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【走り出す日本力】[KAWAIIカルチャー]「奇抜は個性」原宿の女の子パワー

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【KAWAIIカルチャー】「奇抜は個性」原宿の女の子パワー

アートディレクター 増田セバスチャンさん

自らの芸術作品の前に立つ増田セバスチャンさん

自らの芸術作品の前に立つ増田セバスチャンさん=東京都渋谷区(三尾郁恵撮影)

 目の覚めるような青、ピンク、黄色などのポップな色使いに、リボンやレースがたっぷり使われた洋服、制服でさえも自由に着こなして街を闊歩(かっぽ)する日本の女の子たちのファッションが「KAWAII(かわいい)カルチャー」と呼ばれ世界を熱狂させている。

 アートディレクターの増田セバスチャンさん(44)は、世界の若者がKAWAIIの“聖地”と憧れる東京・原宿で自身のファッションブランドを立ち上げ、約20年にわたって独自のKAWAIIを発信してきた第一人者だ。歌手のきゃりーぱみゅぱみゅの美術演出を手がけていることでも知られる。近年は海外で精力的に個展を開いている。「世界中が敬意を表すこの文化が、日本発のオリジナルなものだと伝えたい」とも語る。

 KAWAIIカルチャーと、その核ともいえる原宿文化が受け入れられるまでの道のりは長かった。奇抜なだけ、若い子向けと線引きされた。

 世界を魅了したものは何か。増田さんは東日本大震災をきっかけのひとつに挙げる。壊滅的な被害が全世界に報道され、「漠然と信じていた明日という日が来ないかもしれない不安を誰もが感じ、今しかない時間を、自分はどう生きるのか強烈な命題が突きつけられた」と振り返る。

 その中で見いだされたのが、好きなことに一生懸命生きる原宿の女の子たちだった。奇抜にみえるファッションも個性として取り込んでしまう力。

「後ろ指をさされても冷ややかな目で見られても、自分を貫く姿は潔くて、世界はそこに日本の未来があるかもしれないと考えた。日本は終わらないと気づいたんだ」

 歌手のレディー・ガガ、映画監督のソフィア・コッポラら世界的なアーティストも「KAWAIIカルチャーに影響を受けた」と公言する。

 一流セレブリティに注目されたこと、インターネットの発達によって急速に拡散されたが、その伝わり方について「ルーツがどこにあるのか、日本オリジナルであることがごっそり抜け落ちてしまっている」と憂慮する。

 次に見据えるのは5年後の東京五輪・パラリンピックだ。原宿はメーン会場である新国立競技場のおひざ元。日本をアピールするこれ以上ない機会になる。「私が考えるKAWAIIは、自分だけの小宇宙、誰にも踏み込ませない大切な空間のことだと思う。大人になっても自由に、豊かに生きられることを知ってもらいたい」。強い思いが、海外活動への原動力をかき立てている。

(石井那納子)