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 自らの関心に沿って分野や団体を選び、苦境にある人を支える。コロナ禍に伴う寄付で広がりつつある機運に注目したい。

 外出自粛が叫ばれ、催しも開けなかったなかで、存在感を増したのがネットを使って資金を集めるクラウドファンディング(CF)だ。

 全国各地のミニシアター向け基金には3万人から目標の3倍、3億3千万円が集まった。飲食店、山小屋、子ども食堂、地方のライブハウスなど幅広く支援策が提示され、成果をあげている。CF仲介のある大手サイトでは、2月末からの3カ月間に約41万人が44億円強を寄せた。2千余の事業者が平均200万円を調達できたという。

 日本の寄付では、自然災害後に被災者向けに募る義援金が知られる。2011年の東日本大震災では多額の義援金が集まり、「寄付元年」と呼ばれる。日本赤十字社などが事務局となり、無償の資金を集めてきた。

 今回のコロナ禍は様相が異なる。感染が深刻でなかった地域も含めて全ての人が行動を制限され、生活に影響を受けてきた。そうした中でも困窮する人を支援する具体的なプログラムに共感し、手を差し伸べようとする動きが目に付く。

 寄付に関する白書を出している日本ファンドレイジング協会は、16年の個人による寄付総額は7700億円余で、寄付をした人の割合は20~79歳の45%強と推計した。過度な返礼品が問題視されてきたふるさと納税分を含むが、増加基調にあるのは確実だ。見返りがあっても、内容や程度に応じて柔軟に寄付とみなす考えも定着してきた。

 より気軽に、多様に寄付を広げるための課題は何か。

 不可欠なのは、受ける側の情報公開の徹底だ。16年の内閣府の調査では、寄付を妨げる要因として「経済的な余裕がない」のほか「寄付先の団体への不信感」「役に立っていると思えない」をあげる人が目立った。

 税金による公的サービスとの役割分担にも注意が必要だ。今回、医療機関や介護施設で使うマスクやガウンの購入費などを支援する基金に、CFで1万9千人から6億円超が集まっている。それ自体は歓迎すべきだが、医療・福祉現場をはじめ、行政が支えるべきところまで寄付頼みになっては本末転倒だ。

 CFが注目される一方で、コロナ禍前から様々な支援活動をしてきたNPOには、寄付が減って苦労している例も少なくない。1人当たり10万円の特別定額給付金の支給が進むいま、暮らしに余裕があれば、困っている人やそれを支える人のために、寄付という形で一歩を踏み出してはどうだろう。

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