帝国データバンクは、5月18日から31日にかけて「新型コロナウイルス感染症に対する企業の見解」について調査を実施し、その結果を6月9日に発表した。調査対象は全国の企業2万3,675社で、有効回答企業数は1万1,979社。

　新型コロナ感染症による自社の業績への影響を聞くと、「すでにマイナスの影響がある」が62.8％、「今後マイナスの影響がある」が23.3％で86.1％がマイナスの影響があると回答した。「影響はない」が6.5％、「プラスの影響がある」が2.8％、「分からない」が4.6％だった。

　業界別で見ると、「マイナスの影響がある（すでにマイナスの影響がある・今後マイナスの影響がある・合計）」と回答した企業の割合は「卸売」が88.4％で最も高く、以下、「不動産」88.3％、「運輸・倉庫」87.2％、「製造」86.7％の順で続き、「金融」が78.2％で最も低かった。

　業種別では「家具類小売」が3カ月連続で100％、「旅館・ホテル」が2カ月連続で100％となり、大きな影響を受けていた。以下、「繊維・繊維製品・服飾品小売」97.1％、「娯楽サービス」96.8％、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」96.7％、「飲食店」96.4％などが続いた。

　「プラスの影響がある」と見込む企業は2.8％で、2月調査時点の1.7％からわずかながら増加。業界別では「小売」が8.0％で最も高く、そのうち5.8％はすでにプラスの影響が表れている。以下、「金融」3.8％、「運輸・倉庫」3.7％、「製造」3.3％、「卸売」3.2％が続いた。

　業種別ではスーパーマーケットなどの「各種商品小売」が31.3％で最も高かった。これに「飲食料品小売」20.3％、「飲食料品・飼料製造」11.6％、「飲食料品卸売」6.8％、「人材派遣・紹介」「パルプ・紙・紙加工品製造」がともに5.3％で続いている。企業からは「家庭内の食事回数が増えたことでインスタント食品やインスタント飲料の受注が増えている」（調味料製造・岐阜県）や「既存設備を利用して除菌剤、除菌シート、除菌シールドの製造販売を開始した」（環式中間物等製造・京都府）などのコメントがあった。

　また、自社で実施もしくは検討している施策を聞くと、「政府系金融機関による特別融資の利用」が40.6％で最も多く、以下、「雇用調整助成金の利用」39.8％、「民間金融機関への融資相談」38.0％、「テレワーク設備などIT投資の推進」36.6％が続いた。

　一方、東京商工リサーチは、上場企業が6月8日までに開示した「資金の借入のお知らせ」や決算短信、決算説明資料などで、新型コロナウイルスの対応策として実施した資金調達の開示を集計。「新型コロナ関連 上場企業資金調達状況調査（6月8日時点）」として、その結果を6月9日に発表した。

　資金調達を開示した上場企業は171社で、資金調達の合計金額は9兆6,758億2,000万円だった。最大だったのはトヨタ自動車の1兆2,500億円で、以下、ANAホールディングスの9,500億円、日産自動車の7,125億円、JFEホールディングスの7,000億円、日本製鉄の6,000億円が続いた。

　調達金額の内訳は、「1,000億円以上」が26社（構成比15.2％）で、完成車メーカーのマツダ（3,000億円）や本田技研工業（2,000億円）、SUBARU（1,915億円）、三菱自動車工業（1,620億円）などが含まれている。また「10億円以上100億円未満」は81社（同47.3％）で約半数を占め、このレンジは中堅規模の企業が多く、飲食業や小売業などの業種で短期的な資金需要に対応した調達が目立った。

　また主な資金調達方法として、調達金額上位10社のうち、6社がコミットメントライン（特定融資枠契約）を活用している。

　新型コロナ感染症により多くの企業がマイナスの影響を受ける中、大企業においても資金調達を活発化させるなど、経済活動再開に向けて動き出す企業が増えているようだ。

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