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入管政策の提言 状況をもっと悪くする

 外国人の人権と尊厳が守られているとは言いがたい収容政策がさらに悪化しかねない。出入国在留管理庁が設置した有識者による専門部会の提言である。

 国外退去の命令に応じない場合や、収容を一時的に解く仮放免の期間中に逃亡した場合に罰則を科すことを検討するよう求めた。難民認定の申請をしていても送還を可能にする規定を設けることも提案している。今後、入管庁が制度の改定を検討するという。

 入管当局が収容政策を厳格化したのに伴い、在留資格がない非正規滞在の外国人が長期間にわたって収容されることが増えた。収容の期限に定めはなく、何年にも及ぶ場合が少なくない。

 長期収容者の多くは退去できない事情を抱える人たちだ。妻や子を置き去りにできない人も、日本で生まれ育ち、そもそも帰るべき国がない人もいる。刑罰というさらに強い措置で退去を迫るのは、当事者を余計に苦しめる。

 仮放免中の逃亡についても、むしろ考えるべきは、なぜ逃げるのかだ。仮放免自体が認められにくくなり、ようやく許されても、いつまた収容されるか知れない。再収容されれば、いつ出られるか分からない状態に逆戻りする。逃げる人がいて不思議はない。

 収容施設では外部との連絡が制限され、決められた時間以外は部屋から出られない不自由を強いられる。心身の負担は大きく、自殺や未遂が相次ぐ。絶食して抗議するハンガーストライキが各地で広がり、昨年はナイジェリア人の男性が餓死する事件が起きた。

 施設に閉じ込めて自由を奪うことは、著しい人権侵害である。東京五輪の治安対策を理由にした収容の厳格化は、非正規滞在の外国人を潜在的な犯罪者と見なすかの姿勢を映し出す。収容政策のあり方が根本から問われている。

 収容に関して裁判所は手続きに関与せず、当事者は異議申し立てもできない。全てが入管当局の裁量に委ねられている。何よりその現状を改めなくてはならない。収容や仮放免の判断に裁判所が関わる仕組みを設けるべきだ。

 難民申請者の送還を可能にする規定は、保護すべき人を命の危険にさらす恐れがあり、難民条約の根本原則に反する。申請の乱用を持ち出す前に、認定数が極端に少ない日本の難民認定制度を見直すことこそが欠かせない。

 専門部会の議論は当初から入管庁が方向づけをし、結論ありきだった面が色濃い。提言を前提にした制度改定は認められない。

(6月23日)

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