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海水魚飼育方法
海水魚の水槽に魅力を感じ、「我が家でも綺麗な海水魚を飼育して癒されたい。」と夢と希望を持って飼育を始めたものの、 魚が病気になり直ぐに死んでしまったと、思うように飼育が出来ずに困っている方も多いのではないかと思います。
こちらではそのようなアクアリストの方々が飼育を成功出来るように、適切な飼育方法をお伝えするサイトです。


1.飼育のコツ

(1)経験者から話を聞く
飼育方法については書籍を購入したり、海水魚ショップの店員に相談するなどされている方が多いと思いますが、一般論の部分しか触れていないことが 多く、また設備のメリットだけの説明が主体であり、残念ながらデメリットに対する説明がなされていないのが現状です。
そのように飼育初心者にとっては不充分な情報が多いので、確実に飼育技術を向上させる為には、経験を積んでいる有識者に話を聞くことが一番の近道であると思います。
有識者はショップの店員とは異なり、営利目的が絡んでいないので確実なアドバイスを受けることができます。 但し、経験者の中でも飼育が上手なヒト、下手なヒト。また人によって説明する内容が食い違うケースが良くあります。
これについては、それぞれ短編的な部分では決して間違ったことを言っている訳ではありませんが、ちょっとした感覚にズレ(飼育技術の差)が生じています。 経験を積めば積むほど「今まで自分が行ってきた経験値が一番正しい。」という自論を皆さん持っているので、説明内容に差異が生じることが多いのです。
そのように人によって見解が異なってしまうと情報を知りたい側は、何がベストであるか困惑することも多いのではないかと思いますので 確実な飼育技術を習得する為には、確実な飼育をおこなっている「自分が一番信頼できる人」を見つけ出すことが、飼育マスターの近道といえるでしょう。


(2)設備の投資は手を抜かない
飼育に必要な水槽など設備関係は、いろいろ揃えるとかなり高額になってしまいますが、設備投資は初めから「ここまではいらないだろう」と思われる 余裕をもったサイズのものを購入した方が、後々安く納まることが多いように思います。
飼育当初は小さめの水槽で飼育を開始し、濾過機能が不充分のうちに魚を入れ過ぎて、すぐに魚が死んでしまうケースが多いと思います。
海水魚は特に濾過機能が重要になりますので、惜しまずに設備を整えるようにして下さい。


(3)魚を入れすぎない
魚が多ければ多いほど、水質維持が難しく発病しやすくなります。水槽と濾過は余裕のあるサイズで、魚の数は少なめに飼育することが長期飼育のポイントです。


(4)魚が落ちた(死んでしまった)ときに原因を究明する
海水魚飼育で一番重要なことが、魚が落ちた時にその原因を究明して同じ失敗を繰り返さないことです。
海水魚の長期経験者でも、未だに発病や魚を落とし続けている人もいれば、経験の浅い方でも60cm程度の水槽で上手に飼育している人もいらっしゃいます。
経験者で毎年同じ失敗を繰返している人は、色々な知識を蓄積しているものの、何かが間違っているのにも拘わらず、その間違いに気付かない場合が多いようです。
また、魚が落ちても自分の失敗を否定できずに、何故か肯定してしまうヒトがかなり存在しているように思います。
確実に飼育のスキルアップを望む方は、常に初心を忘れずに持ち続けて下さい。
私の飼育の基本は魚が落ちた時は常に原因究明をおこない、同じ失敗を繰返さないように心掛けています。


2.設備を揃える

(1)水槽
水槽は大きいものから小さいコンパクトタイプまで様々なサイズがあり、材質もガラス製とアクリル製の二種類があります。
「ガラス製は重いが、アクリルよりもキズが付き辛い。」など、お互い一長一短はありますが、価格的に手頃に購入できるのはガラス製のセット水槽です。
但し、セット水槽の濾過は外部フィルターや上部式濾過が主であり、「飼育が簡単におこなえる」と手軽さを前面に謳っているものの、 次項で述べるように確実に飼育する為にはメンテナンスの手間が掛かるなどの欠点も存在しています。
また専門誌などでは30cm程度のコンパクト水槽で華麗にセットアップしている場面を見掛けますが、そのような小さいサイズでの飼育はお薦めはできません。 コンパクト水槽で飼育ができないわけではありませんが、水量が少ないことから水質維持が難くなり、初心者では失敗するケースが多くなります。
これから海水魚の飼育を考えている方は、コンパクト水槽よりも水量が確保できる60cm程度の水槽でスタートするのが良いでしょう。 このサイズは量産品なので付随する照明器具等も含め、小さい特殊サイズ水槽よりも安く購入することができ、また飼育もより確実なものになっていきます。


(2)濾過
設備面において最も重点を置いて頂きたいのが濾過です。濾過を軽率にしてしまうと水質維持が難しくなり、発病の原因になりますので注意して下さい。
濾過の形状を大きく分けると下記のとおりです。(各々の機能の詳細は専門誌で勉強して下さい。)


a.上部式濾過層 セット水槽に付属されていたり、価格的には手頃です。但し、濾材を入れる容量が少ない為、濾過能力が弱いネックがあります。
また外部密閉式を含め、水槽の表層面に浮遊したゴミや油膜を除去することは困難です。
b.外部密閉式 稼動音が静かで塩垂れも少ない特徴がありますが、構造上において生物濾過と物理濾過が同一スペースとなっている為、濾過スペース内に排泄物等が堆積することによって水質の悪化を牽引し、発病の原因となりやすいネックがあります。
また、吐水口がシャワー状態である為、酸素供給が乏しく酸欠になる可能性があるなど、海水魚の飼育には適合しているとはいえません。
c.オーバーフロー式 この濾過形式は、水槽の下部に大きな濾過槽を設置する形状であり、大量の濾材が確保できる為、充分な生物濾過が期待できます。また、物理濾過はドライの状態で分離できる為、糞や食べ残した餌などを確実に濾し取れるなど、濾過装置としてはベストな形状です。
但し、設置にはある程度のスペースが必要であり、コスト的にも高額になるので、財布との相談が必要になります。
将来的に水槽のサイズアップをおこなう時は、是非考案して頂きたいシステムです。
d.外掛け式 物理濾過は多少できますが、生物濾過は全く期待できません。海水魚飼育には不向きです。


(3)照明器具
室内では照度が低い為、照明器具で照度を保ちます。点灯・消灯については、昼と夜の時間帯を規則正しくするように心掛けて下さい。


(4)ヒーター
晩秋以降は気温の低下とともに水温も低下するので早めにヒーターを設置し、水温を25~26℃に保たせるようにしましょう。


(5)比重計
水中における塩分濃度の測定です。比重は1.022程度に保ちましょう。


(6)殺菌灯
紫外線の効果により殺菌作用が期待できます。高価ですが病気の予防には是非設置したい設備のひとつです。


(7)プロテイン・スキマー
物理濾過では除去できない細かい汚れ(タンパク質)を泡の表面に付着させ放出します。設置するには別途にパワーヘッド(昇水ポンプ)が必要です。
海水魚のみの飼育であれば必ずしも必要ではありませんが、予算的に余裕があれば設置してた方がより良い水質を維持することができます。


(8)水槽台
下駄箱や本棚の上に水槽を設置することは止めましょう。60cm規格サイズの水槽でも、水槽の自重等も含めると70kg程度の重さになりますので専用の台が必要です。
ホームセンターで材料を購入しての自作も楽しさがあります。


設備機器を購入する際の注意事項
外部密閉式濾過や殺菌灯など、各設備機器の対応能力ですが、メーカー記載の容量よりも2回り位は容量の大きなものを購入して下さい。
メーカー記載の容量では効果が期待できません。これは設備機器全般に共通していえることなので注意して余裕のあるサイズのものを購入するようにして下さい。


3.水槽を立ち上げる

(1)濾材を設置
濾過槽に濾材を敷き込みます。一般的にはサンゴ石を濾材として使用します。オーバーフロー形式の濾過槽にはLLサイズ、60cmの上部濾過層には小豆大のMサイズ若しくはLサイズが良いでしょう。
先ずは、サンゴ石を水道水で汚れを洗い落としてから濾過槽に敷き込みます。
具体的な濾材量については水槽全水量の20%をが目安にして下さい。
例えば、900*450*450 サイズの水槽を例に挙げてみますと
水槽内水量 ⇒ 約180L * 20% = 36L
水量の36Lをサンゴ礫LLサイズに置き換えると30kgになります。
濾過槽のサイズに余裕があっても、濾材が少なければキッチリ機能しませんし、濾材量をしっかり20%確保していても魚が多すぎてしまうと、濾過能力が追い付かなくりなります。
更に濾過槽内部を区分けすることによって、水流が濾材に接する面積が増やせるので濾過効率が上がり、理想的な濾過形状となります。
ちなみに当方のメイン水槽は27%、餌付け水槽は30%を確保しています。

水槽を稼動しはじめるとやがて濾材にバクテリアが付着し、排泄物など有害なアンモニアを亜硝酸に分解していきます。この亜硝酸も有害ですが別種類のバクテリアが魚にとって害の少ない硝酸塩に分解していきます。 この硝酸塩はバクテリアでの分解はできず、水槽内に蓄積されるだけなので、定期的な換水によって水槽外に排出します。
このアンモニアと亜硝酸は魚にとって有害である為、濾過機能が不充分ですと魚は体調を崩し、病気の発症が起り易くなり最悪は死に至ります。
水槽を立上げたら1日ほど空回しおこない濁りを除去した後、魚を投入します。(60cm水槽ならば、スズメダイ4~5匹程度)アンモニアは魚を投入しなければ発生せず、これを分解するバクテリアも繁殖しないのです。
立上げ後、3週間程度で亜硝酸値が急激に上昇してきます。(亜硝酸テスターで2日毎に計測しましょう。)ここでの注意点ですが、亜硝酸値が高いからといって水替えをおこなってはいけません。 この時期の水槽は魚が生きていけるギリギリの濃度ですが、亜硝酸が高くならなければ亜硝酸を分解するバクテリアが繁殖しないのです。 スズメダイの仲間はある程度の亜硝酸濃度でも耐えていけますので、亜硝酸値が下がっていくのをそっと見守りましょう。
4週目でバクテリアが繁殖し始め、亜硝酸値が徐々に低下していきます。亜硝酸値が殆ど計測されなくなればバクテリアが繁殖し濾過が機能した証です。徐々に魚を増やして下さい。
濾材にバクテリアが付着し、濾過機能が始まるまでには少なくとも1ヶ月(完全に効果が得られるまでは約3ヶ月)を有しますので、その間は魚を増やしたくても我慢して下さい。


(2)物理濾過(ウールボックス)の設置
物理濾過とは水槽内に浮遊・沈澱しているゴミや食べ残しなどの固形物を濃し取る作業をいいます。
この物理濾過にはウールマットを使用しますが、濾過槽にウールマットが水没しないようドライ状態に設置します。この状態の参考として、コーヒー豆を挽いたフィルターでコーヒーを落としている状況を想定して下さい。物理濾過はこのような状況でなければなりません。
このウールマットが水没してしまうと吸い上げられてきたゴミや食べ残しは、ウールマットの表面に濃しとられずに水流と一緒に濾過槽内に流れ込み、沈澱されてしまいます。
濾過槽内にゴミや食べ残しが沈澱しすぎると腐敗が進み、水質の悪化によって魚の体調維持に悪影響を及ぼしてしまいます。


(3)海水を作る
人工海水の素をカルキ抜きした水道水で溶かし、飼育水を作ります。(人工海水の素にカルキ抜き材が混入されているものもあります。)塩分濃度は比重計で1.022に合わせます。その後、約3日程度毎に比重を測定し、蒸発により比重が高くなっていたら、真水を注入して比重を適正値に合わせます。
人工海水の素は各社より発売されていますが、その中には溶けずに沈殿する粗悪な商品もありますので注意して下さい。


底面の濾材について
水槽の底面に「サンゴ砂を敷く」ことに関し、議論が分かれています。底面に濾材を敷くことによるネックとしては、「サンゴ砂を底に敷くと排泄物や餌の食べ残しが堆積し、発病の原因となりやすいので敷かない方がよい。」といった状況が考えられます。これについて「敷かない」方が底面に堆積し辛いといえますが、敷いた場合、濾材に付着したバクテリアが排泄物などを分解するなどのメリットもあるのです。
私はSSサイズのサンゴ砂を敷いていますが、月に1回程度底面に堆積した排泄物などを除去することによって発病もなく順調に飼育できています。
このことからも、底に敷いた濾材は発病に多少牽引するかもしれませんが、直接的な大きな要因にはならないと考えています。


(4)魚を購入する
水槽が立上がったら、いよいよ魚を購入します。この時が一番ワクワクしますよね。
上手に魚を選ぶ為には、次のことに注意しましょう。

①ショップの店員に、自分の設備内容を伝え、魚を選んでもらう。
初めは知識のない方が殆どだと思われますので、店員のアドバイスを受けるのが良いでしょう。
但し、ショップもビジネスです。上記①も完全ではありません。従って、自分の目で魚を選べるようにならなくてはなりませんが、経験の少ない方にとっては難しいことと思われがちです。但し、次のことを注意すれば状態の良い固体を入手することができます。

②餌を食べる魚を厳選する。
せっかく魚を購入しても、餌を食べなければ痩せ細り、やがて落ちてしまいます。魚は南の海で採取されてからショップに入荷するまで長時間の長旅でストレスを受けている魚が少なくありません。 そのストレスによって餌を食べない魚もいれば、餌付けされていない状況でショップに陳列されていることもあります。しかし、最低限餌だけでも食べていれば、たとえ発病したとしても、治療で完治させて飼育することは可能ですが、餌を食べない魚はどうすることもできません。(餌付けが出来るようになれば別ですが・・・)
魚を購入する際には、店員に餌を食べているか聞いてみましょう。

③元気のない魚は買わない。
ショップの水槽で、動きが鈍くじっとしている魚は、発病しているなど体調を崩している場合が多いので元気の良い(泳ぎ廻って、ライブロックを突付いている魚)且つ、痩せ細っていない太った個体を選んでください。

④売れ残りを選ぶ
売れ残っているというと、何かいいイメージはしませんが、これ以上に確実な個体はありません。少なくとも2~3週間程度売れ残っている個体であれば、水槽内の環境にも慣れて餌も食べているはずです。
なぜ、この期間を経過した魚は丈夫な個体が多いかの理由として採取方法に原因があります。ショップで取り扱われている魚の殆どは、シアン化合物という薬品を海へ散布し、仮死状態にさせて採取しています。この薬品の影響で内臓疾患になっている固体も多く、 採取後7~10日で落ちてしまうケースがかなりあるのが実状です。
従って、薬害中毒に掛かっていない個体を選ぶ為には2週間以上様子を見る必要があるのです。
魚を購入する際は、ショップに通い展示されている水槽内の魚の状況をキッチリ把握しましょう。


(5)水合わせ
海水魚は温度・水質の変化に非常に弱く、急激な環境変化は精神的なダメージを与え、ショック死する場合もありますので、購入してから水槽に移す際には水合わせ作業をキッチリおこなう必要があります。 購入直後に魚が落ちてしまう場合は、この水合わせのやり方に問題がある場合が多いようです。
水合わせ方法ですが、一般的に袋のまま水槽内に浮かべて水温を合わせる方法が紹介されていますが、温度変化には対応できるものの、水質変化(塩分濃度等)には適合できませんので次のように水合わせをおこないます。
①容器に袋の中身を海水ごと移します。
②そこへ、1/3程度水槽本体の海水を徐々に入れ(チョロチョロ位の量)5分程度放置します。
③次に半分の海水を捨てます。
④新たに本体水槽の海水を1/3程度徐々に入れます。これでしばらくしたら、水合わせは完了です。(トータル30分位の時間をかけてください。)
この方法であれば魚のショック死はかなり軽減できるでしょう。もしくは、エアチューブを使って点滴のようにゆっくりと水槽の水を混入させる方法もあります。

(6)魚を放す
魚を購入してから水槽に放す前にトリートメント作業をおこないます。ショップの水槽には色々な病原菌が潜伏していることもあり、万一トリートメントをせずに水槽に放した場合、後住者が病気を持ち込み、先住者の全てが感染してしまうこともありえます。 そこで水槽に放す前にはトリートメント作業をおこない、病原菌を撃退させるわけです。病原菌は絶対に外部から持ち込んではいけません。
次にトリートメント方法ですが、グリーンFゴールドによる投薬が魚に対するリスクも少なく良いでしょう。購入した後、水合わせをきっちりおこなったうえで、トリートメント用の別容器に移します。期間的には5~7日程度の薬浴をおこないます。 説明書には淡水魚用と記載していますが、海水魚にも広く利用され、投薬は説明書に記載してある半分の量で効果が期待できます。また、トリートメント中に人工飼料を食べない魚は、同時に餌付けもおこないましょう。
但し、一般的にトリートメント中は「水質が悪化するので、給餌は行わない。」といった意見が多いようですが、この場合バケツ程度の水量にエアレーションのみでトリートメントをおこなっているケースが殆どです。 私の場合は、餌付け水槽で餌付けとトリートメントを同時におこなっています。同時に平行しておこなっても、全くデメリットが生じません。


4.定期メンテ

(1)換水
前3章記載の濾過サイクルで分解された硝酸塩は、水槽内に蓄積されてしまいますので、定期的な換水作業にて排出します。水量の多い水槽では、月に一回全水量の1/3~1/4程度を換水しますが、60cm水槽では月に2回程度おこなった方がよいでしょう。

換水時の注意点として(底砂を敷いている場合)
   ①魚は一旦隔離する。(注水時におけるゴミなどが舞い上がることを防ぐ)
   ②換水後の水温は、換水前の水温に合わせる。(急激な温度変化を避ける)
   ③底砂に堆積された有害物等を排出する為、底砂を攪拌し30分程度空回しをおこなっ
    てから排水する。
   ④換水後、空回しを最低2時間実施する。(後記「濾過槽の清掃」に詳細を記述)


(2)濾過槽の清掃
60cm程度の水槽で外部濾過もしくは上部濾過を使用している場合、1ヶ月毎に濾過槽を清掃することをお薦めします。(飼育専門書では3~6ヶ月毎との説明が一般的ですが外部濾過の場合、濾過槽内に蓄積された糞や餌の食べ残しが発病に直結しています。)
濾材は飼育水で洗浄し、決して水道水では洗浄しないで下さい。水道水で洗浄すると濾材に付着したバクテリアが死滅してしまいます。
上記濾過槽の清掃をおこなう際は、必ず水槽内の魚を一旦水槽外に隔離して下さい。清掃直後の水槽はポンプを稼動させるとゴミが舞上がりますので、必ず換水後2~3時間は「空回し」をおこなってから魚を戻すようにして下さい。この「空回し」が最も重要で、この作業を怠ると発病の要因になります。
換水や濾過槽の清掃後に魚が調子を崩すケースは、「一度に手を掛けすぎ」というよりも、この「空回し」が不充分のために調子が悪くなってしまう場合が殆どです。


(3)物理濾過の清掃
次に物理濾過(ウールマット)のメンテナンスですが、2週間毎に交換若しくは、使用したウールマットを水道水で水洗いします。この作業は必ずポンプを一旦止めてからおこなって下さい。 ポンプを稼動したままだとウールに付着したゴミが舞い上がってしまいます。
また、この作業を2週間以上放置すると、ウールに付着した糞や食べ残しが腐敗することによって水質が悪化し、発病の原因になりやすいので注意が必要です。


(4)苔掃除
飼育してしばらく経過すると水槽のガラス面に苔の付着が目立ってきます。苔は美観上良好とはいえませんので、1週間毎にスポンジ等で除去して下さい。

5.飼育のその他


(1)飼育可能な魚の数
水槽サイズ毎における飼育可能な数量を述べてみます。
先ず、飼育水槽は濾過容量が充実した濾過槽(濾材は水量の20%確保)をもったオーバーフロー水槽とし、魚の大きさによる区別として小型魚:5cm未満、中型魚:10cm未満、大型魚:20cm未満と定義付けします。
初めに水量の目安として、小型魚:10L/匹、中型魚:40L/匹、大型魚:100L/匹と考えて下さい。
では、具体的に60cm規格水槽では、
水量:約54L=中型魚1匹:40L+小型魚1~2匹:14L
90cm×45cm×45cm水槽では、
水量:約160L=大型魚1匹:100L+中型魚1匹:40L+小型魚2匹:20L
もしくは、
水量:約160L=中型魚3匹:120L+小型魚4匹:40L
となります。
上記の数量よりも多くの魚を入れてしまうと「水質の悪化=濾過不足」によって発病を起こしやすくなり、発症と投薬を繰返してしまう場合が多いようです。
また、上記で定義付けした濾過槽でなく、外部式パワーフィルターや上部式濾過槽の場合は、更に数量を抑える必要があります。
上手に飼育する為には、無理の無い数量を守って飼育されてみて下さい。


(2)後住者の同居
水槽へ新しい魚を入れた時に、先住者の魚から攻撃を受けたことがありませんか?
魚は縄張り意識が強いので、自分の領域に他魚の侵入を防御する極自然な習性です。
但し、アクアリウムの世界では、仲良く同居させての長期飼育が目的であるものの、同居が上手くいかずに悩んでいる人も少なくありません。
一般的に魚の相性とも言われていますが、実際には魚の習性を考えずに同居させてしまう為、当然にイジメが起こり得る状態を作ってしまっている場合の方が多いようです。
では、どのようにすれば上手く同居させることができるのか。その具体的な方法を紹介します。
当方では幾度も後住者を受け入れてきましたが、殆どの魚を問題なく同居可能にしてきています。
当方では後住者を受け入れる際、先住者全ての魚を本体水槽から小さい水槽に移し、同時にその水槽へ後住者を投入しています。
この方法は慣れない環境且つ、縄張り作りが出来ない狭いスペースに先住者と後住者を強制的に同居させる事によって、調和を図ることを目的としています。
この状態で約半日過ごさせた後に飼育水槽へ戻しますと、殆どの先住者と後住者は上手く馴染んでくれるようになります。
但し、後住者は先住者からの攻撃は受けないものの、後住者が畏縮してストレスが蓄積し自ら体調を崩してしまう場合が稀にありますが、 このような場合は、後住者を早めに隔離し、体調が回復した時点で再度同じ作業をおこないます。
当方でもこの作業を怠って単純に後住者を飼育水槽へ入れてしまうと、当然に先住者から激しい攻撃を受けてしまいます。


(3)発病対策
海水魚を飼育する上で、悩まされるもののひとつとして病気があります。
この病気のなかでも白点病の発症が最も多く、一般的に発症後は硫酸銅やGFGの投薬による早期の治療が必要と言われています。
そもそも白点病の発症原因は、水質悪化や水温低下など飼育環境の変化によって体調を崩した魚に白点虫が寄生するもので、濾過容量不足など飼育システムが不適切であったり、管理不充分な水槽に繰返し発生する傾向があります。
そのような水槽では、投薬治療によって一時的に症状が抑えられても一定期間内に再発は免れることはできません。
従いまして、白点病の発症があった場合は、投薬治療を主体におこなうのではなく、メンテナンス方法の見直しや濾過を適切な容量にするなど、飼育システムの改善が必要となります。
当方では濾過機能を重要視する現在の飼育スタイル後、白点病の発症は年に一回有るか否かで、仮に発症しても投薬など手を加えることなく自然に完治しています。
上記のことからも、白点病の発症は人為的なものであり、発症と投薬治療を繰返している水槽では早期の改善が要求されます。


(4)飼育水の濁り
今まで幾つかの水槽を拝見してきましたが、飼育水に濁りや黄ばみが発生している水槽を見かけることがありました。
その共通点として生物濾過量と生体数のバランスもさることながら、物理濾過に原因があるようです。
外部式濾過の場合は特に物理濾過の形成がなされていない為、飼育水が白濁するケースを多く見受けます。
また、オーバーフロー水槽でも、物理濾過のウールマット量が不充分であったり、ウールが水没していると飼育排水がウールを避け、不純物などが直接濾過槽に流れ込んでしまいます。濾材に目詰まりが多い濾過槽もこれが原因です。
上記内容で白濁を除去する為に活性炭を使用する事が多いようですが、活性炭は濁りの吸収には絶大な効果を発揮するものの、飼育水に必要な海水に含まれるミネラル類までもを吸収(投薬の際は薬の成分も吸収)してしまい、飼育者の都合が良い様に不要なものだけを吸収することはできません。
また、飼育水の白濁は物理濾過を含め濾過機能不調の現れであり、その濾過の不調サインを活性炭によって強制的に抜き取ってしまうと濾過が健全であるかを診断できなくなってしまいます。
その為、活性炭の投入は良好な飼育水を維持する上で弊害が伴っていると私は判断しています。
従って、物理濾過は完全にドライの形状且つ、ウールマットは2重3重に敷き込み、不純物は全て物理濾過内で濾し取るようにする必要があります。
濾材容量の確保とドライ形状の物理濾過など飼育システムが確立されている水槽、また定期的なメンテナンスが行き届いている水槽では、常時透明クリアーな飼育水が維持できているので活性炭を投入する必要がありません。
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