写真はイメージ=PIXTA
ハードルが高い、難しいというイメージがある会計。しかし、実際のビジネスを念頭に入れて財務諸表を読むと、驚くほど企業の特徴が会計に反映されているのが分かる。SNS(交流サイト)で話題の「大手町のランダムウォーカー」こと福代和也さんが出題する会計クイズを解いて、ビジネスや投資に役立つ企業への理解を深めていこう。
今回のテーマは、
【稼ぎ方は損益計算書に出る(製造業編)】
日本にはニッチだが高いシェアを誇る製造業が少なくない。ただ、単に高シェアだから収益力があるというわけではない。ニッチ製造業の稼ぎ方のポイントを、損益計算書から読み取ろう。
YKKの主力製品はファスナーだ。低単価にもかかわらず利益率が高い理由は、その製造コストの低さにある。YKKの機械事業の大半は自社向けで、生産設備を内製化している。これにより生産設備の仕入れ分だけ原価を抑えている。さらに、製造技術をブラックボックス化できるため、競合企業に対する技術漏洩を防ぐこともできる。
フジシールインターナショナルは、取引先に対しペットボトルのラベルだけでなくそれを巻き付ける包装機械も販売している。こうすることで取引先の利便性は高まり、製品シェアの維持にもつながる。半面、機械自体を低価格で販売するため原価率も膨らみやすい。顧客の確保を重視したビジネスモデルと言えるだろう。
●YKKは製造設備を自社で生産。設備の分だけ原価率を抑えられるメリットがある
●製造設備の内製化するYKKのビジネスモデルには、競合への技術流出を防げるというメリットもある
●フジシールインターナショナルはラベルと包装機械を取引先にセット販売。利便性の向上で高シェアの維持を狙う
●本来高単価であるはずの包装機械を安価で販売しているため、フジシールの原価率は高くなる傾向がある
共同作成者:久本拓馬
[日経マネー2020年8月号の記事を再構成]