新型コロナウィルスと最前線で戦う医療の現場。
県内で最も多い17人の感染者を受け入れてきた静岡市立静岡病院に入って、実際に患者を治療した医師や看護師を取材することができました。
感染のリスクを抱えながら医療スタッフはどう患者と向き合っていたのでしょうか。
多くの医師・看護師と医療機器に囲まれ治療を受ける新型コロナウィルスの重症患者。
医療スタッフが日々、感染のリスクを抱えながら患者と向き合ってきた静岡市立静岡病院です。
本谷育美アナウンサー「この扉の中なんですね」
市立静岡病院 感染管理室・岩井一也室長「この扉から奥が“感染症病棟”です」
全員が退院した6月5日、取材のカメラが中に入りました。
本谷アナ「ここにも実際コロナウィルスの患者さんが入られたんですか?」
岩井一也室長「実際患者が使用していました。患者が病室から出なくていいようにトイレとシャワーまで完備しているのが感染症病棟の個室6床、全てそうなっています」
本谷アナ「この中ですべて完結できることになっているんですね」
病院内の区分けは、廊下は安全な“グリーンゾーン”ですが、病室に一歩入るとそこは感染の危険がある“レッドゾーン”。
防護服も、病室ごとに一回一回脱ぎ着します。
正確に着脱するため、壁や棚には一つ一つの手順が貼られていました。
市立静岡病院感染管理認定看護師・田中良枝さん「普通の防護具と違って、この防護具を着るときは必ず2人で行います。帽子を脱いだ時に前髪が落ちて顔の方に触れないように、前髪を全部留めておきます」
マスクにエプロン、手袋は皮膚が露出しないようテープで固定してから、さらにもう一枚着けます。
本谷アナ「これだけの工程をして、着ていかないといけないんですね」
市立静岡病院・青山治子副看護部長「非常に暑いですね。少し呼吸が大変かなという感じはあります」
処置が終わった後は、汗だくになったそうです。
厳重な防護服を見た患者からは・・・
岩井一也室長「防護服を着けて病室に入ると患者はすごく恐怖心。患者にも最初は自分たちの防護のためにこういうの使いますと説明をして、怖がらないでくださいという感じで診療にあたっていました」
患者の受け入れが始まってほどなく、新型コロナ対応病床5床は満床に。
一般病棟だった8階も新型コロナ専用にして、最大20人まで収容できるようにしました。
本谷アナ「ここに線が引かれていた?」
感染管理認定看護師・田中さん「床にテープを貼って区分けをしていました。最初は全く区分けがされていなかったが、コロナの患者を受け持つスタッフとそうでないスタッフの区分けをしなければいけなかったので、水道の角からナースステーションの角のところまでラインをひいて“グリーン”と“レッド”のゾーンの区分けをしました」
扉にも赤いテープ。手袋なしでは触ってはいけない扉です
感染管理認定看護師・田中さん「重症患者が入ったので、いろいろなものが急遽必要になることがあって、それを取りに行く時に防護具を着たスタッフがグリーンゾーンに入って行きそうになることもあって…ゾーンを変えたりはありましたね」
受け入れた感染者のうち約8割は軽症でしたが、重症患者もいました。
岩井一也室長「ここのベッドで重症の患者の治療をしていました。一番奥にあるのが人工呼吸器ですね。一番手前にあるのがECMO(エクモ)といわれる装置です。人工呼吸器を使っても体に十分な酸素が取り入れられない。それぐらい肺のダメージが大きいときに使う機械で、これを使った患者がいます。血管から血液を体外に出して機械で二酸化炭素と酸素を入れ替えて、酸素の入った血液を患者に戻す」
エクモを使用した重症患者は、その後急速な回復をみせ無事退院することができました。
日々未知のウィルスと闘い極限の状態で仕事をする。その負担は看護師たちに重くのしかかりました。
「とても疲れました・・・」「みんなが心配しているので、ちょっとせつないです」(職員健康観察表より)
市立静岡病院・塚本ひとみ看護部長「やはり不安が強くて眠れない、あるいは夢に見てしまう。疲れて家に帰った時にテレビをつけると、テレビでも新型コロナのことをやっているので気が休まらないということをたくさん書いていた」
そんな中で、患者の回復は何よりの励みでした。
塚本ひとみ看護部長「ずっと手袋越しなんですよね、患者と接するのが。患者がだんだん良くなって陰性が2回確認されて、初めて患者の手を実際に手袋なしで触ってすごく良かったなと思うし、自分も感動したということを書いてくれた」
さらに、医療従事者の支えになっているものがありました。
市立静岡病院・塚本ひとみ看護部長「市民の方々からたくさんの応援のメッセージをいただいて。本当に勇気づけられて、こんなにしてくれているんだということで職員一同感謝しています」
市民から、たくさんの感謝や労いのメッセージが病院に届きました。
今、静岡病院には感染者は入院していませんがウィルスとの戦いはまだ終わったわけではありません。
市立静岡病院 感染管理室・岩井一也室長「今のままいってほしいと、まずは思う。でも実際はまた流行ってくる。患者が増えるのも当然考えられるし、その時に慌てないようにいろいろな事態を想定して準備をしておく、そういう期間だと思っています。病院に来てもらって、不安な気持ちを少しでも解消してほしい。手助けができる存在でありたいと思っています」