リンチにかけられた黒人の多くは、正式に起訴されることはなかった。白人に不適切な態度で接したというだけでリンチを受けることもあった。白人女性に体が当たったり、ただ目が合ってしまったり、白人の井戸から水を飲んだという理由で殺された者もいた。
「この国には、憎悪が骨の髄まで染み込んでいます。それが、黒人殺しを助長しているんです」と、歴史家で詩人、作家のセリリアン・グリーン氏は言う。
米国は、白人至上主義の理想の上に作られた国であると、グリーン氏は言う。独立宣言に署名した56人のうち40人、さらに第12代までの大統領のうち10人が奴隷を所有していた。合衆国憲法は、黒人を完全な人間として認めず、奴隷は自由人の5分の3相当と数えられていた。
黒人殺しの権限を委ねられた白人
現代の抑圧の背景にある人種差別を生みだしたのは、「黒人は劣っている」と考える一部の白人の態度であると、歴史家は言う。かつて、米国の州には黒人の命の完全な支配権を奴隷所有者に与える奴隷法が存在した。一部の州では、黒人が集まったり、食べ物を所有したり、文字を習うことも禁止されていた。
黒人の夜間の外出を規制するジム・クロウ法や黒人法も制定された。100%白人の町では、日没までに黒人は町を離れなければならないとする「日没法」があった。この法律に「違反」したという理由だけでリンチにかけられる黒人も多かった。
18世紀のジョージア州では、農園主と白人労働者に州軍への従軍が義務付けられていた。米自由人権協会によると、その州軍は奴隷への法執行権を持っていた。「かつて米国では、長いこと黒人殺しの権限が白人に委ねられていました」と、グリーン氏は指摘する。
2020年2月にアーマード・アーベリーさんを殺害した「あのジョージア州の白人親子は、奴隷狩りのようなことをやっていたんです」


















