モウセンゴケ (D. rotundifolia) ・ ナガバノモウセンゴケ (D. anglica) を代表格とする 冬季にやや堅い休眠芽を作るドロセラグループです。
栽培に当たっては冬の管理を軽減できるという最大のメリットがありますが、それは同時に冬には全く鑑賞性が無いという欠点でもあります。
温帯休眠系ドロセラはもともと寒地性のドロセラの内の耐暑性に富むものが 温帯に自生していると考えて良いので、ステップアップ入門編に記載のドロセラを除き、盛夏には一工夫が必要です。
残りの種類の栽培はやや難度が高く、初級編に記載のドロセラをある程度栽培してから挑戦することをお勧めします。
自生地を想像してみて下さい。
やや高原で、冷涼な空気と冷たい水が流れており、春は遅く・短い夏は日中暑くても夜間は冷え込み・ 秋は早く訪れ・冬は雪に閉ざされる湿原。
そう尾瀬ヶ原のような栽培環境が作れれば理想的です。
(a)栽培環境(温室等)
温室やフレーム・ワーディンケースなど用意しなくても栽培可能でありますが、最低限、水切れ・湿度不足を起こさない様な工夫が必要です。
特に入門者は、より失敗しにくいように栽培用の容器を用意することをお勧めします。小規模の場合にはプラやガラスの水槽を、やや多めに栽培する人は衣装ケースなどが便利です。
なお、容器には専用のフタ、またはビニール等でフタが出来るようにすることが、冬季の空中湿度の保持のため必要です。
(b)植え込み容器(鉢等)
3号鉢ぐらいが使い勝手が宜しいと思います。材質は素焼鉢でも駄温鉢でもプラでもOK。
根は用土に固定する程度の役割しかないので普通鉢でも平鉢でもかまいません。
深鉢は特別な理由が無い限りは用いません。
(c)植え込み材料(用土等)
入門者の方は取り敢えず市販の乾燥ミズゴケを水で戻したものを使用するのがベターです。
管理人は乾燥ミズゴケも使用しますが、生ミズゴケベースの用土とココピート主体の用土も用いています。
詳しくはコラム:『自己満足の用土作り』に記載します。
<腰水循環の模式図>
用具は熱帯魚店やホームセンターで!
(d)日常管理
温度以外の管理は温帯常緑系ドロセラと変わりなく、ドロセラを植えた鉢を並べ、ケースの底から水を2~3cm張り、腰水(こしみず)にします。
水切れを起こさないように蒸発分は常に足し水をして下さい。
ケースは明るい場所におきますが、夏場は遮光した方が良いドロセラもあります。
温度管理としては、遮光や腰水の掛け流しの他に腰水循環やクーラーの利用が考えられます。
管理人の栽培経験では必ずクーラー使わなければダメということはありませんが、吃驚するぐらい栽培が容易になります。
使用上の簡単な注意を下記しましょう。
<クーラー(エアコン)を用いた栽培>
クーラー(エアコン)を用い、日中28℃以下・夜間22℃以下ぐらいに温度差が付けられれば理想的ですが、各自設備とサイフに御相談の上、設定して下さい。
クーラー(エアコン)は原則的に除湿装置なので、 クーラー(エアコン)の効いた屋内に簡易温室やフレーム・ワーディンケースなどをおく場合は保湿を、クーラー(エアコン)の風が直接植物に当たる場合は加湿する必要があります。
<クーラー(観賞魚用)を用いた栽培>
クーラー(観賞魚用)は水を冷やす様にできています。
従って腰水を冷やしながら循環する方法とミスティング装置(霧化装置)を繋いで空気を冷やす方法で利用します。
各自工夫して下さい。
(e)冬芽の管理
冬芽になったら、乾燥した空気に触れないよう保護してやります。
土中湿度もあまり高くない方が良く、温度変化で用土が傷む恐れがあるので日に当てない方が良いでしょう。
いっそのこと、掘り出してミズゴケにくるんで冷蔵庫保管が良いのかも知れません
温帯休眠系ドロセラグループの基本的な栽培方法
原則、管理人が栽培したことがあるドロセラ、または関心が深いドロセラを中心に解説しています。
違うルートがありましたら情報としてお教えください。
(a)入門編
入門種が栽培できないのであればドロセラ栽培の基本を理解していないと言えますので他の温帯休眠系ドロセラを栽培することすら出来ません。
「
初めて目にする人の為のモウセンゴケ類 栽培入門」のページにに立ち戻り、熟読をお勧めします。
・
イトバモウセンゴケ (
D. filiformis )
夏の暑さに強く、種子による繁殖力も抜群。温度管理に一切気を使う必要がありません。
むしろその旺盛な繁殖力により、栽培場の雑草と化す恐れがあるくらいですが、特徴的なドロセラなので他の鉢に侵食しても簡単に区別が着きますので安心してください。
温帯休眠系の入門種にはもう1種、
ナガエノモウセンゴケ (
D. intermedia )という名の優良種があったのですが、平成28年10月から
『特定外来生物』に指定されてしまい、一般には栽培不可となってしまいました。
(b)初級編
以下の2種を初級種と記載することに異論も多々あるでしょうが、入手難度は別として栽培そのものはさほど難度が高くありません。
もちろん産地による難度の差はあります。詳しく各々のページを参照して下さい。
・
ナガバノモウセンゴケ (
D. anglica )
・
サジバモウセンゴケ (
D. ×obovada )
更に追記するとこのクラスから「葉挿し」という増殖技法をマスターする必要があります。
(c)中級編
モウセンゴケは北半球全域に分布する食虫植物で有りながら栽培すると、栽培家の力量・栽培環境に因って凄く難物であったり、驚くほど簡単だったりする謎のドロセラであります。
・
モウセンゴケ (
D. rotundifolia )
自分の栽培環境に慣れると急速に栽培が楽になりますが、画一的な栽培方法では中々そこに辿り着きません。
試行錯誤をする引き出しを沢山持ってから栽培した方が良いと思います。
(d)上級(マニア)編
上級種とは・・・たかがモウセンゴケの為にクーラーを用意出来るのか・・・が問われるドロセラなのです。
・
D.リネアリス (
D. linearis )
普通に栽培できるよ・・・という方も多いでしょうが、我が家がある静岡県袋井市では夏越しに成功したことがありません。
当地の気候ではクーラー等で温度管理をしない限り栽培できないと言うのが、現時点での結論となっています。
温帯休眠系ドロセラグループのステップアップ