「日本での死者自体は、欧米に比べて圧倒的に少ない。3月上旬までは政府の専門家会議も、中国でも感染者の8割は軽症だから、過剰に恐れないでと説明していた。その方針をきちんと貫けなかったのが問題です」
自粛下でも、多くの人は薄々気付いていたはずだ。政府が公開したデータや、国際比較を行ったグラフは、連日のようにテレビや新聞に踊った。
「にもかかわらず『まだ大したことないだけで、これから危なくなる』と煽る人々が、混乱を加速していった。知識だけでは安心できず、大丈夫だという身体感覚を求めてしまう人間の弱さが利用されたのです。
自粛でガラ空きになった街路を見て、『ソーシャルディスタンスが実現した』と安心する。そうした主観的な安心を『買う』ために、倒産・失業など多大なコストが払われました」(與那覇氏)
緊急事態宣言を出し、「8割減」を煽り続けた人たちの責任も重い。
「病気は本来『かかっても治せばよい』もので、感染自体は悪じゃない。重症化しやすい高齢者や持病のある人を防護しつつ、それ以外の人はウイルスと共存してゆく発想を持つべきでした」(同)
しかし、政府にせよ、小池百合子都知事にせよ、ことここに至っても、細かな感染者数にこだわり続け、活動再開にあたっても、やれステップ1だ、やれステップ2だ、と感染者数「ゼロ」に対する信仰を捨てきれていない。