pixivは2020年3月30日付けでプライバシーポリシーを改定しました。

詳細

pixivへようこそ

この作品 「,」 は「*」等のタグがつけられた作品です。

いこさんとじんさんが互いの恋人の顔がいいと話しているだけのものを三つ詰めました。...

糸村

,

糸村

2020年1月8日 06:33
いこさんとじんさんが互いの恋人の顔がいいと話しているだけのものを三つ詰めました。二つ目の作品さらっと年齢操作してます(二人とも成人済)arjnとikokです
『ポテトは冷めた』
「いや、そのね。起き抜けにさ、隣に顔がいい奴がいると、すげーびっくりするんだよ……」
三門市にある、とあるカラオケボックス。その一室にて迅と生駒はポテトが乗ったテーブルを挟んで向かい合っていた。迅は深刻そのものといった顔で肘を付けて、組んだ両手に顎を乗せており、生駒の方は手を握った状態で膝の上に乗せている。
「いきなり、どないしてん、迅。まあ、分からんでもないけど」
「普段っていうか、長期間突き合わせてきた顔なはずなのに初対面の時みたいな気分になるから不思議でさー」
「まあ、寝起きは色々ボケてるからしゃあないな。話長くなりそうやし、ポテト食いながら聞かせてもろてもええか?」
「勿論。こっちの都合で付き合ってもらってるし、いくらでも食べてて。相槌を打つだけで構わない」
「ん。お前のその話を聞いてると、毎回『美人は三日で飽きる』っちゅう言葉は一体どんな人が考えたんやろって思うわ」
「それね~。相当特殊な環境にいない限り思いつかないよね。現にアイツの顔をしょっちゅう見てるはずの市民の皆様方は全然飽きてないのに」
「うわっ、説得力のある例えやん。……話題ズレとるな。戻してええぞ」
「はいはい。で、続きなんだけどさ、脳がバグってる時に見る整った顔は本当に神経に悪いんだよ」
「オマケに恋人補正マシマシやもんな」
「そうだね。まあ、あいつの場合マジもんのイケメンだからさ~。目が潰れる」
「俺も起きる度に驚いとるで。こんなイケメンが自分の恋人なのかって」
「生駒っちもそうなるのかー。まあ、好きなのは顔だけじゃないよ? でも、造形整ってるからどうしても目につくし、やっぱり綺麗なものには抗えないんだよ」
「まあな。綺麗なものは何度眺めても綺麗やし、それを見る度実感するからな。やっぱり綺麗なのはそれだけで価値があるわ」
「聞いてると『綺麗』って単語がゲシュタルト崩壊を起こしそうだよ」
「でもこんなに語れるのは、相手が好きだからこそなんやけどな」
「……そうだね。うん。好きなんだなー。アイツのこと」
「せやろ? そんでなー」
恋する青年達の話は尽きることがなく、終了時間となるまで、沈黙が訪れることはなかった。

『どんちゃん騒ぎと被害者の苦情』
「やっほー、かきざきー」
「ざっきー来てくれてあんがとなー」
何だこの惨状は。居酒屋にて柿崎は酒が入っていたと思われるグラスをテーブルに山ほど積み上げ、顔を真っ赤にして笑う同僚二人に心底呆れていた。
同い年の隊員の中でも、一足先に成人した迅と生駒はめっぽう酒に弱かったのだ。なのに二人は一度宴会を始めると、節制という言葉を綺麗さっぱり忘れ去ってしまうらしい。そのため、柿崎は毎回後始末をする羽目になっている。何故自分を呼ぶのかと理由を尋ねると、「弓場ちゃんだと怒られるし、嵐山は論外。となると、選択肢は同い年で尚且つ呆れつつも処理をしてくれる柿崎しか残されていない」との事で。俺を都合のいい奴だと思うなよと叫びたくなるが、酔っ払い共を捨て置く訳にもいかないので、つい世話をしてしまう。これを恐らく見抜かれているだろうことは想像に難くない。まさしく、『さもありなん』と言えてしまう理屈である。
近くにいた店員を呼び、二人分のお冷を頼む。この行為に慣れてしまったのがもの悲しい。それに、この二人は酔うと必ず同じ話題を繰り返すのだ。これが精神衛生上、大変よろしくないもので、自分の中の何かが削れていくのが、はっきりと知覚できる。まだ成人してはいないのでやらないが、それを聴いていると、こちらも酒を煽りたい気分に駆られるのだ。
「ねえ、ざっきー聞いてや~。今日も隠岐がイケメンでな~」
「生駒っちが羨ましい……俺も嵐山の顔見たい」
「あー、じゅんじゅんも顔ええよなー」
「でっしょー!神かなんかが気合い入れて創ったとしか思えないよねー」
「うん。でな、隠岐の顔について聞いて欲しいんやけど」
「えー俺も嵐山の話がしたい」
「なら二人同時に喋ればええんちゃう? なあ、柿崎」
「俺は聖徳太子じゃないから聞き取れねえよ」
「えー、本気出せばイケるって」
毎度の事ながら酔っ払い特有のウザ絡みは辟易する。それが恋人の惚気から由来するならば尚更。アイツの瞳が美しいだとか、あの睫毛がたまらないだの聞いてるだけで口の中に砂糖と蜂蜜を同時に突っ込まれた気分になる。そして、呆れて「お前ら本当に恋人の顔が好きなんだな」と言うと、「たまたま好きになった奴に自分好みの顔面がひっついていただけだ」と二人同時に言うもんだから、何だか酷く羨ましいような、よくわからない感情に囚われてしまうのだ。

『未知との邂逅』
「水上君、本当にごめん……」
 その日、生駒隊作戦室にて、誠に奇妙な光景が繰り広げられていた。本部へ来るのは珍しい、所謂『レアキャラ』であるはずの、迅悠一が生駒と何やら話し込んでおり、聞こえてきたその内容が、何と言うか、公共の場ではとてもお伝えできないものであったのだ。衝撃のあまり、その場から立ち去る事も考えられなかった水上はその場で棒立ちしてしまい、それに二人が気付いて、今である。迅は「読み逃した……」という一言の後、水上に対する詫びを口にして、深刻そのものといった顔付きで項垂れている。生駒の方はと言うと、特にいつもと変わりなく、「よお、水上」と言ったきり一旦黙っている。アンタはもっと慌ててくれと、内心で水上はツッコミを入れたところで、「生駒っちはもっと動揺してもいいと思うよ」と迅がぼそりと口にした。その偶然に少々不思議な心地がしつつも、共感を示すように水上は首肯した。それに構わず、生駒はしれっと、「だって水上は俺が隠岐と付き合ってるの知っとるやろ」などと宣ってみせる。
「それとこれとは話が別ですよ」
 呆れた声音と疲れきった表情を乗せて呟く。一連のやりとりを見る観客と化していた迅は、それだけで普段の状況を察したのか「お疲れ様」と言いたげな生暖かい目を向けてきた。労りありがとうございます。迅にも聞きたい事があったので、そちらに視線を向けると、その目はどこか飄々としたものに変化した。凄まじい落差だと感じたところで、瞳の奥が揺れているのが見え、まだ回復し切っていない事を理解する。
「迅さんって、今みたいな話題をここでイコさんと話した事があるんですか?」
「……二回ぐらい。生駒隊の誰かしらが来る未来が見えたら退散してたよ」
 なるほど。未来視はそのように活用できるのかと感心した。バレるリスクと天秤にかけても、話をする方に傾いたのか。それだけ、この話を共有したいと思うほど、フラストレーションが溜まっていたという事だろう。
「……そんなに話したかったんですね」
「いやー、会える機会がな。ちいと少なめだからよく、『顔が見たいよ、テレビ越しじゃなくて実物のやつ!!』って叫んどるぞ」
「生駒っちお願いだからちょっと黙って」
 生駒の発した衝撃の発言を食い気味に制した迅は再び項垂れ、頭を抱えていた。そのせいで髪が乱れている。うちの隊長がすみませんと、心の中で詫びを入れた。短い時間の間にも、迅のイメージが、ガラリと一新されていく。たとえ、未来視というとんでもない能力を持っていたとしても、この人も生駒と同い年の一人の青年であるのだと今更ながら水上は実感した。微笑ましいなと、子を持つ親のような境地に達していたが、突如、迅は下を向いていた顔を正面に戻し、髪を整えて、腰を上げてみせた。
「もう帰る。ごめん、水上君。この件は借り一つって事で内緒にしてほしい」
「別に話す意味ないですし。気にせんといてください」
「……ありがとう」
 そう言って、迅は緩く微笑んだ。
「なんや、迅。もう帰るのか」
「流石に細井さんまで来たら不味いでしょ。後それから、もう二度とここであの手の話題は喋らないから」
「まあ、その方がええか。また話したくなったら連絡してや」
「はいはい、じゃあね。また今度」
「おう」
 生駒と気安いやりとりを交わした後、迅は打って変わって、颯爽と作戦室から去っていった。嵐みたいやったなと、今の出来事を振り返って、水上は溜め息をつき、日常へと戻った。
フィードバックを送る