21歳妊婦の残酷すぎる死、白人至上主義の狂気

リンチ殺人が横行した米国、暗黒の歴史(2)

2020.06.20
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絵葉書になったリンチ:トーマス・シップとエイブラハム・S・スミスのリンチ。1930年インディアナ州マリオン
アーティストのケン・ゴンザレス・デイ氏は、リンチ現場を撮影した絵葉書から犠牲者の姿を削除した写真シリーズ「削除されたリンチ」で広く知られている。犠牲者の姿がないことで、写真を見る者の視点はリンチを見物する白人たちに集まり、そこで初めてリンチという行為そのものが持つ社会のダイナミクスが見えてくるという。群衆のなかには、ヤジを飛ばしたり顔に笑みさえ浮かべる人々がいる。(PROJECT BY KEN GONZALES-DAY)

 アーベリーさん殺害の場面は、通行証を持たずに歩いていた奴隷黒人への暴行を思い起こさせる。

 30分の携帯電話による動画が、その一部始終を記録していた。2月23日、ジョギングをしていたアーベリーさんを2人の白人が待ち伏せして襲いかかった。2人は後に、ジョージ・マクマイケル(64歳)と息子のトラビス・マクマイケル(34歳)と判明した。

 抵抗しようとしたアーベリーさんを、2人は銃で3回撃った。彼は逃げようとしたが、道路に倒れてそのまま死亡した。犯人は2カ月間逮捕されなかった。

 アーベリーさんの死は決して例外ではないと、歴史家で作家のアリカ・コールマン氏は言う。その背景には、黒人の人間性が抹殺されてきた長い歴史がある。「こうした事件は全て、黒い肌への恐れという感情でつながっています」

「人間性の抹殺」が合法的に支持されたのが、1857年の合衆国最高裁判所によるドレッド・スコット判決だった。黒人米国人は、自由人であろうと奴隷であろうと、米国市民とは認められないため、連邦裁判所に対して訴えを起こすことはできないとの判断が下ったのだ。つまり、黒人は法律によって保護されず、自分を弁護することも許されなかった。

絵葉書になったリンチ
ジェシー・ワシントン。1916年、テキサス州ウェイコー(PROJECT BY KEN GONZALES-DAY)

 その考え方が、3月のブリオナ・テイラーさん事件に影響を与えたと、コールマン氏は指摘する。警察が真夜中にテイラーさんの家のドアを蹴破ると、テイラーさんの恋人が警官に銃を発砲した。

「警官はテイラーさんを8発撃っただけでなく、恋人を警官殺害未遂容疑で逮捕しました。恋人は、何が起こったのかわけもわからず、ただ自分の家を守ろうとして発砲しただけですよ。もう一度言いますが、黒人は自分を守ることも許されないんです。それが、最初から黒人の現実なんです」

【特集】リンチ殺人が横行した米国、暗黒の歴史
第1回 米黒人拘束死事件は「現代のリンチ」だ、根底に暴力の歴史
第3回 白人女性の嘘が14歳少年のリンチ死を招いた(6/21公開)
ギャラリー:リンチ殺人が横行した米国、暗黒の歴史 写真と図18点

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文=DENEEN L. BROWN/訳=ルーバー荒井ハンナ

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