僕はある1枚の絵画に今日の自身の向かうべき道というのか、答えではないけれど生活のヒントと言えば幾分それらしい、そんなものを見出しました。それは、アンソニー・ヴァン・ダイクが23歳の折に描いた自画像です。
背景の暗褐色。黒褐色の服に雪色の襟と袖口。豊かな金髪を縮らせてフサフサと額に垂らしていて、伏目につつましく控えている青い神経質な鋭い目も、官能的な桜桃色の唇も美しく、キメの細かい女のような皮膚の下から綺麗な血の色が薔薇色に透いて見えるようでした。
初め見た時は、とにかく美貌の持ち主だと思いました。しかし、こんなにも美しいのに、どこか人間として無機質で、何とも言えない怪談めいた雰囲気のある絵にも見えました。気になった僕は少しこの絵について調べてみることにしました。そして調べてみると、この絵画の本質が見えてきました。
彼の作品は常に作後の喝采を目標として、病弱の五体に鞭打つ彼の虚栄心の結晶であると言われているそうです。
病弱であるがゆえの虚栄心。
美しいものを美しく表現する、もしくは醜いものを醜く表現する絵画は沢山見てきましたが、しかし、この絵画は違ったのです。醜いものを美しく表現していたのです。
それを知って、この絵の持つ不思議なパワーや雰囲気に納得することが出来ました。
最近自分は曲を作る際、歌詞で自分やそれを取り巻く世界をどう表現するかに悩んでいました。その行き詰まりの原因は、見えたもの、感じたものをそのまま表現しようとしていたことかもしれないです。たとえ虚栄であったとしても、醜い感情を時に美しく表現することもまた、芸術なのだと気づかされました。