これで説明責任を果たし、政治家として、けじめをつけたと思っているとしたら、心得違いである。
昨年10月、有権者に違法な寄付をした疑いをもたれて経済産業相を辞任して以来、きちんとした説明を拒んできた自民党の菅原一秀衆院議員が、今週ようやく記者会見を開き、一部に公職選挙法に触れる事案があったことを認めた。
公選法は政治家が選挙区内で金品を贈ることを原則禁止している。本人が弔問し、直接渡す香典は認められているが、秘書が代わりに持参したり、通夜の際に故人の枕元に飾る枕花を贈ったりという違法な支出が、昨年までの3年間に年平均30万円前後あったという。
見過ごせないのは、菅原氏が公選法に違反する認識はあったと述べたことだ。違法と知りながら、長年にわたって常習的に繰り返してきた責任は極めて重いと言わざるを得ない。
しかし、菅原氏は離党も議員辞職も否定し、党のオリンピック・パラリンピック東京大会実施本部の本部長代理を辞任したことと、議員歳費の3カ月分を東日本大震災の義援金に寄付したことで責任はとったと強調した。筋違いではないか。
菅原氏には、後援者や同僚議員らにお歳暮やお中元として高級メロンやカニなどを配っていた疑いもある。会見では資料が見つからないと口を濁したが、この8カ月、いったい何をしていたのか。誠実な対応とは到底いえない。
「立法を担う国会の一員として、政治への不信感をこれ以上招かれないように、原点に戻って精進したい」と、菅原氏は語った。であれば、潔く議員の職を辞し、出直すべきである。
それにしても、参院選の結果を受けた、昨年9月の内閣改造は何だったのか。発足からわずか1カ月半の間に、安倍首相が初入閣させた菅原経産相と河井克行法相が、いずれも公選法違反の疑いを指摘され、相次いで辞任に追い込まれた。
その後、首相や党執行部が2人に説明やけじめを強く求めることもなく、今日に至る。そして、河井議員は妻の案里参院議員とともに大がかりな買収容疑で東京地検特捜部に逮捕され、菅原氏も告発され、捜査を受ける身だ。
「適材適所」から程遠く、側近重用が際だった人事の失敗を、改めて首相は突きつけられているといっていい。
閣僚の辞任のたびに、首相は「私に任命責任はある」と繰り返す。その言葉にうそがないなら、野党が求める予算委員会の閉会中審査に応じ、逃げずに疑問に答えるべきだ。
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