肺には左右それぞれに「肺葉」と呼ばれるブロックがあり、肺の中が仕切られている。大葉性肺炎とはそのブロックのひとつが炎症を起こす病で、肺炎のなかでも一般的なものだ。
「日常的な、過度の飲酒によって、肺の内部が空洞化してしまうケースがあります。さらには、お酒によって肺の組織が次第に壊死して、死に至る肺炎を誘発してしまう危険もあるのです。
もちろん、リスクを抱えているのは飲酒習慣のある人だけではありません。慢性的に運動不足の人は筋力が落ち、免疫力も弱まっています。そうなると、簡単に肺の中へウイルスの侵入を許してしまうのです」(浅草クリニックの内山伸氏)
他にも60歳を超えてからは、唾液や食べ物、胃液などと一緒に細菌が気道に入り込む「誤嚥性肺炎」の危険性がグンと跳ね上がる。
「どんな人でも、雑菌は日常的に口腔内や気管支に入ってくるものです。若いうちは、たとえ菌が体内に入ってきても、それに打ち勝つことができます。
ところが、年齢を重ねるほどに抵抗力が弱まり、すぐに菌に侵されて肺炎にかかってしまいます。加齢によって、食べ物や飲み物を飲み込む筋力も日に日に低下しています。そうなると、さらに誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高まってしまうのです」(新美クリニックの新美岳氏)
肺炎の中でも悲惨なのが、組織が硬く繊維化してしまい、酸素が上手く運べなくなる「間質性肺炎」だ。
間質性肺炎は、原因がはっきりしている他の肺炎とは性質がまったく違う。3章で見た通りウイルス感染でも生じるが、他にも家のほこりやカビ、ペットの毛、羽毛にいたるまで、実に80以上もの誘発要因があると言われている。
つまり、飲酒習慣や運動不足、加齢などの要因がなくても、「普通」に生活を送っているすべての人が、この病にかかりうるのだ。