ほぼ日刊イトイ新聞

2020-06-22

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・ぼくは、本格的な、とは言えないのですが、
 やや「ミネラルおたく」の傾向があります。
 いろんな鉱物、化石、隕石などというものが好きです。
 化石は子どものころからの憧れで、
 地層の見える山に勇んで採りに行ったものですが、
 知恵も知識もなかったせいか、うまくいきませんでした。
 そういう時代のうっぷんを晴らすかのように、
 大人になってから小銭大銭を投じて、
 さまざまな化石を我が物にし、にまにましております。
 ただ、それをうらやむ人も、語りあう人も近くにいない。
 また、ぼく自身が、遠くのマニアと交流するほどの
 熱心さを持ち合わせていないということもあり、
 いくらかの大事な化石の類は、ぼくの亡き後は、
 粗雑に処分されてしまうことと思います。
 化石以外に、隕石もちょっと、天然石もちょっと、
 石器や土器のかけらもちょっと持っていますが、
 そういうものも、おそらくゴミになるのでしょうね。

 それでも、ちょっとくらいは、「ふつうのみんな」に、
 化石のことなんかについて講釈を垂れることもあります。
 たとえば、三葉虫の化石なんてものは、
 小さいものなら500円とかで買えてしまうのですが、
 こんな玩具みたいに扱われる化石でも、
 カンブリア紀(約5億4200万年前)から、
 ペルム紀末(約2億5100万年前)の生き物です。
 小さな虫のかたちの石が、あなたの知らないところで、
 確実に2億年以上もずっと存在してきたと想像するだけで
 気が遠くなるようではありませんか? 
 そんな長い時間が、すでに流れていたんだと思うだけで、
 なんか、背骨がむずむずしたり…は、しないか。
 でも、人間なんてものがひとりもいない時代のことを、
 ちょっと考えるのも、たまにはよくないですか?

 あなたが料理にかけた岩塩、山から採った塩ですよね。
 山の塩と、海の塩があると思ってる人もいるかなぁ。
 岩塩っていうのは、大昔にその山が海だった時代の、
 海水の塩なんですよー、知ってるかもしれないけど。
 山が海だった時代があるんですよ、大昔には。
 地球の過去の大変動って、冗談みたいですよねー。
 ちょっと、意識の深呼吸はいかがでしょうか。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
いますぐの時間と、しばらくの時間と、遠くに続く時間と。


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