拡散が進んだ現状にあって、米ロ二国間だけの軍備管理体制はもはや時代に合わない。
 中国が拒み続ければ国際社会の風当たりは強まる。軍縮交渉に加わる方が長期的には国益にかなうだろう。中国に再考を求めたい。

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