数字が語る医療の真実

ディオバン事件のその後 日本では論文捏造は罪にならず?

(C)日刊ゲンダイ

 ディオバン事件は、高木兼寛の業績が今の医学会においても無視され続けている現状をあからさまにしています。論理の証拠を重視し、事実の証拠を軽視し、「事実など捏造してしまえばよい」という変わらぬ状況です。彼が設立した慈恵医大の慈恵心臓研究が、その最初の研究であったことは象徴的ともいえるでしょう。

 この事件の発端の一つは、慈恵医大の研究が掲載された「ランセット」という医学誌へのある投稿でした。この投稿は京都大学の循環器内科の医師より送られたもので、慈恵と続いて報告された京都府立医大の研究論文の血圧データが、ディオバンのグループと比較対照の他の降圧薬のグループであまりにぴったり一致していて、統計学的にはあり得ないという指摘です。

 やがて研究に関わっていた大阪市大の研究員が実は元ノバルティス社の社員であることが判明し、事態は大きく動いていきます。これらの事実を重く見た日本循環器学会が検証に動き、さまざまなデータ捏造が、ディオバンに関わる5つの臨床試験で明らかになっていきます。

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名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」院長、「CMECジャーナルクラブ」編集長。自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員。臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!」(ライフサイエンス出版)、「逆説の長寿力21ヵ条 ―幸せな最期の迎え方」(さくら舎)ほか。

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