先日、現役の内閣審議官と話す機会があり、このエリート官僚に前々から聞きたかった疑問をぶつけた。四半世紀前、バブル経済を寄ってたかって潰し、長い不況を招いたことについて、役人に「間違った政策をした」という自覚があるのだろうか。そしてもうひとつ、当時、土地高騰で家を建てられなくなった役人のやっかみにより、土地価格が強引に下げられたのではないか。
実は、バブルが頂点に達するころ、私は銀座の料亭の美人女将(おかみ)の紹介で某内閣審議官(今回の人とは別人。その後、ある内閣の官房副長官を務めた)とよく飲んでいた。
あるとき、彼が「ナベさんさ、日本の土地すべてに値段をつけたら、その金額でアメリカが10個買えるよ。これ、日本人にとっていい話なの? 土地の価格は半分に下げなきゃいけないんじゃないか」と強い口調で語っていたことを思い出す。
その直後の1990年代初頭、日銀は公定歩合を短期間で4%も引き上げ、大蔵省(現財務省)も金融機関に総量規制を通達し、不動産や建築業に融資させないようにした。さらに、政府は地価税を創設した。その中の土地保有税は、遊んでいる土地にかけたので、私たちは物置を建てたりした。しかし、間に合わない。
この強引な土地価格下落政策により、予想以上の景気後退を招いた。当時、自民党の幹部が私に「いったん土地を半分に下げ、それから10年の間に毎年5%ずつ上げる。だから、日本の景気は悪くならない」と断言していたが、そうはならなかった。
不動産会社は潰れ、わが麻布自動車グループが融資を受けた不動産物件も、担保割れで不良債権になった。私の本拠地の麻布十番の土地も、銀行は一時、坪5000万円まで融資してくれた。「半分に下げる」政策なら、2500万円までは貸せるはず。しかし、500万までしか貸してくれなかった。10分の1だ。