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 コロナ禍により各地で授業に支障が出るなか、来春の大学入試はほぼ予定通りの日程で実施されることになった。文部科学省と高校・大学などの各団体が協議し、決着した。

 ただし、1月中旬に行われる大学入学共通テストの2週間後に「第2日程」として試験日を設け、休校の影響で勉強が追いつかない現役生は、出願時にそちらを選べるようにした。

 公立高を中心とする校長組織が求めたのは1カ月の繰り延べであり、2週間では十分な救済策とは言えない。しかし大学側にも、試験会場をどう確保するかなど難しい事情があった。受験生をこれ以上中ぶらりんの状態に置くことはできず、間をとる形で結論を出したのは、やむを得ないとみるべきだろう。

 日程確定を受け、文科省は各大学に出題範囲に配慮するよう要請した。共通テストで受験を課す科目を減らす。個別入試では、高3で習うことが多い科目に、どの設問を解答するかを受験生が選べる方式を一部導入する――などを例示している。大学側は前向きに応じてほしい。「日程も範囲も例年通り」で済ませることはできない。

 また個別入試でも、各大学が追試や別日程への振り替え措置を用意することになった。ウイルスに感染して本来の試験を受けられなかった生徒向けの対応だが、共通テスト同様、こちらも学習の遅れた現役生に門戸を開いてはどうか。大学の裁量でできることだ。

 受験生や家庭の不安は試験会場での感染リスクにも向けられている。換気、距離の確保などどんな対策をとるか。専門家の見解を踏まえて決め、その専門家のコメントもあわせて公表する。そんな細やかな対処が求められよう。体調に不安があるという受験生には、追試の用意がある旨を丁寧に説明して、無理をさせないことも大切だ。

 再び感染の波が襲った場合、今度こそ日程の見直しは避けられない。国はもちろん、大学側も推薦入学の枠を広げるなどの備えをしておく必要がある。

 もう一つ、各大学にできる工夫は入学時期の複線化ではないか。帰国子女などに限定せずに秋入学を受け入れている大学は少数ながらある。これが増えれば受験生の選択肢は豊かになり、大学の個性化にも資する。今回検討された9月入学への一斉移行とは違い、社会にも大きな負担はかからない。

 入試は受験生が学校を選ぶ機会でもある。選ばれるために、いま何をすべきか。大学はその問題意識をもち、前例のない事態に見舞われた受験生に寄り添う姿勢を、それぞれの知恵と工夫で見せてもらいたい。

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