〔PHOTO〕Gettyimages

ドイツ人記者が驚いた日本の「自粛警察」

規則違反者への憎悪
本記事は、2020年6月9日にドイツのオンライン紙『ツァイト・オンライン(ZEIT ONLINE)』に掲載されたフェリックス・リル(Felix Lill)執筆の記事「日本:規則違反者への憎悪(Japan: Hass auf die Regelbrecher)」を、本人の了解を得て翻訳したものである(翻訳:西村健佑)。

コロナ危機は、一部の人々の間ですでに克服されたと考えられていた社会のある側面を露呈させた。専門家の観察によると、日本では人種差別と並んでファシズムの兆候が生じている。

パチンコ店に響く怒号

「営業をやめろ!」「家に帰れ!」と叫ぶ声が入口の前で響く。10人、もしくは20人ほどの男たちが日本のパチンコ店の前に集まり、パンデミックの最中でもパチンコをしようと並んでいる客たちを怒鳴りつける。

「我慢はできません」と列にいたギャンブル依存症らしい女性が答える。「だから鼻までちゃんとマスクしてるでしょ!」と彼女が言うと、「出ていけ!」と返される。「出ていけ日本から!」。

〔PHOTO〕iStock
 

その場に満ちているのは、怒気を帯びたこれ見よがしの正義感、そして規則を守らないように見える人たちへの憎悪だ。

法と秩序を重んじるこの種の行為は「自粛警察」と呼ばれ、日本では最近くり返し報道されている。その担い手は本当の警察ではなく、普通の市民であって、コロナ危機の最中に告知された規則を遵守させるべく、自ら活動する人たちだ。