新型コロナウイルスに感染して退院した滋賀県草津市の歯科衛生士の女性(56)が、16日までに京都新聞社の取材に応じ、命の危険を感じた約1カ月の闘病生活を振り返った。勤務先からは今も復職を止められており、「自分のキャリアも家族の人生も変えてしまう恐れがある」と感染の恐怖と予防の大切さを訴えた。
体の異変を感じたのは4月3日夜だった。勤務先の歯科医院から帰宅すると体がだるく、37度8分の熱があった。翌日、近所のかかりつけ医を受診。鼻風邪と診断された。その日の夕方に左の目が腫れ、左の頬にしこりを感じた。初めて経験する症状だった。
その後も38度台の熱が続いた。同じ医院を複数回訪れ、副鼻腔(びくう)炎の疑いがあるとして抗生物質も処方されたが、症状は悪化の一途だった。「おなかを針でちくちく刺すような痛みがあり、せきをするとあばら骨が折れそうな激痛が走った」
医院から草津総合病院に紹介状を書くとの連絡を受け、夫(55)の車で病院に向かったのは最初の診断から約2週間後の16日。レントゲンやコンピューター断層映像(CT)検査の結果、「肺にコロナ肺炎特有の白い影が出ている」と告げられ、即入院した。PCR検査の結果は陽性だった。「苦しさの原因がやっと分かったのは良かったが、このまま死んでしまうのかと不安がよぎった」
■「気を付けても感染する時はする」、だからこそ…
女性は4月17日、感染症指定医療機関である近江八幡市立総合医療センターに移った。
夫と娘2人に加え、近くに住む長男夫婦がPCR検査を受けた。幸い5人とも陰性だったが、草津保健所の要請で同居の3人は2週間、長男夫婦は1週間の自宅待機を続けた。