連絡事務所爆破 武力挑発は苦境深める

2020年6月20日 08時43分

 北朝鮮が、南北融和の象徴だった共同連絡事務所を爆破した。韓国に対する新たな軍事行動も示唆している。挑発は、自国をいっそうの苦境に追い込むだけだ。これ以上緊張を高めてはならない。
 爆破は、予告からわずか三日で実行に移された。国営メディアが建物が飛び散る瞬間を詳細に報道し、内外にアピールした。周到に準備していたとしか思えない。
 連絡事務所は、北朝鮮の開城に位置する。二〇一八年四月の南北首脳会談で設置に合意し、韓国側が建設費用を負担した。
 何かと対立しがちな南北が、直接向き合って意思疎通する貴重な場所だった。勝手に爆破するのは常識外れの行為だ。
 北朝鮮は、「爆破は始まりにすぎない」として、南北軍事境界線をはさんだ非武装地帯で、兵を増強する動きを見せている。
 さらに韓国に近い金剛山、開城への軍部隊の展開も予告しており、韓国軍は二十四時間態勢で北朝鮮軍の動向を監視している。
 まるで二十年前の南北対決時代に戻ったようだ。北朝鮮は責任を痛感すべきだ。
 韓国大統領府は爆破に関連した北朝鮮の攻撃的な談話について、「無礼で非常識」と批判し、軍事的な挑発には厳しく対処すると表明した。当然だろう。
 一連の韓国批判は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、与正(ヨジョン)党第一副部長が行っている。健康不安を抱える兄の代行として、実績作りをしているとの分析も出ている。
 経済難が深刻化している北朝鮮は、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権と敵対して国内を引き締め、経済援助や制裁緩和を引き出すのが狙いだろう。
 挑発は十一月の米大統領選まで続くとの見方が多い。米国との直接交渉を実現するためだ。
 そもそも今回の対立は、脱北者の団体が韓国側から飛ばした体制批判ビラだったはずだ。
 その後、文大統領が特使派遣を申し入れたが、北朝鮮は「非現実的な提案」として拒絶した。対話を拒否する理由は見当たらない。
 南北間では一五年に、地雷爆発事件をきっかけとして韓国が非武装地帯での宣伝放送を再開したことがある。中止しなければ軍事行動を起こすと北朝鮮が反発したものの韓国は引かず、結局北朝鮮が折れ、事態が収拾された。
 南北融和に向けた文政権の努力は評価したい。しかし、北朝鮮の動きを封じるためにも、当面は関係国と協力しつつ、冷静かつ断固とした姿勢で臨むべきだろう。

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