結局、印面をデザインしなおしている間に、プラスから個人情報保護スタンプが発売されてしまった。
マーケティングでいえば、先行優位の法則である。
先に出したものが市場の形成に関して有利というもの。
しかし、こちらは類似市場優位性がある。
つまりスタンプというカテゴリーでは後発でも勝てる可能性もこちらあるのだから、プラスがブランドの代表になる前に商品を投入し、拡大する必要があるのだ。
デザインコンペでの提案印面がベストと思っていたのだが、営業の「美しくない」の一言でできたパターンは正直、恥ずかしいデザインだ。
コレ(笑)
この検討でプラスより出遅れたのはもったいない。
ハッキリいって無駄な議論だと思った。
プラスに遅れること1ヶ月、セキュアスタンパーは発売された。
営業からは、セキュアをわかりにくいとかいろいろ言われたが、とにかく出さなければいけない。
極めて英語に弱い営業が多く「セキュア」の意味もわからないと言い出す始末。
時間があれば検討したかったが、コンペの提案者への尊敬も含めてそのままのネーミングでいった。
市場で発売されると、バイヤーから、プラスは消えるけど、おたくのは消えないね、とクレームが相次ぐ。調べてみるとプラスの商品は、やはりインキが黒い。
専用の黒いインキだったのだ。
研究所の責任者に言うと、
「ごめん、ごめん、あのインキ普通のより黒いわ」。
正直、
ふざけるな!
と思ったが時すでに遅し、インキを改良している間に市場の商品は回収され、個人情報保護スタンプのカテゴリー代表はプラスの「ケシポン」になっていた。
ケシポンは10年以上トップシェアのヒット商品となった。
初動の遅れ、周りの意見の聞きすぎ、仕事のいい加減さ、が敗因である。
せめて、海外だけでもと思い、海外事業部の持ち込んだものの、
「海外では個人情報なんて消さないよ」
と小ばかにされたようにあしらわれた。
海外部門の人間の反応はいつもこうだ、
やる前からやらないと平気でいってくる。
後にこの海外部門に配属になるとは思ってもいなかったが。
今現在、私の知る限り、シンガポール、マレーシア、香港、台湾などの国で、
プラスの「ケシポン」は、
唯一の
個人情報保護スタンプとして
トップシェア
を誇っている。
↓シンガポールのケシポン
つづく