新型コロナウイルス対策で、加藤勝信厚生労働相は22日の参院決算委員会で、平年と比べて死亡数が増えたどうか示す「超過死亡」を検証することを明らかにした。肺炎で死亡したケースだけでなく、肺炎を含め全死亡数を分析し、感染見逃しのほか、入院治療の制限など流行の間接的な影響も推定する。厚生労働省は専門家を含めて分析方法を早急に検討する。
立憲民主党の野田国義氏に対する答弁。
加藤厚労相は答弁で「新型コロナは肺炎だけでなく(血管内に)血栓ができるなどの話もある」と指摘。「死亡全体で見るべきなのか、肺炎などに伴う死亡で見ていくべきなのか、専門家を含め早急に検討したい」とし、「どういう数字で語っていくべきか、考え方を示していくべきものと認識している」と述べた。
国立感染症研究所はインフルエンザと肺炎を死因とする超過死亡について毎年12~3月にかけて迅速に把握するシステムを運営している。厚労省は感染研に新型コロナについて同様の方法で算出できるかどうか検討を依頼している。同システムの対象は東京23区と政令指定都市の21大都市だが、拡大する方針。
全死因の超過死亡については、同省は人口動態調査に基づき分析する方法を検討している。
4月の死亡数について日本経済新聞が調査したところ、東京都では過去4年間の平均より1056人(11.7%)多く死亡していた。同月の感染者の死亡報告は104人で、超過死亡数は10倍に上っていた。
緊急事態宣言で「特定警戒」の対象となった13都道府県では、岐阜県と速報値を公開していない北海道を除く11都府県で平年と比べて統計的な上限値を超える超過死亡が発生していた。うち7都府県では平年より10%以上多く、高齢化の影響を大きく上回っていた。
一方、感染者がゼロだった岩手県でも平年より103人(7.8%)多く死亡しており、超過死亡が発生。新型コロナの感染見逃しが多ければ、県内で感染者が確認されていたとみられ、外出自粛や入院治療の制限など間接的な影響で超過死亡が生じた可能性がある。
海外では週単位で全死亡数が公表されており、「超過死亡は感染者の死亡報告数より6割多い」などとする分析が出ている。感染者の見逃しだけでなく、医療崩壊が起きて適切な医療を受けられずに死亡した可能性などが指摘されている。
(社会保障エディター 前村聡)