厚生労働省は2020年6月19日午後3時すぎ、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性を通知するスマートフォン向けアプリの試用版の配信を始めた。通称は「COCOA」。「COVID-19 Contact Confirming Application」の略だ。
近距離無線通信「Bluetooth」を使い、アプリの利用者同士が1メートルの距離で15分以上近づいていた場合にそれぞれのスマホへ接触データを自動的に残す。14日以内に濃厚接触が記録された人が新型コロナに感染した場合、各自のスマホに通知する。アプリで濃厚接触の通知を受けた人は優先的にPCR検査が受けられるようにする。
「普及について数値目標は立てない」
厚労省のプレスリリースによれば試用版の期間は1カ月。正式版ではなく試用版とした理由を「配信前にテストは実施しているが、万が一、順調に動かなかった場合に備える」と橋本岳厚生労働副大臣は明かす。加えて、試用版は厚労省の「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」と連携していない。「正式版ではHER-SYSと連携させることを目指したい。あまりだらだら時間をかけずに、接触確認アプリの正式版を出したい」(同)。
HER-SYSは国全体で新型コロナの感染者情報を一元管理するシステムだ。4月中旬に開発に着手し、5月末に稼働した。保健所職員や医師などが新型コロナの発生届を同システムに入力する。国や都道府県は感染者数や検査数などについて匿名化された集計結果をすぐ入手できる。軽症者を含む感染者や濃厚接触者の検査結果や症状の経過を継続的に記録する機能もある。従来は紙の書類をファクシミリでやり取りしていたため、感染者数などの集計に手間がかかっていた。
自治体の公衆衛生担当部局へのID配布はまだ半数で、現場の保健所への展開はこれからというのが実情だ。サイボウズや米セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)など他システムで急ぎ開発して独自に導入している自治体もある。