コロナ禍の夏、黒マスクにご用心 白マスクより太陽光の吸収性高く熱中症リスク上昇

黒色は太陽光の吸収性が非常に高く、夏場は特に注意する必要がある
黒色は太陽光の吸収性が非常に高く、夏場は特に注意する必要がある

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でマスク着用が日常となった。本格的な夏場を迎えるにあたり、専門家はマスクによる熱中症リスクの高まりを指摘。熱中症の症状は、新型コロナウイルスの初期症状と酷似しており、「医療崩壊」も危ぶまれるという。さらに、若者を中心に流行する黒マスクは、熱を吸収しやすい特徴も。今夏は“必需品”とどう向き合っていくか―。

 医療や福祉の専門家らが参加する「教えて!『かくれ脱水』委員会」の服部益治委員長によると、マスク着用による熱中症リスクは2点ある。一つは体温調節の妨げになること。鼻や口をマスクで覆うことにより、体の熱が逃げにくくなる。もう一点は感性の鈍化。口の中で湿度が保たれ、脳が水分がある状態と誤認識し、無意識のうちに脱水が進行してしまう。

 そして厄介なのが、熱中症がコロナの初期症状と酷似している点だ。その場での判断が難しく、医療機関の混乱は必至だという。また、コロナ禍前までは白い不織布マスクが“一般的”だったが、今やお手製やカラフルなものなど、ファッション的な側面もうかがわせる。服部委員長は「おしゃれな人は熱中症に要注意。黒はなるべく避けた方がいい」と話す。

 白がすべての光を反射させるのと対照的に、黒は太陽光の吸収性が極めて高く、黒マスクをする場合は念頭におく必要がある。熱環境に詳しい国立環境研究所の一ノ瀬俊明さん(56)によると、気温35度の日のTシャツの表面温度は5分経過で、白色はほぼ不変。黒色は約50度まで上昇した。面積的にマスクであれば、衣服が体温に与える影響ほどではないというが、「表面温度の上昇により、不快感は間違いなく黒の方があると思う」と、体感温度などの心理的な負荷を示唆した。

 第2波の到来が懸念される中、健康な人のマスクを非推奨としていた世界保健機構(WHO)も今月5日に、マスクの着用を推奨すると指針転換し、今後も日常的な着用が見込まれる。服部委員長は、こまめな水分補給など例年以上の注意を求め、「夏にマスクをして過ごしたことがありますか? かつて経験したことのない夏を迎えるのです。でも、熱中症は予防できます」と話した。(竹内 夏紀)

 ◆日本ルーツは明治時代初期

 近年、若者を中心に人気の黒マスクだが、実は約100年以上前には「白」ではなく、「黒」が主流だった。日本衛生材料工業連合会の高橋紳哉専務理事によれば、日本のマスクのルーツは明治時代初期。安価で手に入りやすい平織りの黒布が使われており、主に炭鉱や工場などで防塵(ぼうじん)対策に用いられた。一方、白マスクは「高級品」の位置づけで、値段は黒の数倍。“病院専用”の意味合いが強かった。

 1918年には、全世界に猛威を振るった「スペイン風邪」が流行し、マスクが一般的にも普及。当時のポスターには、黒マスクをつける人々が描かれ、「マスクをかけぬ命知らず!」の文言が添えられていた。

 戦後に学校給食で白マスクが使用されたことで白が定着したが、近年はファッション性重視の観点から、水色やピンクなどカラー化が進行。韓国や国内著名人の着用で黒マスク人気も再燃し、昨年からは大手メーカーも製造に乗り出していた。

 色のみならず、好きな柄の布地によるお手製など、新型コロナの影響でマスク事情は変化。高橋専務理事は「白が当たり前ではなくなった。さらに個性を出す時代になるでしょうね」と今後を占った。

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