いよいよ、事件のあった2015年4月3日当日を時系列で追ってみたいと思う。ソースは
著書「Black Box」➡
メディア ➡
裁判資料 ➡
で色分けする。なお筆者のコメントは💡、伊藤氏の行動は🔴、山口氏の行動は🔵で示す。
4月3日(金)
🔴奉納相撲の取材で朝8時から靖国神社へ
当日、待ち合わせ前の伊藤氏と山口氏のやり取りは「BB」では省略されている。
今日は昼間は仕事かな?恵比寿集合だと何時頃来られる?
13:29
お疲れ様です。恵比寿ですと、8:00には確実に行けます!宜しくお願いします!
16:26
お疲れ様です!
仕事たった今終わりました!予想よりも早く仕事が終わったので、恵比寿に集合の時間が決まりましたら連絡ください!
携帯番号は●●です!
18:41
🔴ロイターに機材を置きに戻った後、砂埃を浴びたので着替えのため一度原宿の自宅に戻る
💡「BB」では一度家に戻って着替えたことが省略されているだけでなく、仕事が押してしまい、約束から一時間遅れて駅に到着したと書いている。メールでは「予想よりも早く仕事が終わった」と書いているし、実際に一度家に戻っているにも関わらず…家で着替えたことを隠したかったのだろうか。それ以外の理由が思いつかない。
恵比寿に着いたら連絡下さい。
18:52
恵比寿に着いたら連絡下さい。私は8時前に着いているけど、急がなくて大丈夫だからゆっくり来てください。
18:54
🔵串焼き屋「とよかつ」に移動し、先に飲食
20:00頃 恵比寿駅で合流、「とよかつ」へ移動 (徒歩3分)
「とよかつ」にて
「とよかつ」は、厨房を囲むカウンター20席ほどの大衆串居酒屋だ。終戦直後の昭和21年、まだ焼野原だった恵比寿に先代の長島勝子さんはご主人の豊作さんと一緒に木造の店舗で店をはじめた。店名の「とよかつ」は2人の名前を組み合わせたものだ。
今は息子さんの太市さん夫婦が引き継いでいる。
とよかつの一升瓶ワイン
「とよかつ」の食事内容から伊藤氏と山口氏の主張が少しずつ食い違ってくるので、それぞれの主張を紹介していく。(伊藤氏側の主張=🔴、山口氏側の主張=🔵)
🔴串焼き5本、もつ煮込み、叩ききゅうり。ビール2杯、ワインを1〜2杯。小さなコップ。ワシントン政治部の話 (伊藤氏は興味なし)。ビザの話はなし。1時間半ほど滞在。[Black Boxより]
店を出る時、伊藤氏は店にコートを忘れて取りに戻っているので、酔ってはいなかった。
🔵店側は、伊藤氏は生ビール2杯、しそサワー1杯、ワインをグラスで少なくとも数杯飲んでいたと証言している。滞在時間は30分~40分。店主は伊藤氏がビザの話をしていたことを記憶している。あまりに執拗な自己PRぶりが強く印象に残ったためだ。山口氏はあまり会話が成立しない伊藤氏を差し置いて、左隣の美容師の相客と話していた。その間に伊藤氏は、自らワインを手酌で飲み干し続けたというのが証言内容だ。[出典]
(伊藤氏は)飲むペースが非常に早く、かなり強いお酒をぐいぐいと一気飲みのように飲む。(山口氏が)「大丈夫ですか?」と訊くと「喉が渇いているので。お酒は強いほうだから大丈夫です」と答え、その後もハイペースで飲み続けた。[出典]
💡「JUSTICE FOR NY」のメンバーが「とよかつ」を取材。山口氏を応援するメンバーだと名乗ったところ、女将さんもご主人も喜んで、当日の様子を話してくれたそうだ。
女将さんの証言によると、当日遅刻してきた伊藤氏は、店に着くなり「シャワーを浴びてきたので遅れました」「でも急いで来たのでまた汗をかいてしまいました」と言ったという。また「お仕事、よろしくお願いします」と熱心に訴え、ビザの話もしていた。伊藤氏と同年代の娘を持つ女将さんは、お酒の席でベタベタしながら仕事のお願いをしている伊藤氏に対して違和感を覚えたそうだ。
残ったワインは隣の仲良くなった客にあげ、伊藤氏と山口氏はとよかつを後にした。2軒目の「鮨の喜一」までは徒歩5-6分の距離。
「鮨の喜一」にて
「鮨の喜一」もまた、カウンター11席の、小さいけれども明るいオープンカウンターの店で、客は店主と向き合って座る。ちなみに喜一には2~6名用の個室もあるが、山口氏はカウンター席を予約している。
「喜一」店主の遠藤哲男さん
🔴奥のカウンター席に座り、日本酒を2合飲んだ。おつまみだけでお鮨はなし。ビザの話は出ず。山口氏と鮨屋の主人が文春の記事について話すのを聞いた。2合目を飲み終わる頃、トイレに行き、帰ってきて3合目を飲んだ辺りで調子がおかしいと感じ再びトイレに。頭がくらっとして蓋をした便器にそのまま腰かけ、給水タンクに頭をもたせかけた。そこから記憶なし。[Black Boxより]
警察の聞き込み捜査では「簡単なつまみと太巻きのみで、日本酒を2人で7〜8合。他の客の椅子に座り、他の客と話し始めた。裸足で店内を歩いていた」[Black Boxより]
🔵店主の遠藤氏によれば、山口氏、伊藤氏の酒量は合わせて1升ほど。伊藤氏は自ら冷酒を何度もお代わりして手酌で飲んでいた。伊藤氏の酒量は都合6から7合。
伊藤氏は酔ってハイヒールを脱ぎ、裸足で店内を歩き回り、他の客の席に割り込み陽気に話し込んでいた。店の客筋上、こんな大酒・泥酔する女性客は珍しく、印象に強く残ったという。その間、山口氏は偶々隣席にいた同店常連のタレント、さかなクンと話し込んでいた。
伊藤氏がトイレに入ったまま15分ほど出てこないので店員が開けたところ、氏はトイレから崩れ落ち、不自然な格好で寝ていた。店員に介抱されて席に戻った伊藤氏は、再び日本酒を自ら注文して、手酌で飲み始めた。[出典]
💡両店とも「伊藤氏が手酌で何杯も飲んでいた」と証言しており、伊藤氏の主張と矛盾する。飲むスピードが速く、何杯も飲んでいないと、客が手酌で飲んでいたことを店側が覚えていることはないだろう。
伊藤氏の主張が正しいと仮定するならば「とよかつ」そして「鮨の喜一」ともに嘘をついていることになる。嘘をつくことで店側に何かメリットはあるのだろうか?
先程上で説明した通り、とよかつは終戦の一年後に先代の勝子さんと豊作さんが焼野原の恵比寿で商売をはじめ、70年以上続いてきた老舗である。恵比寿駅から徒歩3分という立地で、大衆居酒屋を70年経営し続けるのは並大抵のことではないだろう。「とよかつ」に関してはこちらの記事をぜひご一読願いたい。
「鮨の喜一」もHPを見ると、鮨へのこだわりと、店主遠藤さんの想いと人柄が伝わってくる。魚屋の息子として生まれ、江戸前寿司の修行後「喜一」を創業し今年で35年だそうである。このブログを書くため、HPを何度か訪れたが、見るたびに唾が止まらないのでさっさと退場したくなるHPである(嘘です。いつかぜひ一度行ってみたい)
タレントのさかなクンが常連なのは本当で、お店のHPにも動画が掲載されていた。
店側が嘘の証言をしたのだとしたら、考えられるのは山口氏がそう証言するよう頼んだ、というものだろう。しかしそれは、とよかつと喜一の店主に自らの犯罪を告白する大変リスクの伴う行為である。よほどの信頼関係で結ばれていないと「自分は女に薬を盛って眠らせ強姦する男だ。その罪を隠すことに加担してくれ」とは言えないだろうし、店主側もよほど善悪の感覚が狂った人でないと、それを受け入れることはないだろう。
タクシーでシェラトン都ホテルへ
🔵22時半から23時頃、喜一を出た。伊藤氏は足元が覚束なかった。店の入り口左手にあった荷物置きの棚から、伊藤氏は自分のショルダーバッグと他の客のカバンも持って出た。ワシントン支局長を務めていたので、23時過ぎまでに作業(メール確認やパソコンでの調査・連絡)を複数済ませる必要があった。(履歴書に書いてあった)神奈川県まで(タクシーで)送ったら間に合わないと思った。[出典]
🔴(タクシーで)伊藤氏が「近くの駅まで行ってください」と言い、進行方向にある目黒駅に向かった。車内で2人は仕事の話をしていた。伊藤氏は途中でもう一度「目黒駅へお願いします」と言い、目黒駅近くで山口氏が「都ホテルへ行ってくれ」と行った。伊藤氏は「その前に駅で降ろしてください」と言っていたが、山口氏は「まだ仕事の話があるから、何もしないから」などど言っていた。ホテルに着くと伊藤氏はなかなか降りず、山口氏が引きずり出すような形で伊藤氏を引き降ろし、その後も抱えられるようにホテルに入っていった。嫌な匂いがしたので後部座席を見ると、奥の下に吐しゃ物があった。[タクシー運転手の証言]
🔵タクシー内で(伊藤氏が)いつごろ吐いたかは覚えていない。相当酔っていたのは確かで、不自然な行動をしかねない懸念があった。駅で降ろすと吐瀉物で窒息リスクがあると思った。伊藤氏は酔っていたけど、すみませんと言ったり、嘔吐したものを手でよけたりしていたので、意識はあった。別の部屋に泊めることは思いつかなかった。
🔴タクシーから降りた山口氏は私を引きずり出し、(私は)歩くこともできず抱えられて運ばれた。ホテルのロビーを横切る映像では、私は足が地についておらず、前のめりのまま、力なく引きずられ、エレベーターの方向へ消えていった。[Black Boxより]
🔴伊藤氏は車内で「そうじするの、そうじするの、私が汚しちゃったんだから、綺麗にするの」と、幼児の片言のように言っていた。山口氏にドアから降ろされるとき「綺麗にしなきゃ、綺麗にしなきゃ」と言っていたが、山口氏が腕をつかんで「いいから」と言った。足元がフラフラで、自分では歩けず、しっかりした意識の無い、へべれけの、完全な酩酊状態。「綺麗にしなきゃ、綺麗にしなきゃ」と言っていたが、そのままホテル入口へ引っ張られ、「うわーん」と泣き声のような声を上げた。[ホテルドアマンの証言]
💡伊藤氏側はタクシー運転手の証言から、タクシー内で普通に会話できていたことは認めている。しかし「BB」では、ホテルに着くと突然「抱えられて運ばれ」「力なく引きずられ」等、昏睡状態に陥ったかのようになる。かと思えば、伊藤氏が正しいとするドアマンの証言では、ホテル到着時伊藤氏は「そうじするの」「綺麗にしなきゃ」と言っており、明らかに昏睡状態ではない。
またタクシー運転手の証言にはそのような発言はないし、「汚しちゃった」と聞けば車内をすぐに確認するはずである。しかしタクシー運転手は、2人が降りた後車を出してしばらくして吐しゃ物に気づいたと証言しており、その点も矛盾している。
ホテル入館時の防犯カメラの映像
ご存じのように、2人がホテルに到着した際の防犯カメラの映像は、(伊藤氏の主張によれば)シェラトン都ホテル側からの要請で一般には非公開となっている。同じ映像のはずなのに、伊藤氏側は「足が地についておらず、力なく引きずられた」、山口氏側は「意識もはっきりしており、自分の足で歩いていた」と主張が真っ向対立するという不思議な映像だ。
ちなみに山口氏側はこの防犯カメラの一般公開を継続して求めており、伊藤氏側は「私だって皆さんに見てもらいたい」と言いながらも、山口氏に申立書を送り「絶対に公開するな」と念を押している。これだけ見てもどちらが嘘を言っているのか分かりそうなものだが、ここまで動画の説明が相反していると、元の動画を見たくなるのは人間として当然だろう。
しかし、実は東京地方裁判所に行けば、裁判資料として閲覧可能なのである。山口敬之さん支援サイトである「Justice for NY」に、シェラトン都ホテル入館時の防犯カメラ映像を見た方の詳細なレポートが上げられている。
伊藤氏側代理人や伊藤氏の友人、山口氏側代理人など、それぞれの目撃談や主張を掲載し、この方が見た実際の映像と比較している。よくまとまっているので、ぜひご覧頂きたい。
次回は、ホテル退館後から考察していく。