新型コロナウイルス感染拡大による影響は、京都府南部の山城地域でも例外なく各方面に及んでいる。経済的に苦しい家庭の子どもらに食事を提供する場「子ども食堂」も同様で、政府の緊急事態宣言などを受けて一時休止したところもあれば、発令期間中も活動を続けた例も。コロナ禍で子ども食堂がどう対応しているのか取材した。
「いただきます!」。6月上旬の夕刻。宇治市槙島町にある集合住宅地の管理事務所で、久しぶりに子どもたちの元気な声が響いた。同市のNPO法人「すまいるりんく」が主催する子ども食堂が、約2カ月ぶりに再開されたのだ。
「3密」を防ぐため換気を行い、参加人数も絞った。10人ほどの子どもたちが、野菜のたっぷり入ったカレーを黙々と頰張った。同法人理事長林友樹さん(36)は「思ったよりもみんな静か。カレーに集中してるのかな」と笑みを浮かべた。
同法人による子ども食堂は2016年10月から始まり、毎週2回の夕方、近くの小学生やボランティアなど約50人が参加していた。だが、新型コロナへの警戒が強まる中、4月上旬以降は開催を取りやめる決断をした。
一方、食堂の休止に代えて毎週2回、家庭の環境上、特に食事を必要とする子どもたち約20人に弁当の宅配を実施した。「子どものおなかを満たしつつ、生活に変わりがないか見守りたかった」と、林さんは狙いを話す。
ボランティアが弁当を玄関先で子どもに手渡す際、予想外に会話が弾んだという。大勢で飲食する「食堂」で、一人一人の子どもとゆっくり向き合い話すことは難しい。林さんは「新たな関係づくりができたのは、コロナ禍での収穫だった」と前向きに捉える。
今月1日、府の休業要請の全面解除を受け、食堂再開を決めた。決まった日時に顔を合わせて食事をすることで、子どもの家庭環境や心身の変化を把握しやすく、「子ども自身の安心にもつながる」と林さん。今の会場はやや狭く参加者同士の間隔を取るのが難しいため、当面は人数を限定して続ける予定だ。
「緊急時だからこそ、誰かが手を差し伸べなければ」。久御山町で一人親家庭を対象に子ども食堂を開いている町母子寡婦会会長の中井知子さん(64)は、緊急事態宣言発令中も活動を続けた理由をそう話す。
同会の子ども食堂は、町内にある木造2階建ての一軒家で開催。参加者は常時10人ほどで、十分に間隔を取りやすい環境ということもあり、手洗いや換気などの対策を徹底しつつ、宣言発令中も休止しなかった。
体調が優れなかったり、仕事で食事を作るのが難しかったりと、参加する保護者は普段からさまざまな事情を抱えている。中井さんは「新型コロナで家庭環境がより大変になり、ストレスで子どもは元気がなかった」と影響を指摘し、「感染対策をしながら、子どもの健康や生活を守るのが私たちの役目」と強調した。