スペースジェット 「離陸」遠のく国産機

2020年6月24日 07時52分

 国産のジェット旅客機「スペースジェット」(SJ、旧MRJ)の開発体制が大幅に縮小される。スケジュールの遅れは必至で、国威をかけた「日の丸ジェット」が飛行する日は遠のくばかりだ。
 SJの開発を手掛ける三菱航空機(愛知県豊山町)の発表などによると、国内外の約二千人の従業員は半分以下にする。近年、商用化に必要な型式証明(TC)取得に向け、積極的に採用してきた外国人技術者も大量に同社を去ることになりそうだ。
 米ワシントン州にある開発拠点は維持するものの、北米や欧州の営業所などは全廃する。営業活動の実質的な休止で、新規の受注獲得は極めて困難な状況になる。
 二〇〇八年に事業化が決まったSJは、検査体制の不備などで計六回も初納入時期を延期した。売る製品がないのに開発費が膨らむ悪循環に陥り、資金面の支えだった同社親会社の三菱重工業は、SJ関連の損失計上が響き、二〇年三月期決算で本業のもうけを示す事業損益が二十年ぶりの赤字に転落。SJに投じる二〇年度の予算は、前年度の約千四百億円から六百億円程度に削減する方針を示していた。
 予算が減れば、人も組織も縮小するのは当然だが、事業の継続性が危ぶまれるほどの「大リストラ」となった。航空専門家が「開発の最終段階にある九十席級のTCを取得するため、最低限の生命維持を図った」と表現するのも、大げさとはいえない。初納入時期は「二一年度以降」といまだ明示できていない。巨大市場である北米での主力機という位置付けだった七十席級の機体開発は凍結されたままで、将来構想も描きにくい。
 当面は新型コロナウイルスによる航空需要の急減にも見舞われる。国際航空運送協会(IATA)は二〇年の航空業界の損失が九兆円規模に達する、との見通しを示した。世界の国際線需要が、コロナ感染拡大前の一九年の水準まで回復するのは二四年までかかる、とも予測する。SJのような短距離用も含め、航空機需要の冷え込みは避けられない。
 三菱航空機は「着実に開発活動を進め、日本の航空機産業の発展に寄与する」とのコメントを発表したが、地元中部からさえ「SJの量産化を前提にした計画は立てられない」(取引先幹部)との声が漏れる。今後の動向次第では、事業を継続するかどうかの重い決断も迫られることになる。

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