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(裕一)これ これ! 応募してみなよ!
(鉄男)合格したら 即レコードデビュー?そう!
(久志)オーディション受けてあげるよ。えっ!?
コロンブスに僕の力を貸そう。
ああ 見える… 日本中が僕の歌のとりこになってる姿が。
ちょっと~ 気取り過ぎじゃない?
男前はつらいな。普通にしてても そう見えるんだから。
ねえ この履歴書 何? 横書き?(久志)いや 欧米は みんな そうだから。
いや 読みづらいよ。審査員の印象 悪いって。
もう うるさい!うるさくない。合格させるために言ってる…。
あ~ もう 気が散るから向こう行ってろって。
(華)お父さん 怒ってるの?
(音)お父さん 応援してるの。
字が違うよ。あ~ もう うるさい!
字が違う。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(廿日市)…で どうなのよ? 新曲 進んでる?
あ~ あっ はいはい…。あ~ 書けてないのね~。
声 聞きゃ 分かるよ。あっ あの 廿日市さん… あの…こ… 今回の応募って合格者は一人だけですか?
そうだけど… えっ 何?
ど… どんな歌手を求めてるんですか?
何で そんなことを?えっ?
さては スパイか?(一同)えっ!?
ち… 違いますよ 違います!吐け! 誰に頼まれた? テイコクか!?
そんなわけないでしょう!?(杉山)我が社では阪東妻三郎のような存在感のある顔だちに知性と品性と たくましさを兼ね備えた3オクターブを難なく出せる天才を求めています。
そんな人 います?即戦力じゃなきゃ意味がないんだよ!
誰かさんみたいに ヒット出すのに何年もかかってるようじゃ会社 潰れちまうんだよ!顔はバンツマですよ バンツマ!
それ 杉山さんの好み… じゃない…?
あくまでも我が社の方針です。
天才な上に バンツマか…。そりゃ まずいな。
しかも 全国から「我こそは!」と集まってくるわけだから。
心配は無用! トップ オブ トップがここにいるんだから。
いや 上には上がいるんだよ。(久志)その上。
いや その上 いないんだよ…。(藤丸)お酒 熱燗でちょうだい。
えっ?
(藤丸)納得できな~い!
バカ野郎~!ちょっと!
(鉄男)あいよ。
こんばんは。こ… こんばんは。 えっ?
ど ど… どうしたの? その格好は。
藤丸ちゃん 随分 色っぽくなっちゃって。
これも仕事のうちですから。えっ?
私 今じゃ すっかり 歌手っていうよりお座敷仕事ばっかりで…。
お花代で生きているようなもんなんです。そ… そうなの!?
芸者のふりして レコード出したら本当に芸者になっちゃったわ。
えっ コロンブスは新曲 出してくんないの?
うん。 いっつも口ばっかりで。
古山さん なんとかしてもらえませんか?
が… 頑張る。
心配しないで大丈夫。
僕が コロンブスに所属した暁にはデビュー曲のB面は藤丸ちゃんとデュエットしよう。
えっ?あっ 今度のねオーディションに応募するの。
そうなんですか!君は お座敷よりも大きなステージが よく似合う。
一緒に歌える日までもうしばらく辛抱だ。
久志さん…。
私 久志さんとならもう一度 頑張れる気がする。
そうだ! 2人で これからのことについて話さないかい?
ええ… いいわ!
おでん屋さん。えっ?おでん屋さん?
お釣りは大丈夫です。はっ? ああ…。
行こう 行こう。
まいど…。
久志さんのウインクは危険だよ。
ああっ… キャ~!
(一同)ああ~!
藤丸さんコロッといってないといいけど…。
それよりも 今はオーディションに集中してほしいんだよ。
久志のやつもう受かった気でいるんだからね。
どんな強者が来るかも分かんないのに。
明日は 僕が しっかり廿日市さんに売り込みしなきゃ。
よろしくお願いいたします。
確認します。
(ドアが開く音)(廿日市)はあ~? 何だよ これ!
全く なんて神経してんだ。こんな履歴書 読んでられっかよ!
廿日市さん 廿日市さん あの…。
おっ! もう曲書けたのか!さすがは天才作曲家。
いや… それは まだなんですけど…。
ご無沙汰しています。
あっ 友人の佐藤久志です。 あの 以前「船頭可愛いや」の録音の時 見学に…。
そうだよ! 本物の芸者 連れてこいよ。誰だ この ひらひらシャツ。
あ~ ひらひらシャツ男。はあ!?
いやいや… 彼もオーディションに参加するんです。
声楽科出身の かなりのエリートです!何とぞ よろしくお願いいたします。
どうぞ よろしく。まあ 応募するのは勝手だけどさこっちも遊びじゃないから落ちても恨みっこなしよ。
こちらです。
え~? 何これ 横書きじゃん!読みづれえ~!
だから言ったでしょ。彼の読解力の問題だ。
縦書きにしとけばいい…。
でね 裕一さんったら自分の作曲 そっちのけで久志さん 合格させるのに必死なの。
(恵)裕一さんの方が その気なんだ~。
(保)新聞で見たよ。随分大きな広告だったね。
そう 全国版だって。
ねえねえ お母さん 見て。おっ すごいね!
ごめんくださ~い。いらっしゃいませ~。
ちょっと お伺いしたいんですけどこちらの住所 ご存じかしら?
う~ん… ねえ…。
御手洗せ…ミュージックティーチャー?
音さん? あ~ よかった!
お久しぶりです。今 ちょうどあなたのところへ行こうとしてたのよ~。
えっ?まあ!
なんてかわいらしいプリンセスなの。
娘の華です。 華 「こんにちは」は?
こんにちは…。
どうして東京に?
コロンブスのオーディション!?御手洗ティーチャーが?
今は もう ティーチャーじゃない。私のことはスター御手洗と呼んでちょうだい。スター御手洗…。
私 必ず合格するもの。どうして…?
「経験不問 年齢不問 性別問わず」。
新聞の募集記事を見た時心臓が高鳴ったわ。
まるで 私のためのオーディションだって。
レッスン やめちゃったんですか?
生徒さんたちもみんな 理解してくれたわ。
私 最後のチャンスに賭けてみたいの。
でね… 戦略を練るためにも 裕一さんにいろいろと お話を伺いたいと思って。
今も まだコロンブスにいるんでしょ?
ええ。 でも あの…。
ちゃんと聞いてよ 本当に…。あっ! …えっ?
御手洗先生… えっ えっ?ミュージックティーチャー!
オー ミラクル! 今 ちょうどあなたの話をしていたところよ!
えっ? ちょ… な… 何で?
コロンブスのオーディションを受けられるんだって。
あっ… 僕の友人も今 応募してきたところなんです。
どうも 御手洗清太郎です。
どうも 佐藤久志です。
どうも… スター御手洗です。
僕は プリンス…プリンス佐藤久志です。
どうも スター御手洗です。
佐藤久志だ。スター御手洗です。
何を回ってるんだ。回っちゃ 何で駄目なのよ。
うん?回っちゃ 何で駄目なのよ…。
スターとプリンスって変なの!
すてきだね。
もう…なにも別々に食べなくていいのに…。
戦場で敵と同じ食卓で食うやつがいるか?はいはい。
あの気取り屋 実力あんのか?
御手洗先生は 音が豊橋でお世話になった声楽のコーチ。
ドイツ帰りの超本格派!頂きます。
敵として 不足はなさそうだな。
言っとくけどね ほかにも ライバルいっぱい いるんだからね。
そもそも書類審査も通ってないんだから。ドイツ帰りか…。
そう… 東京帝国音楽学校にねえ。で で… 成績は?
常に トップクラス。プリンスって呼ばれてました。
スター御手洗にプリンス久志の戦いってわけね。
あの~ 滞在中はどちらに宿泊されるんですか?
ホテル取ってたんだけど…お財布 すられちゃって。
あっ それで うちに?
ヘルプ ミー プリーズ。
うちは構いませんが…。サンキュー!
これで いつでも レッスンできるわね。あっ はい。 フフフ。
あっ どうぞ。頂きます。
華 食べなさい。
何? あらやだ… お宅 白みそなの?
裕一さんが こっちの方が好きなんです。
豊橋の人間とあろうものが八丁みそを譲るなんて…。
そのかわり 納豆は許してませんから。
当然よ!
プリンス久志め…必ず蹴落としてみせるわ。
スター御手洗とプリンス久志の戦いが今 始まりました。
まあ 2人ともまだ 書類審査 通ってませんけどね~。
(華)はい どうぞ。ありがとう。
ねえ 御手洗先生は?
2階で体操してる。 日課なんだって。ふ~ん。
ありがと…。どうぞ。
ねえ ちょっと… み… みそ 変えた?
変えてないよ。いや 変えたでしょ。変えてないよ。
ほら!フフッ バレた?
だって スター御手洗が どうしても八丁みそがいいって言うからさ。
しばらく それで我慢して。はい 頂きます。
どうぞ。・♪~(御手洗の歌声)
さすがだね。なんてったってドイツ仕込みですから。
あの2人 どうなんのかな?ねっ?
どっちにも受かってほしいけどそういうわけにも いかないもんね。
僕は 久志を応援してあげたいけどね。
それを言うなら 私だって御手洗先生を応援したい。
まあ とにかく…あの2人が悔いなく戦えるように精いっぱい応援してあげよう。そうだね。うん。
・♪~(歌声)朝から うるさいな…。
来てる?
まだ。
お~ 来た!すみません お待たせしました。
ありがとうございます! 待ってました!どうも。
あった!あった。 えっと…。
どこだ どこだ どこだ…?
あった! 御手洗先生の名前!あ~ 本当だ! よかったね!
あっ 久志もあった! あった!あった~! よかった よかった!
応募総数 なんと800通!どうぞ よろしく。
久志と御手洗先生は書類審査をパスしたのです。
久志 一次選考 通過おめでとう!(鉄男 藤丸)おめでとう!
まあ 分かっていたことだけどね。当然の結果だ。
じゃあ 次 オーディションで何 歌うか決めないとね!うん!
何がいいんだ?そうだな…。
♪「仙台 仙台 なつかしや」
あ~ いい歌だね~。これ 最近出た 僕の曲「ミス仙台」!
駄目だ 俺の詞じゃねえ。
じゃあ 「福島行進曲」?はい やだね。 僕を外して作った曲は。
まだ言ってんのか。おめえ 自信ねえのか?
そんなこと…。 それよりも僕にふさわしい曲 もっとあるでしょ?
誰もが知ってる大ヒットした曲がいいわよね。
うん うん うん!木枯さんの曲とか?
あ~ 確かに! いいと思う!
いいのかよ。いいよ! いい いい!
よし おめえ 今度 何がウケっかこっそり調べとけ。分かった。
♪「あ~ ああああ~ ああああ」
(せきばらい)
♪「あ~ ああああ~ ああああ~」
♪「ば~ ばばばば~ ばばば~」
♪「ば~ ばばばば~ ばばば~」
♪~
ほかのライバルの存在も忘れ2人だけの熱い戦いを繰り広げるのでした。 はい。