【お金で損する人・得する人】手を挙げないともらい損ねるかも コロナ支援で受け取れるお金
新型コロナウイルス感染症に伴う経済危機により、様々な施策が発表されています。たくさんありすぎて、混乱している人もいるでしょう。今回は、有名なのにまだ受け取っている人が少ない給付金制度から知られていないけれども役立つ制度まで様々な制度をお伝えいたします。申請の必要な制度は自分から手を挙げないともらい損ねてしまいますので注意してください。
■1人10万円の特別定額給付金
すでに受け取った人もいるかもしれません。日本中で話題になった特別定額給付金です。当初は収入の制約などを設ける予定でしたが、一律10万円配布に変更となりました。マイナンバーカードを使ったオンライン申請と郵送による申請と経路が異なり混乱しました。郵送申請のみの受付に変更した自治体もあるようです。自治体が手続きをする関係で、受付開始の早い地域と遅い地域が出ていますが、申請すれば全員もれなく受け取れる予定です。焦らず手続きを進めましょう。申請期限が申請受付開始日から3カ月と指定されていますので、ほったらかしにしないよう気をつけましょう。
2020年7月からはマイナンバーカード利用促進のためのマイナポイントの受付が始まりますので、この機会にマイナンバーカードを申請してはいかがでしょう。マイナンバーカードの発行手続きはスマホだけで簡単に申請できます。申請から発行まで1~2カ月かかります。
子ども1人に1万円 子育て世帯への臨時特別給付金
児童手当を受給している人なら申請せずに受け取ることができるお金です。児童1人あたり1万円を住まいの自治体から支給します。給付金の申請手続きは不要で、児童手当の受け取り口座に対して支払われます。何もせず待っていれば支払われるのが、10万円の特別定額給付金との違いです。支払いスケジュールは自治体によって異なりますので、気になる人はお住まいの市区町村に問い合わせましょう。特別定額給付金10万円と合わせれば、児童1人あたり11万円受取ることができます。
■最大80万円の生活資金貸付
各都道府県の社会福祉協議会で実施している貸付です。新型コロナウイルス感染症の影響による休業や失業などにより生活費で悩んでいる人は是非問い合わせてください。
(1)緊急小口資金
休業等により収入が減少し、緊急かつ一時的な生活維持のためにお金を必要とする世帯が対象です。学校の休業、個人事業者の場合は20万円以内、それ以外の場合は10万円以内の貸付となります。最長1年の返済据置があり、無利子、無保証人での借入となります。
(2)総合支援資金
生活を立て直すまでの間に必要な資金の貸付です。収入の減少や失業により生活が苦しくなり、日常生活が維持できない世帯が対象です。単身世帯で月15万円以内、2人以上世帯で月20万円以内の貸付で、貸付期間は原則3カ月以内となります。単身世帯では15万円×3カ月=45万円、2人以上世帯では20万円×3カ月=60万円が貸付上限です。こちらも最長1年の返済据置で、無利子、無保証人での借入です。
社会福祉協議会の制度を利用すると、緊急小口資金から20万円、総合支援資金から60万円、合計で最大80万円の資金を借りることができます。申し込みは、市区町村の社会福祉協議会、労働金庫(ろうきん)、取扱郵便局となります。
■家賃が払えない人の住居確保給付金
従来からある自立支援の仕組みですが、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い対象者の範囲が拡大されました。
(1)離職や廃業後2年以内、(2)離職以前は世帯の生計を維持していた、(3)ハローワークでの求職申し込みをしている人を対象として家賃の3カ月分(最長9カ月)を支給する制度です。生活保護申請の水際防止措置としての効果が期待されます。
資産要件があり、東京都であれば単身者50万円、2人世帯78万円、3人世帯100万円以下の預貯金額であることが利用条件となります。
住居を失った人だけでなく、住居を失うおそれがある人も対象となります。住居を失うおそれとありますが、家賃滞納が要件ではないので危機的な状況に陥る前に活用できる制度です。
手持ち資金が少なく、収入がなければもらえるように思えますが、肝心なことはハローワークで職探しをする必要がある点です。就労意欲のある人に対する経済的支援です。
■企業向けの小学校休業等助成金
小学校等が新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業し、子どもの保護者が休業になった場合の有給休暇に対して勤務先に支給されます。従来1日8%2C333円でしたが、令和2年4月1日以降の休業については、支給上限額が15%2C000円に増額されました。適用期間は令和2年9月30日まで、申請期間は令和2年12月28日までとなります。
■個人事業者・フリーランス向けの小学校休業等対応支援金
前述の企業向けと名前が酷似していますが、こちらの施策は個人事業者向けとなります。子供の学校の臨時休業に伴い、保護者が仕事に就業できない場合に支給されます。従来1日4%2C100円でしたが、令和2年4月1日以降の休業については、支給上限が7%2C500円に増額されました。適用期間は令和2年9月30日まで、申請期間は令和2年12月28日までとなります。
■企業主導型ベビーシッター利用者支援事業
小学校等が休校になった場合に、保護者が休業できず、放課後児童クラブ(学童保育等)も利用できずにベビーシッターを利用する場合の補助金です。従来1日2%2C200円(チケット1枚分)の利用まででしたが、1日11%2C000円分(チケット5枚分)利用まで増額となります。1カ月の上限利用枚数は24枚から120枚に増加しています。企業にお勤めの方は、勤務先を通じて利用します。個人事業主の方は全国保育サービス協会から委託を受けた団体を通じての利用となります。
■社会保険料、公共料金等の支払い猶予
社会保険や公共料金の支払いについても、支払い猶予、免除などができる可能性があります。
(1)電気・ガス・電話料金、NHK受信料の支払い猶予
(2)国税、地方税の納税猶予
(3)国民健康保険料、国民年金保険料、後期高齢者医療制度保険料、介護保険料の減免
(※上下水道、公営住宅の家賃支払いなどは、行政から支払い猶予などの要請が出ていますので、連絡し交渉してみるといいでしょう)
■個人事業主・フリーランスで仕事をしている人には
セーフティネットで見逃されがちな、個人事業主やフリーランスの人向けには、金融機関からの支援や公的な給付金もありますので、対象となる人は確認してください。
・政府系金融機関からの実質無利子・無担保融資
・民間金融機関からの実質無利子・無担保融資
・個人事業者へ最大100万円の持続化給付金
■仕事をしていない人や求職中の人には
(1)生活困窮者自立支援制度に基づく生活相談
生活困窮者に対する支援です。1就労支援・就労準備支援、2家計改善支援、3住居各給付金(前述)、4一時生活支援などを実施しています。お住まいの市町村に問い合わせる窓口があります。
(2)生活保護
今回の新型コロナウイルス感染症の影響で利用申請が増えているのが生活保護です。働いていない人だけでなく、働いても生活するには収入が足りない人も利用できる可能性があります。ただし、不動産、自動車、一定の預貯金などがある場合は利用ができない場合もあります。お住まいの自治体の福祉事務所が窓口となっています。
沢山ありすぎて読むのが大変ですが、個人向け、企業向け、個人事業・フリーランス向け、学生向け、生活困窮者向け、失業者向けなどもれなくカバーできるように官民一体となって取り組んでいます。まずは、ご自身が対象となるかどうかを確認することから始めてください。なるべく早く連絡して、期限切れとならないよう注意してください。
■高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー。CFP(R)認定者。寿FPコンサルティング株式会社代表取締役。1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。