株主を欺く行為である。なぜこのようなことが生じたのか。関西電力は説明を尽くさねばならない。
幹部らによる多額の金品受領などの不祥事が発覚した関電は、近く開く株主総会が経営刷新に向けて出直す出発点となる。その株主総会の招集通知に、事実と異なる記載がなされていた。
元大阪高検検事長で弁護士の佐々木茂夫氏は、1年前から関電の社外監査役を務めている。関電が「指名委員会等設置会社」への移行を決めたのに伴って取締役候補とされ、株主総会で認められれば監査委員会に所属する予定だ。
佐々木氏は招集通知では他の社外役員とともに、金品受領問題を「事前には認識していなかった」と注記された。関電は18年春、税務調査をきっかけに問題の社内調査に乗りだしながら、報告書を19年秋まで公表しなかった経緯がある。
今回、関電が18年春に対策を協議した際、かつて関電のコンプライアンス委員会の社外委員だった佐々木氏が相談を受けていたとわかった。関電はこれを認め、「社外監査役就任前においては、その一端を知る立場にあった」とする招集通知の補足説明を公表した。
ミスでは片付けられない。企業経営にとって最重要の場である株主総会を傷つけたのだ。
「個別の相談内容については差し控える」と関電はしているが、すぐにやりとりの全容を明らかにするべきだ。佐々木氏は問題を公表するよう促していたようだが、取締役として適任なのか、断片的な情報では株主は判断できない。
関電は、18年秋に金品受領問題を知りながら取締役会への報告を怠った監査役の責任を追及しないことも決めた。
一部株主は今春、損害賠償訴訟を監査役に対して起こすよう代表取締役に請求。関電が判断を仰いだ弁護士事務所は「善管注意義務違反がある」とした。ところが関電は顧問弁護士にも見解を求め、「様々な意見がありうる」との回答を得て、提訴しないと発表した。
監査役の責任を指摘した弁護士も、訴訟については取締役側に裁量があるとしている。だからと言って、役割を果たさなかった監査役が不問でよいのか。
関電は会長や社長の経験者ら元取締役5人に対し、計19億円の損害賠償訴訟を起こした。再生への一歩とは言えるだろう。
しかし、関電が掲げる「信頼回復」のためには、事実をすべて示し、責任を問う作業が不可欠だ。それなくして、金品受領問題が突きつけたガバナンスの不全をただすことはできない。
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