政府や報道機関からこれまで聞こえてきたのは、「医療従事者向けに慰労金最大20万円」というフレーズだ。当初は、「定額給付金に上乗せするのかな」と思っていたが、発言元が厚生労働大臣だと分かると、一気に鳥肌が立った。
経済産業省や総務省で社団法人を使った委託事業がやり玉に挙がっているが、厚生労働省は元々地方公共団体を手足のように扱う組織であり、「ははあ、これは地方に丸投げするな」と思っていた。
事態は進み、緊急包括支援交付金という都道府県向け補助金で実施されることが分かり、ついに、個人給付に不慣れな都道府県が事務を担当することが明らかになったのだ。
現在、厚生労働省は大臣答弁のとおり、8月から慰労金を交付させるべく準備していると説明しているが、実施するのは都道府県であって厚生労働省ではない。
しかも、特別定額給付金とは訳が違って、条件が複雑に定められているのだ。
https://www.mhlw.go.jp/content/000640615.pdf
今回厚労省が検討している案は、医療機関が職員の代わりに受領し、医療機関が都道府県にまとめて申請を行い、医療機関の手元に入ったお金を医療機関が職員に給付するというものだ。
はたして、全ての医療機関がそのようなことができるのだろうか。断じて否であろう。
また、国会で指摘があった、派遣職員はいいが、委託職員はダメ、というのも見直し、派遣も委託もOKとなった。
どうやって医療機関が代わりに受領して、派遣職員や委託職員にカネを渡すのか。
・バイト医師がバイト先の複数の医療機関から重複して支給されることを発見できるのだろうか。(これは禁止している。)
・介護施設と医療機関を掛け持ちしている看護師が、両方から支給されることを発見できるのだろうか。(これも禁止している。)
・都道府県をまたいで複数の医療機関を掛け持ちしている医療従事者が、複数の医療機関から支給されることを発見できるだろうか。(これも禁止されているが、都道府県を越えた瞬間に分からない。)
・医療機関の勤務証明を添付して個人で申請してきた者が、ニセの勤務証明であることを見破れるだろうか。(これが暴力団の資金源となればどうするのか。)
・医療機関が実際働いていない者を働いていると称して経営が傾いている医療機関が申請してきても、それを見破れるだろうか。
・対象期間中、全て育休・病休だった医療従事者は対象外、10日以上勤務していない医療従事者は対象だが、医療機関が迅速にチェックして申請できるのか。
・医療機関の事務がこの慰労金申請処理で残業が増えたとしても、医療機関にその手当はなくていいのか。(よく考えれば、都道府県も同じだ。厚労省の仕事を丸投げされているだけである。)
課題点は上げればキリがないが、悲しいかな、厚労省からやれと言われればやるしかないのが都道府県である。執行に問題が生じることは目に見えている。
持続化給付金はなんだかんだで順調に予算執行が進んでいるようであるが、都道府県の慰労金はどうか。先は暗いが、進むしかない。