inserted by FC2 system


ナガバノモウセンゴケ (  D. anglica  )

学  名: Drosera anglica
命 名 等: Huds. (1778)
和 名 等: ナガバノモウセンゴケ /D. アングリカ
分  布: 日本(尾瀬・サロベツ)北半球の温帯高山帯~亜寒帯・ハワイ
栽 培 法: 温帯休眠系ドロセラ
栽培難度: ★★★☆☆
増 殖 法: 播種・葉挿し・株別れ
特記事項: *****


 あやしいコラム
◇ 夏がくれば思い出す、遙かな尾瀬、遠い空 ◇

 日本おいてナガバノモウセンゴケは、唱歌「夏の思い出」で名高い『尾瀬』『北海道のサロベツ原野』の一部にしか自生していないドロセラです。
 高校1年生の夏に尾瀬ヶ原にて初めてこれを見たことが、今に至る食虫植物お馬鹿を生み出す主たる要因と成っています。

 尾瀬に自生するナガバノモウセンゴケは大きく綺麗でまさにナガバノの名に相応しい形態をしています。
 可能であれば是非栽培して見たいのですが、尾瀬は特別天然記念物に指定されていますので、そこに自生する動植物はおろか小石や枯葉も持ち帰ってはいけません。
Drosera anglica
◇ 冷房は必要不可欠では無い ◇

 ナガバノモウセンゴケは高山とも言える場所に自生するために栽培に当たっては冷房装置等の導入が必要だと思われがちです。
 
 しかし、意外と高温耐性があり平地で充分栽培が出来ます。 
 コツは芽出しから休眠芽になるまで充分に日に当てることで、温度上昇を気にして日照不足で栽培する方が夏越し出来ないことが多くなります。
 
 休眠芽を作る時期は産地によって違いがあり、8月早々には休眠してしまうもの、11月ぐらいまで寝ないものなどがあり、特にハワイ産などは休眠しない傾向が強いのである程度保護してやると1年中葉を茂らせたりします。
Drosera anglica
◇ 増殖は結構大変 ◇

 5~7月に5枚花弁の白い花を咲かせ、種子も良く実るのですが、開花期に雨が多いと結実不良を起こす傾向にあります。
 
 また種子は弱い低温感知の休眠性を持っており、取り蒔きをしても半数ぐらいが翌春以降の発芽になったりします。
 種子に2ヶ月ぐらい湿低温処理を施すと発芽率が向上しますので、発芽率を向上させたい人はお試しを。
 
 葉挿しは5月頃の元気な葉を用いると失敗が少ないです。
 ナガバノモウセンゴケは捕虫部から不定芽を出すので葉の表を上にして、浅くミズゴケに埋め込み、日の当たらない場所で管理すると良いでしょう。
Drosera anglica

 タイプ・産地等別の解説
<欧州産のジャイアント系統>

 2007年にチェコのベストよりの輸入種子より発芽。
 
 当時、輸入により入手できたナガバノモウセンゴケの中で最も葉の捕虫部が長く、立派になる系統です。
 
 日本より遙かに高緯度(寒冷地)の産出ではありますが、他のナガバノモウセンゴケと同様に高温対策をするより日照を確保した方が良く育ちます。
 難点は開花時期が梅雨時になり、雨に打たれると種子の結実が悪くなることです。
 
 2011年現在、水切れ事故で枯らしてしました。
Drosera anglica
<北海道サロベツ産>

 国産のナガバノモウセンゴケとしてわずかに流通しています。
 尾瀬のものと比較するとずっと小型で捕虫部も短く、ナガエノモウセンゴケの葉数が少ないものとかサジバノモウセンゴケとかの様な印象があります。
 栽培上も外国産より繊細で高温対策が必要な感じがします。出来れば腰水が溜水であるより流水のほうが良いのではないでしょうか。
Drosera anglica
<USAハワイ産>

 ナガバノモウセンゴケは北半球の涼しい地方に生育する植物ですが、温暖なハワイにも隔絶分布しています。
 北アメリカの自生地とハワイの間を往復する渡り鳥がおり、それが種子を運んだモノと考えられています。
 
 ハワイ産のアングリカは生理的に休眠性が衰えており、冬芽を作らないことがありますので注意が必要です。
 冬芽を作らない場合はやや加温して栽培しないと枯れてしまうので、初めのうちは加温栽培した方が無難です。
Drosera anglica
<スロバキア産>

 かなり以前にHM:Khelljuhg君より分譲してもらったのですが、なかなか増えてくれません。
 ウチの個体は、葉挿しにやや難があり、何度も試されて縮こまってしまっています。
 耐暑のため早い時期から休眠芽を形成するので大きくするのも大変な系統です。
Drosera anglica
<ビオパルコ販売>

 今は無き愛知県の食虫植物通販業者「ビオパルコ」で販売していたナガバノモウセンゴケで、HM:黒猫君から強奪しました。
 
 このD.アングリカは冬芽を作らないことが多々ありました。
 恐らくですが無菌培養による増殖の結果、生体リズムが変化し休眠性が衰えていたものと考えられます。
 
 このナガバノモウセンゴケの産出先は不明です。
 当時、ビオパルコに問い合わせてもこのナガバノモウセンゴケの出自は教えてくれず、どうも販売元も判ってはいないようでした。
 
 「ビオパルコ」の親会社は、食虫植物の世界では重鎮であった豊田氏(故人)が社長をしていた会社で、豊田氏のコレクションを引き継いだ形で培養を行なっていました。そこでラベル落ちがあったのではと推察しています。
 
 私の栽培経験上ではサロベツ産が最も似通っています。
 
 2011年現在、水切れ事故で枯らしてしました。誰か維持している人いないでしょうか?
Drosera anglica


救仁郷さんのあやしげな世界
inserted by FC2 system