前出の吉澤氏が語る。
「重度の肺炎を起こすと、全身に酸素が回らなくなり、頭がぼーっとした状態になります。処置が遅れれば、死につながります」
片岡さんのようにもともと健康な人、石田さんのように肺を鍛えていた人であっても、コロナで死の危機に瀕した。逆に言えば、生まれ持った肺が強くない人なら命を失っていただろう。
人の肺は、産まれたときには未熟な状態で、その後の成長に伴って発育し、18歳ごろに完成する。しかし、胎児のときに発育が不十分だったり、幼少期に風邪や喘息をくり返すと、中高年になってから肺の機能が急速に低下する。そうなれば、当然コロナで重症化するリスクも高まる。
生まれ持った肺の強さも、当然、運命を大きく左右する。結局、感染を防ぐ以外に有効な対処法はないのだ。
「主人は大のお酒好きで、毎日ビールを1・5リットル以上、多い日では日本酒を4合以上も飲んでいました。サラリーマン時代から仕事の付き合いも含めて日常的にお酒を飲んでいたし、定年退職してからも晩酌は欠かしませんでした。
自分はとりわけ頑丈で、アルコール耐性もついている。いくらお酒を飲んでも体を壊さない。振り返ってみると、主人はそう過信していた節がありました。その考えこそが、死を招いてしまったのです……」
半年前、突然の肺炎で夫の池田信二さん(仮名、享年73)を喪った妻・素子さん(72歳)は、こう振り返る。