「卒業見込み証明書」発行拒み系列校へ進学強要した日本語学校【コロナ禍が生む「嫌日外国人」】
2020年06月20日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL
A校に証明書の発行を拒否されたクオン君 (C)日刊ゲンダイ
【コロナ禍が生む「嫌日外国人」】#5
宇都宮市にある日本語学校「A校」。この学校の関係者から今年1月、筆者にメールが届いた。留学生たちがA校に進学や就職を妨害されているのだという。やり方はこうだ。
日本語学校の留学生が専門学校や大学へ進学、もしくは就職する際は、学校が発行する「卒業見込み証明書」「成績・出席証明書」が必要となる。ところがA校はそうした証明書の発行を拒み、系列の専門学校への内部進学を強要しているというのだ。
「入管や警察に駆け込んだ留学生もいるが、助けてもらえなかった。何とかしてほしい」
関係者のメールは悲痛な叫びに満ちていた。筆者はA校の留学生たちと会うことにした。
そのひとりであるベトナム人のクオン君(25)は2018年7月、A校に留学するため来日した。入学したのは今年3月までの1年9カ月のコースである。
卒業が半年後に迫った19年10月、A校はクオン君らに「卒業試験」を実施した。日本語学校は卒業しても学位を得られないため、本来は「卒業試験」など必要ない。にもかかわらず試験を行い、学校側が定めた合格点に達しなかった留学生には「卒業見込み証明書」を発行しない、と言い出した。クオン君が言う。
「しかも、もともと40点だった合格点が試験後に突然60点に引き上げられました」
■入管も警察も知らぬふり
結果、クオン君を含む多くの留学生が「不合格」とされ、証明書がもらえなくなった。証明書がなくては大学や専門学校に願書を提出できないし、就職に必要なビザ変更の手続きも進められない。
留学生たちはA校に証明書を発行してくれるよう求めたが、拒否され続ける。困った留学生たちは、ベトナム人やネパール人など約20人で宇都宮の入管当局に助けを求めた。もともと留学生は、「週28時間」を超える違法就労への後ろめたさから、入管には近寄りたがらない。実際、A校の留学生にも違法就労していた者はいただろう。それでも入管に駆け込むほど、彼らは追い込まれていた。
だが、入管担当者の対応は信じ難いものだった。担当者は「証明書がなくても入れる学校を探したら」と指南したというのだ。証明書なしで入学を認める大学などほとんどない。対応が事実であれば、入管はA校の暴挙を容認しているに等しい。
希望していた就職がかなわず、交番に駆け込んだベトナム人留学生もいた。しかし警察も何もしてくれなかった。もはや留学生たちは助けを求める当てがない。内部進学に応じるか、母国へ帰国するしか道がなくなったのだ。(つづく)
(出井康博/ジャーナリスト)