私たちは果たして新型コロナウイルスの感染対策に成功したのか。もっと早く拡大を抑え込み、「自粛」に伴う経済的打撃を減らすことはできなかったのか。日本モデルを誇る前に、感染者が急増していた時期に起きたことを3回にわたり検証する。それが「次の波」に備える力になる。「薄氷の防疫」シリーズ第1回。
拡大するコロナの時代 薄氷の防疫
「わずか1カ月半で流行をほぼ収束できた。日本モデルの力を示した」。新型コロナウイルスの緊急事態宣言を全国で解除した5月25日、安倍晋三首相はそう胸を張った。国内で亡くなった人は950人あまり。今も連日数十人の新規感染者が報告されるものの、人口あたりの死者数は主要7カ国(G7)で最も少ない。
だが、対策を担った専門家たちの目には、日本も、多くの死者が出る感染の爆発的拡大(オーバーシュート)の一歩手前だった、と映る。最大の危機は宣言が出る前の3月にあった。
未知のウイルスに対処するため、政府の専門家会議のメンバーらは週2~3回、自発的に都内の会議室に集まり、手弁当の「勉強会」を重ねていた。目の前の新たなデータに緊張感を募らせていたのは、首相が会見で「東京五輪は予定通り開催したい」と語った14日ごろのことだった。
欧州やエジプト、東南アジアから入国・帰国した人たちからの感染例が10日ごろから急増している。海外からとみられる事例は40例以上あり、国内全体の1割を占めている――。
拡大する3月11日 世界保健機関(WHO)は現状を「パンデミック」と認定した=ジュネーブ
イタリアでの死者は1200人を超え、世界保健機関(WHO)は「世界の流行の中心は欧州」と表明していた。欧州などからウイルスを持ち込んだ感染者数は、中国からよりはるかに多いとみられた。「まるで焼夷(しょうい)弾だ」。北海道大の西浦博教授がそう表現するのを、出席者の一人は聞いた。
専門家会議は9日に「国内の流行は持ちこたえている」との見解を出していた。札幌の雪まつりや大阪のライブハウスから広がったクラスター(感染者集団)はほぼ収束。中国からの波は「なんとか封じ込められそうだと考えていた」(座長の脇田隆字・国立感染症研究所長)。
そんな楽観的な見方が数日で変わった。
当時、日本が入国制限していた…
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6/21 21:00 時点
退院者数はクルーズ船の乗客らを含めた数。厚労省などによる
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